第19話 幻惑の森 ②

二人は、さっきの呪文を唱えながら手当り次第に光線を放つー。


妖樹は、次々とダイレクトに光線を受けみるみるしぼんでいく。


二人が安堵するのもつかの間ー、


さっきまでしぼんでいた妖樹らは復活し二人を襲いかかる。



妖樹らは、ダメージを受ける度にどんどん力を増しているようになってきたのだった。




妖樹らは、次々と大きくなりギザギザした歯をカチカチ鳴らしながら二人に襲いかかる。


呪文を唱えれば唱えるほど、反動で身体が蛇のようにくねくねとみるみる伸びていき、強くなるのだ。


もうダメだ…!と、二人が戦慄したその時だった。


妖樹らは、バチバチ火花を散らし音を立てながら動きを停止した。

そして、じゅつ繋ぎのように次々と連鎖していき動きを止め孤独位の背丈までしぼんでいったのだたった。


「何…?」


「どうなって…」


二人が眼を凝らして妖樹を見てみると、その中からバチバチという光線を帯びた弓が放たれていたのが見えた。


「大丈夫ですか?この辺りはお嬢様方だけでは危険ですよ。お怪我はありませんか?」


二人が声の主の方を振り返ると、そこには中性的でそばかすだらけの色白の青年が立っていた。


「あ、いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」

「ありがとうございます。」

セイラとブリギッドは、どっと力が抜けぺこりとお辞儀をした。


「一体、全体…何されていたのですか?」


中性的な容貌をし長身で華奢な身体つきのたその青年は、首を傾げさっき矢を放った弓を下ろした。


彼は、旅人のようなピーターパンのような風貌をしており、緑色のつぎはぎのシャツとズボンを身にまとっており、髪はボサボサで、頭にハッチング帽を被っていた。


「…私と同じ位の歳の子知りませんか?私よりやや小柄でピンクの髪をポニーテールにして、赤い大きなリボンをした…」

セイラは、咄嗟に早口でルーナの事について尋ねた。


一刻も早く、ルーナを見つけださなくては…


「…いえ、そのような子は一度も見てないですね…何せ、この辺りは妖樹や人魚、セイレーンなどの養分にされてしまいかねませんからね。生きて抜けること自体、ほぼ不可能なんですよ。」


「そうなんですか…」


「魔法学校の同級生です。眼は大きくエメラルド色で…」

ブリギッドも、矢継ぎ早に尋ねた。


「それは、大変ですね…」

青年は、困ったような顔をして何やら考え込んだような顔をした。


「石を…虹色の石を持っていたんです。そして、その石の力で操られおかしくなっちゃったんです…この石は、何でも願いを叶えてくれるといわく付きの石です。ですが、使役者は神経が蝕まれ、灰になってしまうんです。今、その子は操られ森の奥へ奥へと…」

セイラは、益々早口になった。黄金の森だからかー?

こんなに興奮状態になったのは、何年ぶりだろうかー?

セイラの神経は、今までにはなく、神経が錯乱したようにひどく昂っていた。


「それは、一大事だ。一刻も早くお友達を見つけ出さなくては。」


その奇妙な青年は、何やら深鬱そうな顔をし考え込んでいるようだった。



 深い深い森の中を、ルーナは無我夢中で歩き続けている。

ソワソワ辺りを伺いながら、

ひたすらくらやぶの中を歩く。


 辺りの木々は、不気味にざわめいており所々に人の形のような奇妙な木々が、生えていた。

その木々は、パニックになり走ったような人や顔を歪ませしゃがみ込む人、倒れ込んだ人などのような形を成していた。


 ルーナは、初めは軽い違和感しかしなかったが、直感でそれは魔法にかかって樹木にされてしまった人なのではないかと、思えるようになった。



 ルーナは、恐怖で悲鳴が出そうになったがゴクリと唾を飲み込み、平然を装いながら歩いていった。


 しばらく歩くと、古びた奇妙な丸太小屋がポツリとあった。

ルーナは、恐る恐るドアをノックした。


 すると、中からエルマが顔を出した。


「あら、早かったのですね?」

エルマは、温和そうな表情でルーナを出迎えた。

「も、持って来ました…これで、良いでしょ?」

ルーナは、ガクガク震えながら、胸ポケットから魔王石を取り出しエルマに渡した。


 ルーナは、知っていた。今、目の前に居るのは危険な魔女だということを。


そう、彼女は、例の蘇った13人の魔女の一人なのだ。


彼女は温和そうな表情をしているものの、内面は冷酷で狡猾で残忍な魔女である。


綺麗な薔薇のような容貌に、中身は猛毒の棘があるようだ。



 そして、彼女は何より魔力が強大であり、膨大な毒のような刃が彼女につまっているかのような感じを覚えた。

 もしかしたら、自分は既に毒に侵食されているのだろうかと、ルーナはカタカタ震えた。


「魔女裁判…私達は長年苦しめられてきました。これで、ようやく復讐が果たせるー。」

エルマは、目を閉じ胸に手を当てた。

「復讐だか、何だか知らないけど…私の願い、叶えてくれるんでしょう?こんなにリスクを犯してグリフォンから石を盗んだんだから。」

ルーナは、声を震わせながら虚勢を張った。

今は、これが一杯一杯なのだ。

一刻も早く、願いを叶えてもらわないと困るー。


「そうですね。」

エルマは、意地悪げに微笑む。

そして、手を叩くと地面の板を割り何やら植物がニョキニョキ出現した。

「な、何するの…?やめて、そうじゃない…」

ルーナは、子うさぎのように激しくぶるぶる震えた。抵抗し逃げようとするも、身体はガチガチに固定されて身動きが取れないー、植物は、茨のようになっていて先に棘が生えていた。

ルーナは抵抗しようとするも、虚しく茨に全身を拘束されぐるぐる身体を固定されてしまった。

「貴女、取り引きの意味分かってる?」

エルマは微笑みなが、ルーナをじっと見つめていた。

「…!?」

ルーナはハッとし恐怖で戦慄し、自分のした事の愚かさを初めて悟った。


 再び、ぼこぼこと床に亀裂が入り何かが突き抜けた。


 そして、次々と土型の人形が出現したのだった。


「では、早速、貴女の願いを叶えて差し上げましょう。」

エルマは、天使のような暖かな笑みを浮かべた。


 しかし、その笑みの内に秘められている異質で不気味で邪悪な魔力をルーナは感じ取った。


 それは、天使の仮面を被った禍々しい悪魔ーサタンのようである。

 

 その強い違和感から、ルーナは益々ガクガク強く震えた。

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