爆破


「……だ、そうです。どうしますか?リーダー」


「あの方が帰ってくるまで『カルロス』付近の高速の警備を強化しろ。絶対に傷ひとつつけさせるな」


「はっ」


玉座に座り、思考を繰り返すリーダーと呼ばれた男、ウェスト。


「よぉ、遅かったじゃないかリーダー」


「なぜ、貴様がいる。リシャーラの監視につかせたハズだが」


「ああ、それな。見失った」


頭の後ろで手を組み、悪びれも無く言う、褐色肌の男、フェルム。

怒るのも馬鹿馬鹿しくて、ため息をつくウェスト。


「……もうすぐ、変革が始まるんだ。少しは真面目にやってくれ」


「知ったこっちゃないね。俺は俺のやりたいようにやる。誰かに強制されるのは御免だ。そもそも、俺のメインの仕事はまだだろう?」


───────────────────


「意外と、バイクの旅も悪くないね」


ディアラがバイクに乗り、旧高速の道を走る。

目的は「カルロス」。無論、王として返り咲くために。


───────────────────


風を切り裂きながら走るケリー。

風が心地よく、エンジンの音が鳴り響く。


(このままいけば、カルロスにつく。けど、ロッキー山脈がきついな)


昼も夜も関係なく、ただ走る。

途中、古びたガソリンスタンドを見かけた。蜘蛛の巣が蔓延っており、配線が所々食い破られていた。


スポーカンを抜け、ロッキー山脈の麓についた。

スポーカン・バレーでガソリンを補給し、また走り出す。


獣道を走り、山脈を登り始める。

ロッキー山脈の頂上付近を走る旧高速。


「!」


旧高速を塞ぐ、無数の壁。

というより、バリケードのようなもの。

バリケードの前で複数の銃を持った男たちがこちらを向いている。


「おい!そこのバイク止まれ!」


(カルロスか……)


めちゃくちゃでかい声で言われたが、ケリーにとっては関係ない。

無視してギアを上げる。

ブンと、さらにエンジン音が大きく鳴り響く。


「!」


(416か)


無数の銃口がケリーを覗く。

焦ることなく、冷静に運転に集中する。


「我らカルロスに楯突くものよ、死ね!撃て!」


ガスマスクをつけ、迷彩柄の服を着たテロリストの発泡。

10以上のアサルトライフルから火薬の匂いが響く。

弾頭がケリーを目掛けて飛び散る。


「しまっ」


ケリーには当たらなかった。

けれど、バイクに弾が命中した。

それも、よりにもよってエンジンに。


「な」


バイクが、爆発した。


「やろう殺す!」


バイクの爆発によってケリーが吹っ飛ばされた。

ホルスターから銃を取り出し、明確な殺意を込めて発砲した。


(数が多すぎる!!)


ひとマガジン分、敵を撃った。

遮蔽に隠れているが、それも時間の問題だ。

落ち着いてバッグから変えのマガジンを取り出す。

左手でからになったマガジンを捨て、新たなマガジンをリロードする。

ゲリラ戦の上に、人海戦術。

厄介この上なかった。

次のタイミングを待つ。


バン、と響く弾丸の声。

アサルトライフルとは違う、大きな銃声。

遮蔽物の隙間から、その光景を見る。


「!」


「ガァァァ」

「なんだお前!ガァァ」


敵側から聞こえてくる悲鳴。

困惑しているケリーを他所に殺し合いが起きていた。

翡翠の髪をした男がカルロスを撃っていた。

10,20,30,死体の山が積み上げられていく。

死体に面影はない。明らかにハンドガンの威力ではない。


「貴様、まさか、リシャーラ!?」


ボロボロになったリーダーらしき男が叫んだ。

眼帯をつけ、灰色のコートを被った男は答えない。

顔色ひとつ変えず、冷酷に頭を撃ち抜いていく。


「お前は……」


戦闘が終わり、死神が立っていた。

右手に持った、巨大なリボルバー。

見間違えるわけがない。

────マグナム、m500。


「……久しぶりだな。ケリー」


何処かで聞いたことのある声。

それも、かなり懐かしい。

あんなマグナムを近距離戦闘CQB武器として使うやつを一人だけケリーは知っていた。

脳に浮かんだその名を、ケリーは叫ぶ。


「リシャーラ!?」


「正確だ」


10年ぶりに男たちは出会った。

新たな希望を求めて、

新たな絶望に出会って。

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