第3話 王

「ここをこうしてだな・・・」

「なるほど、結構サマになるもんだね」

「だろ?俺の腕のおかげってことよ」

 前回以来、タツミは色々な武器を考えてきてくれるようになり、休み時間はもっぱらその話をしている。この日も同じように話をしていたんだけど・・・

「ねぇ、そこどいてくれない?」

「?」

「早くしてよ」

「でも、ここは僕らg「どーぞどーぞお使いください!俺たちは向こうに行ってますので!!」」

 シュンの言葉を遮るように席を譲ったタツミは、シュンを連れて廊下へと出ていった。


「おい、アイツが誰だか知っててあんな口聞いたのか!!???」

「アイツって・・・ただの同級生じゃんか」

「バカ!アイツは霞ユアだぞ、知らないのか!!??」

「霞って・・・女王様のことだったの!?」

「シッ!でかい声で言うな、気にしてんだぞ・・・ヒィこっち見てる」

シュンがこっそり教室内を除くと、氷のような眼差しのユアと目があった

「まさかあの子が女王様だったなんて・・・」

シュンたちの学年には、【女王様】と呼ばれる人がいる。シュンも詳しくは知らなかったが、いわゆる一匹狼で、溢れる気品やカリスマ性は多くの人々を虜にする。現にファンクラブなるものがあるらしい。

「さ、もう行こうぜ」


 場所は変わり想像世界のビルの屋上、街を見渡す謎の人物がいた。

「世界を・・・我が手に・・・」

 なぜ想像世界に人がいるのか、そもそも誰なのか、それは分からない・・・


キィィィィン・・・キィィィィン・・・

「うっ!何度聞いても慣れないなぁ・・・」

「なぁ、その音ってどこから出てるんだ?」

《私が感知した怪人の反応を、シュンに聞こえやすいよう周波数を変えた信号で知らせている》

「お前のせいじゃねえか!口頭で言えばいいだろそんなもん!!」

《しかし、近くに私がいないときはこの方法が有効だろう》

「それはそうだけど、別に普段から流さなくてもいいんじゃないかなぁ・・・」

《なるほど、一理あるな。次からそうしよう》

「そうしてくれると助かるよ」


《出たな怪人、この私が相手だ!!》

「イマジネーター!!」

 自己紹介からすぐに格闘戦が始まり、パンチの応酬を繰り返す。

『これでは埒が明かない、エンピツ剣!!』

イマジネーターはエンピツ剣を取り出し、怪人を一刀両断・・・したはずだった

『手応えがない・・・!?』

「フフフ・・・ワタシの名は”群体怪人グラトロープ”、この体は無数の小さなワタシ自身が集まってできているのですよ」

『道理で手応えがなかったわけだ・・・』

「これではまともに戦うこともできますまい!!!」

 散り散りになったことで縦横無尽に動けるようになったグラトロープはヘビのようにうねりながら攻撃し、時折イマジネーターが振るった剣先を散開することでかわした

『攻撃が届かない・・・』

『(そうだ!さっきタツミが描いてたやつ、使ってみようよ!!)』

『(名前は確か・・・”ケンバンランチャー”!!)』

『了解した!来い”ケンバンランチャー”!!』

「何をしようが無駄なあがきですよッ!!」

 群れをなして襲ってくるグラトロープに対し、ランチャーをマシンガンのように連射し、少しずつだが着実に数を減らし、ついには本体だけが残った。

『一気に決めるぞ、”ケンバン一斉奏射”!!』

 ランチャーの横にある鍵盤を一気に弾くと、極太のビームが本体に向けて発射された

「ぬああああああああ!!!!!!」

「覚えておけイマジネーター、いつか必ず”あの御方”が貴様を再び地の底に叩き伏せてくださ・・・る・・・」

『(あの御方・・・?)』

 そう言い残し爆散したグラトロープを、イマジネーターは神妙な面持ちで見つめていた・・・


「どうだった!?」

「大活躍だったよ、タツミ」

《分かりやすい絵を描いてくれたおかげで、私も実体化させやすかった》

「そうか!実は次のアイデアもあってさ・・・」

「ねぇ」

「ひょわっ!?」

 タツミが素っ頓狂な声を上げて振り向いた先には、霞ユアが立っていた。

「あっあっ、どうかしましたか?」

「そのノート、見せてよ」

「えっいやあの・・・」

「はやく」

「はい・・・」

 タツミがノートを差し出すと、ユアはページを捲り、武器のイラストを一瞥して

「へぇ、君たち面白いことやってんね。私こういうの好きだよ」

「あっ!ありがとうございます!!」

「ただちょっとねぇ・・・」「ちょっと?」

「エンピツ剣にケンバンランチャー、正直ダサくない?」

「なっ・・・それは違う!一見安直に見えてもそれには深いわけが・・・!」

「深いわけが?」

「・・・ないですけど」

「じゃあ、霞さんには何かいい案があるわけ?」

「そうね、ペンシルカリバー、メロディランチャーなんてどうかしら?」

「どう思うタツミ?」

「まぁ確かに、そっちの方が武器感でるかも・・・」

「じゃあ決まりね、次からそれでよろしく」

 ひとしきり言いたいことを言ったのか、ユアはその場を後にした

「あそうだ!次は私も呼んでね!」


「行っちゃったね」「ああ」

「何だったんだろうな」「さあ?」

「どうするんだ?」「何を?」

「女王様だよ」「どうするって?」

「次とかなんとかいってたぞ」「あっ・・・バレちゃったかな?」

「呼ぶのか?」「う〜ん」

《私は賛成だ、仲間は多い方がいい》

「・・・1回だけ呼んでみようか」「任せる」



【ユアの家】

自室に帰ってきたユアは、さっきのことを思い出すと勢いよくベッドにダイブした。

「(言っちゃった言っちゃった!!)」

「(今日もかっこよかったな・・・)」


                つづく

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説明しよう!のコーナー

・想像世界

 イマジネーターの故郷であり、地球とリンクしている世界。想像世界におけるバランスが大きく乱れると、現実世界にも影響が出てしまう。


・メロディランチャー

 イマジネーターの遠距離武器、鍵盤ハーモニカを模した形をしている。鍵盤がスイッチとなっており、押す場所によってモードが変わる。


・群体怪人グラトロープ

 群れを成した大量の小さな生物が集まって形成された怪人。各個撃破が困難なほど大量に分裂することができるが、各個撃破が得意なメロディランチャーの前に倒れた。


〈かぎかっこ解説〉

・「」→登場人物のセリフ/戦闘時は怪人のセリフ

・『』→イマジネーターのセリフ(戦闘時)

・《》→通常時のイマジネーターのセリフ

・『()』→戦闘時のシュンのセリフ



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