4話 精霊女王

フィオの婚約者になってから4年後。俺は10歳になった。鍛錬をし続けたことで今の俺の実力は”ジーク”だった頃の2分の1程度までにはなった。

今までと変わった事は、フィオが週に1回の頻度で我が家に遊びに来るようになった事だ。途中フィオが俺の魔法の特訓の様子を見た事で、フィオも魔法の訓練をするようになった。



はっきり言ってフィオの魔法の才能は賢者であるレイラと同等かそれ以上かも知れない。



まず魔力量がかなり多い。魔法の威力を上げるうえで必要なのは魔力量と魔力コントロールの二種類だ。魔力量の多さは、より上位の魔法を使えるかどうかのカギになる。初級魔法に必要な魔力量を10とするならば、中級魔法を使うためには100の魔力量が必要になる。上級魔法なら1000、その上の超級魔法なら1万は必要だ。

これらを踏まえた上でのフィオの魔力量だが、その魔力量は10万だ。

言ってしまえば、フィオは超級魔法を10発。初級魔法なら1万発撃てるということになる。

この国で最強と言われる王宮魔法士団の平均魔力量が5000ということを考えたらフィオの魔法の才能がどれほどかがわかるだろう。


因みに魔法士は2種類存在する。精霊魔法士と元素魔法士だ。


精霊魔法士は精霊と契約することで契約精霊の属性魔法の過程を簡略化する事が出来る。また契約精霊の属性の魔法の威力も上がる。ただし、精霊魔法士は精霊と意思疎通を取れなければいけないため、かなり貴重だ。アリエス王国には現在4名の精霊魔法士がいるが、そのうちの3人は王宮魔法士だ。後の1人は少し特殊というか。

また、精霊魔法士の多くはエルフである。元々エルフは魔法との親和性が高いからか精霊との意思疎通が取れるものが多いらしい。


一般に魔法士という言葉は元素魔法士のことを指す。こちらは大気中の魔力を使用する魔法の元素に変換して魔法を行使する。

先ほどの精霊魔法士は魔法の過程を簡略化出来るといったのは魔力を元素に変換するという過程を省略するということだ。それ故に魔法の発生は精霊魔法士の方が圧倒的に速い。

フィオは今のところ元素魔法士だが。精霊魔法士の可能性も否めない。精霊の声は突然聞こえる事もあるからだ。


また、フィオは魔力コントロールもずば抜けている。例え魔法学院に入学仕立ての生徒は初級魔法を打つために込める魔力が必要量1に比べて0.8や1.3などぶれるが、フィオはピッタリ1の魔力を込める事が出来る。”ジーク”時代に俺も魔力コントロールにどれだけ苦戦したか。魔力コントロールも初級魔法から中級魔法、上級魔法など上位の魔法になればなるほど難しい。扱う魔力量が増えるからだ。



正直、フィオの実力なら今から王宮魔法士団に入れる上に即戦力だろう。

そうフィオに伝えたら「ルーク君と一緒じゃないなら嫌です!」と言ってくれた。

……フィオがまじで天使すぎる。そう言われて顔を赤くしていた俺を見たらアリス達は何て言うんだろうか。


そんなことを考えながら夜、日課である魔法の訓練を王都から少し出た平原でしている。家には庭があるがそこではしない。何故かって?俺がこの訓練で使う魔法の威力が庭があるとはいえ王都の中で使うような威力ではないからだ。



「ん?」



魔法の訓練をしている途中、フワフワと浮かぶ緑色の球体が俺の前に現れた。



「風の微精霊か。珍しいな」



微精霊とはこのように光の粒子となっている精霊のことだ。

精霊は基本的には動物の形をしている。だが高位の精霊になると人型の精霊も稀に存在する。

また、微精霊に限ったことではないが、精霊は基本的な契約者以外の前には姿を現さない。そのため誰とも契約していない精霊は滅多に人の前に姿を現さないのだが。



「見たところ、契約精霊ってわけでもない。ってことは野良の精霊なはずなんだが、さっきから俺の周りを飛んでいるんだよな」



この精霊は何がしたいんだろうか。すると精霊が森の中に消えていった。と思ったらまたすぐに戻ってきた。



「……ついて来いってことか?」



伝えたいことはよくわからないが、一先ずついて行ってみることにした。

微精霊の後に続いて森の中を歩くこと数分。やがて開けた場所にきた。



「連れてきてくれたのね。ありがとう」



目の前には一本の木が横たわっており、そこには1人の女性が座っていた。

だが、俺はその女性にひどく見覚えがあった。何故なら



「久しぶりね。”ジーク”」



「案内された先にお前がいるとはな。シエル」



そこにいたのは”ジーク”だった時の相棒、精霊女王シエルだったからだ。



「何故お前がここに? それに俺のことを」



。いや、正確にはかしら。貴方のことを思い出せたのは本当に偶然よ」



「どういうことだ?」



「貴方の予想通り、最初は私も”ジーク”のことを忘れていたわ。でもある日、精霊たちが面白い人間がいるっていうから見てみたのよ。そこには1人の少女と……貴方がいたのよ。」



「まさか」



「ええ。貴方を見た瞬間、”ジーク”についての全てを思い出したわ」



思い出したということはシエルは間違いなく”ジーク”について忘れていたということ。いくら長い年月を生きるシエルといえど単なる物忘れという訳ではないだろう。つまりということだ。

精霊女王という名は飾りではない。文字通り全ての精霊たちの長なのだ。当然シエルの魔法耐性はかなり高い。シエルの魔法耐性を上回る魔法をかけられていたのか。それとも、もっと高位の力が働いたのか?



「いずれにせよ手掛かりが1つ手に入った。礼を言うシエル」



「私と貴方の仲だから問題ないわ」



「お前はこれからどうするつもりだ」



「え?貴方についていくけど?」



「……今の俺は”ジーク・レオンハルト”ではなく、ルーク・フォン・リュミエールだ。別にお前が付いてくる必要はないが」



「私の契約者は未来永劫貴方だけよ。契約精霊として契約者について行くのは普通でしょう?」




「はぁ~。好きにしろ。……頼りにしているぞ、シエル」




「ええ。任せておきなさい。精霊女王の力存分にふるってあげるわ」



こうして俺は再び相棒のシエルと契約し、精霊魔法士となった。



























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ここまで読んでくださりありがとうございます!

また評価して下さった方、フォローして下さった方、本当にありがとうございます!

カクヨム初投稿でまだまだ話数も少ないのに見てくださって本当にありがたいです!

これからもまだまだ投稿していくので”歴史の彼方に忘れ去られし者、再臨する”をこれからもよろしくお願いします。











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