8話 王女誕生日記念パーティー(前編)

フィオとのデートから1週間後、俺はいつも通りフィオとウチでお茶会をしていた。ただいつもと違う点もある。それは


「ルーク様の入れるお茶はとても美味しいです」

「それはよかったです」


 ソフィア様が何故か参加していると言うことだ。何故参加しているのかというと、どうやらソフィア様の誕生日パーティーを1週間後に王城で開催すると言うことで俺とフィオ、そしてリュミエール公爵家とアルタイル家に招待状を届けに来たらしい。でその時に丁度俺とフィオがお茶会をしていたところに遭遇したという訳だ。


「ルーク様、敬語は無しですよ」

「‥‥ソフィア」

「はい!」


 やはり王女様相手に敬語無しで接するのは慣れない。


「ソフィア様もルーク君の紅茶が気に入ったようで」

「ええ。それにフィオもですよ。様は禁止です」

「ふふっ。そうでしたねソフィ」


 いつの間に仲良くなっていたのかお互いに愛称で呼ぶ様になっていた。


「それにしてもいつの間にかそんなに仲良くなっていたんだな」

「ソフィが使者として来た時です。ソフィの方から愛称で呼んでと言われたので」

「これからはルーク様の婚約者同士ですからね。流石に公式の場ではお互いに敬語で接しますが」

「そうだったのか。俺はフィオに同性の友達が出来たことが喜ばしいな」

「なんかルーク様はフィオの父上みたいですね」


 まあこれでも精神年齢だけで言うと父上達と同い年みたいなものだしな。

‥‥何故か何処からか『フィオーレの父親は私だ!』という声が聞こえた様な。

しばらく話しているうちにソフィアが王城に帰る時間がきたのでソフィアは名残惜しそうに帰って行った。




1週間後、俺は馬車に乗り王城に向かっていた。当然ソフィアの誕生日パーティに参加するためだ。フィオは一緒の馬車に乗りたがっていたが、流石に家ごとに行かざるを得ないため別々の馬車に乗っている。この馬車に乗っているのは俺、父上、母上の3人だ。兄上達は他に用事があって来れていない。


「ルークよ。このパーティは王女殿下の誕生日を祝う場でもあると同時に貴族の子息たちの顔合わせの場でもある。折角なのでこの機会に同年代の貴族の友達を増やしておくといい」

「分かりました父上」

「だがくれぐれも娘との婚約を持ちかけてくる貴族には気をつけろよ。お前とフィオーレ嬢が婚約していることは周知の事実ではあるが、お前も知っての通り貴族は一夫多妻制だからな」

「了解です。なんとか対応してみましょう」

「よし。ではもう王城に着く。降りる準備をしておけ」


 馬車が王城の前に着いたので、降りる。そのまま会場に向かう。

会場にはすでに多くの貴族とその子息、令嬢達がいた。誰もが楽しそうに話している。


「おお。リュミエール公爵。貴殿も着いたか」


 アルタイル公爵が話しかけてくる。横にはアンナ夫人とフィオがいる。

フィオのドレス姿を見るのは何気に初めてだ。フィオの水色の髪に非常によく似合う白色のドレスだ。


「アルタイル公爵ではないか。御壮健で何よりだ」

「そちらもな。それにエレナ夫人も。ルーク君とはよく会っているが今日はまた普段とは雰囲気が違うな。なあフィオーレ」

「はい!いつものルーク君もかっこいいですが今日のルーク君はまた違うかっこよさがあります!」

「ありがとうフィオ。君もとても綺麗だよ。その純白のドレスが一段とフィオの可愛さと綺麗さを引き立たせてる」

「はうっ!」


 フィオの顔が真っ赤に染まる。可愛すぎだろ! ……取り乱してしまった。


「……あの子ちょっと女性の扱いに慣れすぎじゃない?(小声)」

「あんな風に育てた覚えはないのだけど(小声)」


 母上、父上は『子供たちで親睦を深めてくるといい』と言い残し去って行ってしまった。一先ずフィオも俺もまだ飲み物をとっていないので飲み物を取る。


「アンタが”アルタイル家の天才令嬢”フィオーレ・フォン・アルタイルかしら?」


 フィオに話してきたのは赤い長髪に緋色の眼をした女の子だ。


「そうですが、そういう貴女は?」

「四大公爵家が一角、スカーレット家が次女、セーラ・フォン・スカーレットよ。噂の天才令嬢に会えて光栄だわ」

「スカーレット公爵の次女というと、”スカーレット家の炎姫”とと言われている五属性魔法士クインテット・ホルダーの?」

「ええ。アンタの全属性に比べればかすんでしまうけどね」


 セーラ嬢はそう言うが、彼女が持っている五属性とは火、風、雷、光、闇の基本属性3つに特殊属性2つのことだ。特殊属性を両方もっているのは俺という例外を除けば、アリエス王国の歴史上フィオと”賢者”であるレイラの2人しかいない。何故俺が例外なのかは後に話すとしよう。フィオがいなければ間違いなく彼女が魔法において同年代で一番だっただろう。加えて彼女の火魔法は威力がかなり高いと言われている。それ故に”スカーレット家の炎姫”という呼び名が付いている。


「それでそこのアンタは?」


 今度は俺の自己紹介をご所望なようだ。ならご希望通りにするとしよう。


「リュミエール公爵家が三男、ルーク・フォン・リュミエールと申します。噂に名高いセーラ嬢に会うことができるとは光栄の至り」

「ああ、そういうのはやめて頂戴。せっかく同じ四大公爵家の同年代なんだから、気軽にセーラでいいわ。代わりに私もルークと呼ぶから。フィオーレもそれでいいかしら」

「はい。それと私のことはフィオで構いません」

「分かった。そうしよう」


 何とかフィオ以外の同年代の貴族と親睦を深めることはできたか。数分の間、色々な話をしていた。魔法の話だったり、好きな紅茶の銘柄だったりとセーラとは趣味が合いそうだ。


「やあ、そこのお嬢さん方僕達も混ぜてくれるかな?」


 話していると、紫水晶のような色の髪に同じ色の眼をした男の子とその陰に隠れている女の子がやってきた。見たところ兄妹に見えるが。


「いきなり出てきて誰かしらアンタ達?」

「では名乗るとしよう。四大公爵家が一角、エクレール家が次男、ヴェイン・フォン・エクレールだ。以後お見知りおきを」

「あうあう。え……エクレール家が次女、スピカ・フォン・エクレールです。よ、よろしくお願いします」


 全く正反対じゃないかこの兄妹?兄に比べて妹の小動物感がすごいな。


「リュミエール公爵家が三男、ルーク・フォン・リュミエールと申します。お二方お見知りおきを」

「アルタイル公爵家が次女、フィオーレ・フォン・アルタイルと申します。よろしくお願いしますお二人とも」

「スカーレット公爵家が次女、セーラ・フォン・スカーレットよ。よろしくねお二人さん」


 ここに同年代の四大公爵家の子息令嬢が揃うとは思わなかったな。まあ親睦を深めるという目的は達成できそうでいいが。


「へぇ!まさか同年代の四大公爵家の子供が全員集結するとは!これも何かの運命に違いない!」


 俺が思ってていたことと同じ事を言ってくれたな。後さっきの言動で薄々思っていたがやっぱりヴェインはなんというか言動が特徴的だな。


「どうやらかなり個性的な人物のようね”エクレール家の双雷”の片方は」


 ”エクレール家の双雷”は察しの通りこの二人の異名だ。この二人は歴代エクレール家の中でも群を抜いて雷属性の親和性が高い。ちなみに俺にも一応異名はある。

それは”リュミエール家の異風”だ。これは俺が風属性を主体としていた混合魔法が誰かに見られていたらしく、そこから人づてに「リュミエール公爵家の三男は色んな魔法を使うらしいぞ」という噂からついた異名だ。正直言って”ジーク”時代の“全能”という異名も恥ずかしいと思っていたのにこんな異名をつけられてしまった。

これを知ったときは恥ずかしすぎて一日中部屋に籠ったくらいだからな。


「そこのお前!俺と決闘しろ!」


 そんなことを考えているとまた別の貴族がやって来た。その顔を見ると俺は驚きを隠せなかった。何故ならその貴族は


 

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歴史の彼方に忘れさられし者、再臨する。 青空 空音 @Akira0803

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