第2話 敗

(っはー・・・大変だこりゃ)

 翌日の昼休み、机に突っ伏したシュンは昨日の戦いを思い出していた。

 存在していたはずのクラスメイト、突如現れた怪人、そして何より・・・

(これ、いつまで続くんだよ・・・)

 シュンがふと目をやった教室の壁には卒業までのカレンダーが貼られている。

「よっ!なに浮かない顔してんだよ」

 話しかけてきたのは、シュンの数少ない友達、内原タツミ。3年生の時からずっと同じクラスで過ごしている。シュンが完全に退屈しきらなかったのも彼のおかげだろう

「なぁ、もし非日常的なことが起こったらどうする?」

「非日常的って?」

「例えば怪人が襲ってきた〜とか、世界を守るハメになった〜とか」

「なにそれマンガかよ(笑)」

 明らかに小馬鹿にしたような感じで言う。

「まぁ俺なら、なんだかんだ受け入れちゃうよなぁ・・・」

「なんで?」

「いやだってさ、多分だけどそういう使命的なやつって誰にでもできるやつじゃないと思うんだよ。だから、できるって人に任せられるんだと思うよ。」

「できるって人・・・か」

 ふとシュンの脳裏に、キリからキーホルダーを渡されたときの記憶が湧き上がった。

(何者なんだ・・・アイツ)


キィィィィィン・・・

「ッ!またか・・・」

「またってなんだよ」

「あっ!いやその・・・またお腹痛くなっちゃってさ・・・」

「そっか、あったかくして寝るといいぞ〜」


「イメージアップ!!」

『出たな怪人!』

「拙者の名は”剣豪怪人キリキリマイ”、是非ともお手合わせ願いたい」

『その望みなら、言われなくても叶えるさ、オリャッ!』

 イマジネーターのパンチは片手でいとも簡単に止められてしまった。

『何!?』

「それは結構。ではこちらも本気でいかせて頂こう、フンッ!!」

 キリキリマイは懐から刀を取り出し、切っ先をイマジネーターに向けると、融合しているシュンにまで殺気が伝わってくるようだった。

「(これ、まずいんじゃない?)」

『安心しろ、私が負けることはない!!』

「油断召されるな!!!」

 間一髪振り下ろされた刀を腕で防ぎ弾いたが、イマジネーターの装甲は一撃でヒビが入っていた。

『やはり只者ではない・・・』

「(だから言ったじゃん!!)」

「まだまだにございますぞ!!」

 息をつく暇もなく畳み掛けてくるキリキリマイに、イマジネーターは防戦一方だった

『一旦引くぞ、”エネルギーバインド”!!』

 イマジネーターが発した光弾がヒモ状に分裂し、キリキリマイの四肢を封じ込めた。

「ぐっ、卑怯なり・・・」


「どうするんだよイマジネーター!!」

《私も全力が出せていない現状ではアイツには勝てないと踏んでいいだろう。》

「あの刀、長くて近づきにくかったよね」

《何か対策はないものか・・・》

「お困りのようだね、お二人さん?」

「タツミ!!あの・・・これはその・・・」

「皆まで言うなって、大体は把握したよ」

「つまり、長物を使う相手の対抗策が必要なんだろ?」

《何かいい案があるのか?》

「もちろん、これだよ」

 そう言ってタツミが取り出したのは、ノートに書かれた剣のイラストだった。

「目には目を、歯には歯を、剣には剣をってね」

《これならやつにも勝てるかもしれないな》

「名前は?」

「名付けて、”エンピツ剣”だ」


キィィィィン・・・

《拘束が解けてしまったようだな》

「行こう、ありがとタツミ!!」

「おう、頑張れよ!!」


「先刻は姑息な手を使いおって・・・許せぬ!!」

『今度こそ正々堂々と勝負させてもらうぞ!!』

『来い、エンピツ剣!!!』

 手を掲げると、天から一本の剣が降ってきた。

『改めて、お手合わせ願おうか。』

「こしゃくな!!」

 両者は睨み合ったまま一定の距離を保ち、相手の出方を伺っている。

 そのままジワジワと距離を詰めていき、ついには互いに剣先の届く範囲にまで近づいていった。

 そして、ついに決着のときは訪れた。


 長い静寂に耐えかね、シュンの意識が一瞬それたその瞬間とき、キリキリマイが渾身の力を込めて下から刀を振り上げるが、慌てて構えた剣に当たり、エンピツ剣は弾き飛ばされてしまったが、かろうじてダメージは受けずに済んだ。

 バランスを崩したキリキリマイに対して、イマジネーターが取った行動は、剣を取りに行くのではなく、あえて接近戦を挑むことだった。

「何っ・・・!?」

 まさか丸腰の状態で挑んでくるとは思いもしなかったのだろう。イマジネーターの拳を刀で受けたが、刀はパンチの衝撃で真っ二つに折れてしまった。

「刀が・・・拙者の・・・」

『・・・・・・』

「拙者は勝負に負け申した、どうぞお好きになされよ」

『誇り高きその姿勢、願わくば共に戦いたかった・・・』


《難敵だったなシュン、体は大丈夫か?》

「うん、でもすごい人だったね」

《ああ。》

「おーい二人とも!!」

「タツミ、さっきは助かった」

《私からも礼を言わせてくれ》

「いいんだよ、俺ああいうの好きだし」

「ところで、相談があるんだが」

「なに?」

「俺も仲間に入れてくれないか?」

「僕はいいけど・・・」

《私も同意だ》

「じゃあ決まりだな!明日からよろしくな!!」

 はしゃぐ三人をこっそり見つめる人物がいることは、未だ気づいていなかった・・・


                つづく

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説明しよう!のコーナー

・原始怪人イロハオ

 記念すべき初登場の怪人。格闘戦を得意とし、状況に応じて四肢を増やすことができる。名前の由来は「いろはにほへと」。原案の段階ではイロハ二オンの予定だったが、変換しづらかったことから急遽変更された不憫な怪人


・剣豪怪人キリキリマイ

 エンピツ剣の錆にされた怪人。口調を武士に寄せなければいけないことで作者を苦しめた怪人、最期は武人らしく潔さを全面に出した散り方にしてみた。


・エンピツ剣

 タツミが描いたイラストを元に、イマジネーターが実体化させた武器。主人公が小学生ということで小学生らしい武器といえば・・・ということで鉛筆をモチーフにした。

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