第7話 士

【学校】

「おっはよー!!」

 前回の一件でタツミと仲を深めたユアは、度々ハイテンションで学校に来ることが多くなった。

「おはよう、霞さん」「おはようユア」

 ユアは2人の姿を見つけるやいなや、サッと近づいて新武器のデザインが描かれたノートを広げた。

「これはまた沢山描いてきたね・・・」

「私今絶好調なの、アイデアが泉のごとく湧き出してくるのよッ!!!」

「ね、ねぇねぇ」

「ほぇ?」

 クラスメイトが3人に話しかけてきた。

「最近、何話してるの?」

「「「え”」」」


 言えるわけがない、『世界を守ってるんだ』なんて言った日には変な奴扱いである。3人の考えは一瞬にして一致した。

(((絶対に隠し通さなければ・・・!)))

「いやぁ~?なんともないよぉ~?」

 タツミが口火を切ったが、どう考えてもごまかせていない。呆れるシュンをよそにユアがフォローに入る。

「実は最近ね、私たち3人でネット小説を書いてるんだ!内緒だよ?」

「えっ!?あの霞ちゃんが!びっくり~」

「でしょでしょ?私もびっくりしてるんだよね~」

(フォロー上手だな霞さん・・・)


「色々教えてくれてありがと~!」

「うん!バイバーイ」

 結局ユアがほとんどフォローし、クラスメイトは満足して去っていった。

「あ、危なかった・・・」「ユアがいなけりゃどうなっていたことか・・・」

「私に感謝してよね!」


【想像世界】

「ここ数日の首尾はどうだ?クイーン」

「ハッ、キング様。人間界の様々な箇所に潜伏し、憎きイマジネーターについて探っておりました」

「それで?」

「先程接触した教育機関の生徒3名が、ノートに何やら武器のようなものを描いておりました。確証は得られませんでしたが、念のため」

「当たり前だ、探せるわけがない」

 キングに報告しているクイーンに、1人の人物が話しかけてきた。

「ナイト・・・ッ!」

「人間界と想像世界では世界の構造そのものが異なる。奴が想像世界で行っている一連の行いが人間界に伝わるはずがない」

「重箱の隅をつつくようなことを・・・!」「なんだ、やる気か?」

「やめよ!!!!」

 今にも戦いを始めそうな2人をキングは大声で制す。

「仲間内でいさかいをしてどうする、罰として今度の戦いには2人で共に向かえ」

「チッ、了解」「足手まといにならぬようにな」「あぁん!?」


【学校】

≪シュン、また怪人が出たようだ≫

「分かった、行こう!」


【想像世界】

『今回は反応が2つある、恐らくビショップ級が2人いるはずだ、警戒しよう』

『(分かった!)』

 イマジネーターはあらかじめペンシルカリバーとブンドキシールダーを構えて戦場に赴く。案の定行く先ではクイーンとナイトが待ち構えていた。

「俺の名は”四天のナイト”」「ウチは”二天のクイーン”」

「最近調子乗ってる奴らがいるって話じゃん?だ・か・らウチらがブッ殺しにきたってワケ~」

『(なんか言い回しが古い・・・)』

「御託はいい、さっさと戦おうじゃないか」

 

 ナイトは背中の大剣を振りかざし、イマジネーターに戦いを挑む。歩み寄ってくる際にクイーンに何事かささやいたが、イマジネーターはそれに気づかなかった。

『上等だ、いつでも来い!』

「いくぞクイーン!!」「おう!!」

クイーンは猛スピードでイマジネーターへ向かってくるが、なぜか真横を通り過ぎていった。

『なに!?ハッ!』ガキィン!!

一瞬背後に気を取られたが、ナイトの突きを間一髪で防ぐことができた。

「(さすがナイト、あの一瞬でウチを陽動に使おうだなんて、ないがしろにされたのは気に食わないけど結構やるわね)」


【学校】

「イマジネーターって、どんな姿なのかしら・・・」

不意にユアがタツミに問いかける

「え?まぁ確かに、俺たちは普段顔はおろか声しか聞いてないしな」

「シュン君ってさ、どうやってイマジネーターと会ったんだろう?だってイマジネーターって想像世界の人なんでしょ?」

「う~ん、シュンが帰ってきたら聞いてみよっか」


【想像世界】

 一方、想像世界ではイマジネーターが2対1の戦いを繰り広げていた。

 空中を飛びながら絶えず弾幕を張ってくるクイーン、その隙を見極め攻撃を仕掛けるナイト。普段の口喧嘩が嘘のように卓越したコンビネーションを発揮していた。

『くっ・・・来い!バトルキャリアーー!!!!』

 すると遠くから”ゴゴゴ・・・”とかすかに音が聞こえ、段々と近づいてきた。

「なっなによ!」

 その場の全員が音が近づいてくるほうを見ると、すぐそこの曲がり角から巨大なバイクが猛スピードで突っ込んできた。

 バイクはイマジネーターの周囲をグルグルとドリフトして、ナイトとクイーンに距離を取らせた。

『なんだ!?』『(全然わかんない・・・)』


【学校】

「あ、そういえば」

「どうしたの?」

「バトルキャリアーに新しい機能積んだの言ってないや」

「あぁ、この前話してくれたやつ?」

「そうそう、”ライドモード”っていって、イマジネーターが乗れるようにバイク型にしておいたんだ」

「っていうか、いつの間にイマジネーターの装備に手出せるようになったわけ?」

「この前イマジネーターがドックを貸してくれたんだよ、よく武器が壊れるだろうから直してくれってさ。俺にとってはプラモデルみたいな感じだから助かるけどね」

「ほほ~う」


【想像世界】

『(これひょっとしてタツミ達の新武器だったりしない?)』

『なるほど!乗り物とは考えたな!』

 そしてイマジネーターがまたがり、グリップを思いっきりひねると一瞬でエンジンがフルスロットルになり走り出した。

「なにっ!?」「ちょこまか逃げやがって!」

 クイーンがすぐさま追うが、どんどん離されていく。

「このっ!このおっ!」

 クイーンはさらに濃い弾幕を張ってイマジネーターを狙うが、華麗な動きでそれらは避けられていく

 すると、いきなりイマジネーターは反転して勢いをつけ宙に浮き、クイーンに突撃した。

「ギャアアァァァ!!!!」

 墜落するクイーンには目もくれず、イマジネーターは再びナイトの方に向かう

「その感じ、どうやらクイーンはやられたようだな」

『次はお前だ!』

 しかしそのとき、向かい合う2人の間をクイーンのエネルギー弾がかすめた。

「今のうち、逃げるよ!!」「・・・・・」

「おい!何とか言いなよ!!このままじゃ2人ともアイツにやられちゃう!」

「・・・いいや、死ぬのはお前だけだ」「え?」

 ナイトは突如剣でクイーンを一刀両断し、斬られたクイーンは消滅した。


『一体どうなっているんだ・・・』

「すぐにわかるよ」

『何者だお前!』

「そっか、忘れちゃったか」

 ナイトが兜を脱ぐと、中からイマジネーターとナイトを足して二で割った風貌の頭部が現れ、声もさっきまでの重々しい声ではなく、清涼感ある少年のような声に変わった。

そしてシュンはその声の持ち主に思い当たる節があった。

『(キリ・・・・?)』『ん?”キリ”とは何だ?』

「覚えててくれたんだね、ありがとうシュン」

 声の主は”氷ヶ谷ひびたにキリ”その人だった。


『(イマジネーター、彼と直接話させてほしいんだけど)』

『分かった、声を切り替えよう』

『久しぶり、転入初日以来だね』

「うん、ひさしぶり」

『正直聞きたいことは色々あるんだけど・・・キリって何者?』

「僕は彼と共に戦う戦士、”イマジンナイト”だよ、どう?びっくりした?」

『というか、もうびっくりしてる・・・』

『じ、じゃあ学校にいたキリは?』

「あれは僕の人間体、少ししか活動できないのが玉にきずだけどね」

『なんで僕が?』

「別に誰でもよかったさ、たまたまシュンと出会ってシュンに渡した。宝くじみたいなやつさ」

「今の彼は不完全な状態だ、昔はもっと強かったんだけどキングとの戦いで大幅に消耗しちゃったみたい、だから強い生命力を持つ人間を介して変身してもらうことで戦えるようになる」

「そして彼が戦えなくなって以降、僕はあえて奴らに組することで情報を集めていたんだ」

『それで?何か情報は掴んだ?』

「うん、それが・・・「そこまでにしてもらおう」」

振り返ると、ナイトの後ろにキングが立っていた。

「裏切りなんぞこざかしい真似をしおって・・・」

「気を付けて!あいつがキングだ!」

「いかにも。我こそが”一天のキング”である」


                つづく

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説明しよう!のコーナー

・二天のクイーン

 チェーサーズの幹部。飛行しながらエネルギー弾を連射することで戦う。作者の脳内では縦横無尽に飛び回っているが、惜しくも文字に起こすことができなかった可哀そうな人。なんなら一人称も忘れかけていた。


・四天のナイト/イマジンナイト/氷ヶ谷キリ

 作中で2番目に登場し、真っ先に退場した名前付きキャラクター。忘れた人は第1話を見直そう。イマジネーターの力押しプレイとは異なり、相手の攻撃を受け流しつつカウンターを狙う戦い方を本来は主軸とする。


・バトルキャリアー ライドモード

 「サポートマシンに主人公が乗るの、いいよね・・・」という考えで登場した二輪車型のマシン。追加マシンがやることと言えば、1つしかないよね。お楽しみに





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