第21話 幻惑の森 ④

翌朝ー、学校内では、ルーナやセイラ、ブリギットの事で持ちきりだった。


セイラとブリギットまたルーナとルームメイトのメンバーは、朝早くに事情聴取を受ける事になった。


「私、朝起きたら、2人の姿が無くて…」

「ええ、ホントに…」

「一体、全体、どうなって…」



「ルーナ…もしかして、願いを叶えてもらいに、…」


「まさか…」


「願い…ですか?」

サリバン先生は、事情聴取をしたルーナのルームメイトの友人らの言葉に、ハッと顔を上げ激しく瞬きをした。



その日の学校内では、緊迫騒然となり再び緊急の会議が開かれる事になった。


学校内の全教員が集まり、講堂に集まり着席している。

顔を青ざめソワソワする者ー、キンキン声で捲し立てる者、呆然と固まる者など…様々いた。


「しかしながら、非常に困りましたね…独断で魔王石を手に入れ行方知らずとは…」


「皆さん、魔王石は、何処から採掘されるか、お分かりですか?」


周りがザワザワ揉めてる中、サリバン先生は咳払いした。彼女の瞳から、何処かしらに暗がりのような深い闇のようなものが現れていた。

普段の彼女は、威風堂々とした風貌が今回は、まるで人が変わったかのようにやつれていた。


「いえ…サリバン先生、何処なのです?ドラゴンの丘とかですか?」


「実は、違うのです。魔王石の特性は、何だと思いますか?」


「確か、所有者を幻惑させ酩酊状態に陥れると言う…あっ…まさか、『幻惑の森』ー!?」


「そうなのです。『幻惑の森』です。そこには、セイレーンや妖樹、人魚、幻魔がウヨウヨ跋扈してると有名なのです。」


「それは、不味くないですか?立ち入り者を魅惑し、陥れると言われています。あの森は、曰く付きの森ですよね」


「魔王石の歴史は古く、およそ1500年ほども昔、魔法使いが復讐の為に編み出した魔石と言われています。そして、その魔法使い亡くなってから石を手にしたものは病や事故で亡くなり、呪いと噂され、とうとうその石は粉々にされ、幻惑の森にばら撒かれたのです。」


「なんとまあ…」


「それから、その石には幻惑の森に跋扈する魔物達の特性が染み付き、やがてその森に眠っていた例の13人の魔女を復活させてしまったのです。」


蘇りし13人の魔女の拠点のすぐ近くなのだ。


あの魔女らと遭遇でもしたら、命が危ないー。二度と戻っては来れなくなるー。



「幻惑の森は、入った者を心地よい気分にさせ、惑わせるという…?」


「はい。曰く付きの呪われた森なのです。あの森に入った者は、ほとんど生きては帰れません…」


「そんな…じゃあ、生徒はどう助ければ…」


「大丈夫です。私に良い案があります。」


辺りが騒然とする中ー。サリバン先生は、何やら強く決意したようにいつにもなく、渋い顔つきになった。



黄金色に眩く輝く森の中ー、黒い影が不気味に辺りをぐるぐる巡回している。


その影は渦を成し、1人の妖艶な女の姿を形作った。 頭部の左右には、角が生えている。

悪魔だ。


女は、ペロリと舌なめずりをし懐から水晶を取り出すと、ほくそ笑む。


水晶は、緑から黄色、オレンジ、ピンク、紫、青と、目まぐるしく色を変化させた。


「なんて、今宵も良い宴となることでしょう。」


女は、うっとり顔を赤らめる。


森の外れの向う側から、ジャリジャリ落ち葉を踏み歩く音が聞こえてきた。


音はどんどんちかくなっていき、薄紫色のドレスローブを纏った魔女が姿を現した。


悪魔は、その魔女の方へ視線をやると、「来やがったか…。」と、不愉快そうに舌打ちする。


「シーナを、シーナを何処へやったの?教えなさい。」


魔女は、悪魔を睨みつけると杖を構えた。


「さあな…主が分かるんじゃないのか…?私は、主と取り引きしただけだから、先の事は何め知らんな。」


悪魔は、物臭な口調をし虹色の水晶を懐に戻すと背中の黒羽をバサバサ拡げた。


黒羽に、桜色の光線が直撃する。


「待ちなさい。行かせないわよ。」

魔女は、玲瓏な眼差しで悪魔を睨みつけると、もう一弾光線を放った。


「ふん、だから、我が主に聞くんだね。」

悪魔は、羽をバタつかせ光線を弾き返した。


「その主人の名を、教えなさい。」

魔女は、器用に光線を避けると眉間に皺を寄せ語尾を強めた。

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