第7話 中学生と史上最悪な夢




 史上最悪な夢を見た。

 あの母が大好きなモデルと一緒に破壊している夢だ。

 しかも何を破壊しているって。

 学校、塾、パソコン、タブレット、スマホだ。

 人間誰しも破壊衝動に駆られる時があるのよ。

 母の言葉が頭の中をぐるぐる回り続ける。

 破壊する時間があるなら、勉強をしているはずだ。

 人生という限られた貴重な時間をそんな無駄に使うわけがない。

 このぼくが。

 つまり。

 これは。

 夢の操作だ。

 誰かがぼくの夢を操作しているんだ。

 では誰が。

 あのモデルか。

 あの凶悪なモデルが破壊をする仲間を作ろうとしているんだ。

 そうに違いない。

 はっ。

 違うこれは天啓だ。

 あのモデルはやはり犯罪者だから捕まえろという仏の思し召しだ。

 ふふふははははは。




(なるほどー。息抜きが必要、かあ)


 真夜中に帰って来ては、早速人をダメにするカーペットに吸い寄せられた碧が肌寒さを感じて、ありゃ陽翔ちゃんはベランダの窓を閉め忘れたのかと思ったら。

 陽翔がベランダにいたのだ。

 勉強で使い過ぎた頭を冷やす為に夜風に当たっているのかと予想しながら近づけば、何やらぶつぶつ呟いていた。

 英単語とか歴史の年表とか言っているのかな本当に勉強熱心な子だと感心していたのだが、違っていたのだ。


(姉ちゃんに、家事をしないならせめて陽翔ちゃんが息抜きできるようにしなさいって、こっぴどく叱られたしなあー)


 陽翔がこの部屋に来て三日後のことであり、今から一週間前のことだ。

 陽翔にすべての家事をやらせていると知った姉に強く絞られたことを思い出した碧は、ベランダで小さく笑い続ける陽翔を見ながら、壁に身体を預けて腕を組んだのであった。












(2023.10.25)



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