想像超人 イマジネーター

風雲 楽乃信

第1話 想

キーンコーンカーンコーン・・・

「おーい席につけー」

ガタゴト・・・ガタゴト・・・

「号令ー」

「きりーつ!気をつけー!れい!」

「おはようございます!!」

「はい、おはようございます」

「ちゃくせーき!」

「えーと今日の連絡は・・・」

今日もまた一日が始まる。なんの刺激もない、退屈な一日。

ふと窓を見ると、2羽の鳥が飛んでいった

「鳥はいいなぁ・・・」

「おい十田どこ見てんだ、前を向きなさい」

「あっ、ッごめんなさい!」

俺の名前は十田とだシュン、年は12、もう少しで中学生だ。勉強はできる、運動もそこそこ、友だちもいる・・・少し。

学校は楽しいけど退屈、そりゃ6年も行ってりゃそうだろって思うかもだけど、それとはちょっと違うんだよね、なんかこう、モヤ〜って感じ。

「それじゃ今日は、なんとみんなに新しいクラスメイトができます!!」

「えぇ!マジ!?」「男の子かな、女の子かな?」「仲良くできるかなぁ・・・」

はぁ・・・こんなつまらない所に来るなんて、運のないヤツだな・・・

「それじゃ氷々谷、入ってきていいぞ」

ガラガラッ!

「どうも、氷々谷ひびたにキリって言います。短い間ですが、よろしくお願いします!」

「「「カッコいい〜!!!!!」」」

「席は〜十田の前が空いてるな。じゃあ氷々谷、あそこ座ってくれ」

「はい!」

快活な返事をして席に着こうとしたキリは、不意に隣の生徒を見て

「隣、失礼するよ。よろしくね」

とスマイルたっぷりに語りかけた。

(ヘっ!なんだよアイツ、いけ好かねぇ)


キーンコーンカーンコーン・・・

「それじゃ帰りの会始めるぞー」

「えっとぉ、プリントがきてるから後ろまで回してくれー」

キリがプリントを回すとき、小声で

「今日このあと暇?ちょっと付き合ってよ」

「なんだよ、案内ならしないぞ」

「違うよ、ただちょっと付き合って欲しくてさ」

「・・・別にいいけど」

「決まりだね!」


そして放課後・・・

「さっ、行こ!」

「お、おう・・・」

(やりづらいなコイツ・・・)

「な、なぁ氷々谷・・「キリでいいよ」」

「わかった・・・じゃあキリ、どっから来たんだ?」

「んー?宇宙だよ!エヘヘっ」

「宇宙って・・・小学生でも騙されないぞ。ホントは?」

「ないしょ!」

(ほんっと〜にやりづれぇ・・・)

「さ、着いたよ!」

「着いたよって裏山じゃん、こんなとこ何回も行ってるよ」

「まぁまぁそう言わずに・・・」そう言ってキリは裏山を駆け出していった

「あっおい待てよ!」

無我夢中でキリについていくと、見知らぬ祠に着いた。

(どこだここ、こんな場所あったかな・・・?)

「どう?ここ、カッコいいでしょ」そうキリは自慢気に笑った。

「ねぇシュンくん、これあげる」

キリは、小さなキーホルダーのようなものをシュンに渡した。

「え?何だよコレ」

「友達の証・・・みたいな?」

「みたいなって・・・」

そう言いつつもシュンがそれを受け取ると、キリは改まった顔で

「ありがとう、十田シュンくん。それとごめんね、きみを巻き込むつもりはなかったんだけど、ちょっと状況が変わってしまってね、やむを得ずきみを巻き込んでしまった。」

「ど、どうしたんだよ急に・・・らしくない。それに何だよ”巻き込む”って」

「フッ・・・いずれ分かるよ。それじゃ頑張ってね」

そう言い終えると、シュンが持っているキーホルダーが光りだした。

「うっ!」眩しさに耐えられずシュンが目をつぶり、次に目を開けるとそこは・・・

「ここは・・・ベッドの、上?」

(さっきまで裏山にいたのに・・・夢だったのか?)

「シュンー?早く起きなさい、遅刻するわよー?」

「えっ!?」

(学校はさっき終わったはず・・・どうして?)

「シュンー?聞こえてるのー?」

「うん、聞こえてるよママ」

(何がなんだかサッパリだ・・・とにかく、キリに聞いてみよう)


この日は考え事をしながら登校したせいか、シュンが教室についたのは朝の会が始まるギリギリの時間だった。

ガラガラッ!

「おはようございます!」

「十〜田〜、遅刻寸前だぞ?」

「次から気をつけます・・・」

「全く・・・早く席につきなさい」

シュンが席につこうとすると、キリの席が空いていることに気づいた。

「先生、キリ・・・じゃなくて氷々谷くんは?」

「氷々谷?そんなヤツうちのクラスどころか、この学校にもいないぞ?寝ぼけてるんじゃないだろうな、顔洗ってきなさい」


(どういうことだ?確かに氷々谷キリという人物は存在した。だって昨日二人で裏山に行ったじゃないか!でも・・・本当に夢だとしたら・・・?)

「そうだアレ!」

シュンがポケットをまさぐると、キリから貰ったキーホルダーが確かに入っていた。

「夢じゃ・・・ない?」

「だとしたら、これは一体・・・」

そうボヤきつつキーホルダーをいじくり回していると、突然キーホルダーが光りだし、目の前に人型のロボットが映し出された。

「うわっなんだこれ!」

《やあ、初めて会うな》

「しゃべった!」

《私の名は”イマジネーター”。想像世界イマジワールドで戦う戦士だ。早速だが、君の力を貸してほしい。》

「しかも全っ然話聞かねぇ!」

《私の名は”イマジネーター”。想像・・・》

「あぁーもう大丈夫大丈夫、イマジネーター・・・さんね、よろしく」

《理解に感謝する。何か聞きたいことはあるか?》

「う〜んと、想像世界イマジワールドって何・・・ですか?」

《この世界とは別次元にある世界だ。一種の並行世界と思ってくれて構わない。そこで起こったことはこの世界とリンクしている。》

「そんな世界が・・・じ、じゃあ”君の力”って、具体的には何をすればいいんですか?」

《簡単だ、私と共に戦ってくれればいい》

「戦う・・・って、そんなことできないです!」

《別に君がどうこうする必要はない。ただ”奴ら”が現れたときに、力を貸してほしいだけだ。》

「奴ら・・・?」

キィィィィィン・・・キィィィィィン・・・

突然シュンの頭に甲高い不快音が響いた。

「っ!なんだ今の!?」

《今のがが現れた合図だ。私は”怪人”と呼んでいる》

「怪・・・人・・・?」

《奴らは想像世界イマジワールドを打ち破って現実世界を支配しようとしている。それを食い止めるのが私の仕事だ》

「じ・・・じゃあ早く戦わないと!!」

《そうしたいのは山々なんだが、少し前の戦いで機能の一部をやられてしまってな、生物の肉体を介さなければ私は戦うことができない》

《そこで、君の力を私に貸してほしい》

「・・・分かった」

《協力感謝する、名前は?》

「十田シュン」

《それではシュン、このペンダントを掲げて「イメージアップ」と叫ぶんだ。そうすることで私は想像世界イマジワールドに実体化することができる》

「うん・・・」

シュンは言われるがままにペンダントを掲げ、

「イメージアップ!!!」

そう叫ぶと、周囲の景色が光りだし、気がつくとシュンはさっきと同じ場所にいた。

「何か・・・変わった?」

《あぁ、変わったとも。鏡を見てみるんだ》

「鏡・・・?ってうわぁ!!これが俺!!??」

《いまから君は”想像超人イマジネーター”だ!!怪人は公園の方にいる、急ぐんだ!!》


シュンが公園に向かうと一体の奇妙な風体の生物が暴れていた

「(あれが怪人・・・)」

『そこまでだ怪人!!』

「その声はイマジネーター!!貴様死んだはずではなかったのか!!?」

『あいにく正義は不滅でね、ピンピンしてるよ』

「ぐぬぬ・・・こうなったら俺様直々に地獄へ送ってやる!!」

怪人が助走をつけて飛びかかるが、難なくかわしたイマジネーターは腹部に蹴りをお見舞いし、ダウンした隙を狙って肉弾戦を仕掛ける

「ぐぅっ!やはり強いな・・・しかし!この”原始怪人イロハオ”様の相手ではない!!」

するとイロハオの背中から一対の腕が生え、実質的な2対1となったイマジネーターはジリジリと押されていった。

『まずいな・・・シュン!少し我慢しててくれ!!』

「(えっ?えっ?どういうこと??)」

『くらえ!!”イマジネートスマッシャー”!!!!』

「ぐぎゃああぁぁぁ・・・!!!!」


《危なかったが、なんとか危機は脱したな。助かったぞシュン》

「そ、それより・・・体が・・・」

《すまない、まだシュンがなれない内に衝撃の強い技を出してしまったせいで、反動が君に帰ってきてしまったようだ。》

事実、シュンの体には筋肉痛のような痛みがさっきから続いていた。

「とにかく、家に帰らなきゃ・・・」

《すまない・・・》

その後なんとか授業を終え、ほうぼうのていで家に帰ったシュンだったが、その夜はまともに過ごせなかったことは言うまでもない・・・


                つづく

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説明しよう!のコーナー

・想像超人イマジネーター

 かつて想像世界を守るために戦っていたが、強大な敵の前に一度力尽き、キーホルダーに封印されたヒーロー。本来は単独でも活動できるが、現在は生物の体に憑依することで変身し、想像世界でのみ活動ができる


・イマジネートスマッシャー

 イマジネーターの必殺技。右手にためたエネルギーを光弾に変化させ、そのまま敵に拳を当てる技。光弾はそのまま発射させることもできる。

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