第3話 社会人と中学生
十四歳、中学二年生。
高校受験の為に、学校に塾にオンライン塾にと勉強漬けの毎日を過ごしている、我が子を心配した彼の母親であり、山鹿碧の姉である
『陽翔君が私の家で暮らす間、私は親友の家で暮らすから。いい?陽翔君と協力して家事をするのよ』
「なーんて。ねーちゃんに怖い顔で言われたけど」
人をダメにするカーペットの上で寝転んでいた碧は、テキパキと部屋の中を行き来する陽翔を見て、働き者だねえ~と話しかけた。
陽翔はどうもと小さく会釈をすると、脱衣所に洗濯籠を置いて、行ってきますと仮家を後にした。
朝食に、白米、豆腐と小葱の味噌汁、目玉焼き、焼いたじゃこ天を用意しておきましたと言い置いて。
「今の中学生はしっかりしているな~」
自分が中学生の時はどうだったか。
名前さえ書けば入学できるという高校を目指して、家の手伝いはおろか、勉強も適当にやって、遊びまくっていた。
「もうあれは、社会人として通用するよ。うん」
うんうん。
仰向けになって何度も頷いては、両手両足を天井に伸ばし身体を全後に揺らして起き上がり、用意してくれた朝食を食べる為に食卓に着いた。
いい天気だ。
陽翔が干してくれた洗濯物の微かなはためきと、真っ青な空を見つめて、にっこり笑ったのであった。
(2023.10.25)
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