第6話 鎧

【想像世界】

「キング様、ただいま戻りました」

「なぜ止めを刺さなかったビショップ」

「やだな~最初は相手の出方をうかがうってのは戦いの常識ですよ」

「やる気がないならウチが行こっか?」

「あ・・・?すっこんでなオバサン」

「んだとガキ!」

「落ち着けビショップ、クイーン。よいかビショップ、次こそ奴の首を取ってくるのだぞ」

「ハッ!」


【学校】

「昨日のタツミ、なんかおかしかったな」

「私を目の敵にしてるみたい、失礼しちゃう!」

≪またビショップが現れるまで時間がない、急いで新武器を作らねばならない≫

「私もう一度タツミの家に行ってみる!」

「俺も行くよ!」

≪いや待て、私たちはここで対策を練っておいたほうがいい≫

「わかった、タツミをお願い!」

「任せて!」


【タツミ宅】

 自室ではタツミが一心不乱に設計図を描いていた。足元には何枚もの紙が散らばっている。

ピンポーン・・・

 不意にチャイムが鳴らされ手を止めたタツミだったが、すぐに机に向き直って描き進める。

ピンポーン、ピンポーン・・・

 しつこく鳴らされるチャイムに腹を立てたタツミは、無礼な客人の顔色を一目拝んでやろうと意気込んで玄関に向かう。

「(チッ・・・誰だよ)」

 のぞき窓から外を見るが、一切の人影が見当たらない。

「(誰もいないのか・・・?)」ガチャ

 恐る恐るドアを開けると、少しの隙間に足がねじ込まれ何者かが侵入してきた。

「誰だ!け・・・警察呼ぶぞ!!」

「ごめんごめん!私だよ私」侵入者の正体はユアだった

「んだよ女王様」

「それ、やめてほしいんだけど」

「うるせー」

 悪態をついてそっぽを向くタツミをよそに、ユアは勝手にタツミの自室へと歩みを進めてゆく。

「ちょっ!なに勝手に入ってんだよ、待て!!」

 ふと我に返りユアの後を追うタツミだったが時すでに遅し。ユアは机の上に無造作に置かれたイラストを手に取って眺めていた。


「ッ!返せよ!!!!」

 ひったくるようにイラストを奪い返そうとしたが、あまりに強く掴んでしまい紙が破れてしまった。おまけにバランスを崩したユアは床に倒れてしまった。

 イラストの切れ端を握ったまま涙目でタツミを見つめるユアに、タツミは思わず気まずくなって明後日の方向を向いてしまう。


「なんで!!!!!!!!!!」

 静寂の後、半泣きになってユアが叫ぶ。”女王”とさえ呼ばれる彼女にしては珍しく感情がのった言葉だった。

「私はただ・・・ひぐっ、内原くんや十田くんの力になりたくって・・・なのにどうs「俺は!!!!!!!」」

 ユアの言葉をさえぎってタツミが叫ぶ。純粋な彼女の心の叫びに、タツミも思わず本音が出てしまう。

「俺が作ったエンピツ剣で二人が怪人を倒したって聞いたとき、すげえ嬉しかった。はじめてシュンの力になれたような気がしたんだ・・・」

「でも、すぐにお前が俺たちの仲間に加わって・・・俺よりすごい武器たくさん作って、たくさん役にたって・・・」

「っだから!今度の武器は俺一人の力で・・・俺一人で!!!」

「完成させたいんだ・・・」


【学校】

≪シュン!ビショップが現れたようだ、いくぞ!≫

「うん、イメージアップ!」

『(新武器はないものとして頑張ろう!!)』

『ああ!』


【想像世界】

「ようイマジネーター、久しぶりだな。そしてサヨナラだ」

『やってみろ!』

 ビショップは杖を、イマジネーターはペンシルカリバーをそれぞれ取り出し戦いが始まった。


【タツミ宅】

「俺は怖いんだよ、お前のイラストの才能が。見てみろよその絵、線はヨレヨレで大雑把でお前とは大違いだ」

「そんなこと・・・」

「いいんだよ別に、本当のことだから」

「そんなことないよ!!!!」

「だって、私が絵を描くようになったのは・・・・内原くんの影響だし」

「俺・・・?」

「覚えてる?一年生のとき、隣の席だった私に内原くんは毎日のようにオリジナルのイラストを見せてくれて」

「でも、あれは下手くそで・・・」

「ううん、確かに内原くんが思うように上手じゃなかったかもしれない。でも私はそれから内原くんを目標にして頑張ってきたの、なんでか分かる?」

「・・・・いや」

「私にイラストを見せてくれる内原くん、すっごい嬉しそうだった、輝いてた。だから私もイラストを描くようになったんだよ?」

「・・・・・・」

「きっと今頃十田くんとイマジネーターは私たちを信じて懸命に戦ってくれてる、私たちも力を合わせて頑張ろうよ!!!」

「・・・・・」

「内原くん!!!」


【想像世界】

『ブンドキシールダー!喰らえ!!』

 イマジネーターが投げたシールドをかわし、ビショップはさらに迫ってくる。

「オラァ!」

 ビショップが振り下ろした杖を間一髪腕で防いだイマジネーターだったが、追撃の蹴りをかわすことまではできず、大きく吹き飛ばされてしまった。

『ぐあっ!』

「ふぅ~、案外あっけなかったね」

 満身創痍のイマジネーターに余裕たっぷりのビショップが止めを刺そうと近づく。「あ痛っ」コツン

 突然ビショップの頭に箱のようなものが落ちてきた。

「なにこれ・・・?」

『(筆箱だ・・・なんで?)』

そのとき、二人の頭の中にあるイメージが流れ込んできた。

『(これ・・・新しい武器だ!!)』

『二人ともやってくれたんだな!!』


【タツミ宅】

「なんとか完成したわね」

「ああ、ありがとなユア」

「あれ?昔みたいに呼んでくれないの?」

「え、何て呼んでたっけ」

「   」ゴニョゴニョ

「それは・・・勘弁してよ」

「(頑張ってくれよ、シュン!!)」


【想像世界】

「これが武器?アハハハッ!ただのちっちゃい箱じゃないか!!!」

『そう言えるのも今のうちだ』

『(使わせてもらうよタツミ!霞さん!)』

『いくぞ!バトルキャリアーーー!!!!!!』

 イメージとともに流れ込んできた新武器の名前を叫ぶと、筆箱がみるみるうちに巨大化し、イマジネーターに並ぶほどの大きさとなった。

『いくぞ、第二ラウンドだ!!!』

 イマジネーターはバトルキャリアーから一本剣を取り出し構えた。

「またエンピツの剣か、叩き折ってあげるよ!」再び杖を振り下ろすが、新たな剣はビクともしない。

「なぜだっ!見た目は何も変わっていないはず!!」

『いいや、この”ペンシルカリバー改”は・・・HBだ』

 イマジネーターはセイバーを振るいもう一度立ち向かう。

「(クソッ!ムカつくくらい強くなってやがる!仕方ない、再び撤退だ!!)」

「この俺を二度も撤退させるなんて、君たちやるねぇ~褒めてあげるよ」

 そう言いつつビショップは空を飛んで逃げてゆく。

『逃がすか、”トライシールダー”!!』

 トライシールダーとペンシルセイバーを合体させ、新たな武器”トライアロー”を生み出したイマジネーターは、そのままビショップへと狙いを定めた。

『必殺!”イマジネートショット”!!!!』

 放たれた光の矢は凄まじい速さで一直線にビショップを貫いた。


【タツミ宅】

「ありがとうタツミ、霞さん。おかげで助かったよ」

≪私からも礼を言わせてくれ≫

「新しい武器、バトルキャリアーは無限の可能性を持っている。使い方次第で強力なパワーを発揮するだろう」

「中にはた~くさん強くなった武器を仕込んであるわ!」

「さすがユアだな」

「いやいや、タツミあってこそよ」

「いやいやいや・・・」

「いやいやいやいや・・・」

「そっちのおかげだって言ってるだろ!」

「なによ、アンタのおかげでしょ!喜びなさいよ!!」

「何だと!!!!」

≪二人は一段と距離を縮めたようだな≫

「そ、そうかな?アハハ・・・」


                つづく

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説明しよう!のコーナー

・参天のビショップ

 チェーサーズの一人で搦手からめてを軸として戦う。ちょっとガキっぽい感じで、よくクイーンをからかっている。作者はチェスのルールすら知らない。


・バトルキャリアー ステーショナリーモード

 武器を格納した状態のバトルキャリアー。入っている武器は何かしら強化された武器であり、

    ペンシルカリバー・・・ペンシルカリバー改

    ブンドキシールダー・・・トライシールダー      

                          となっている

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