第4話 ハラハラの幕開け~今日から魔女の卵です! ②

次に、新入生は、寮へと案内された。


 寮の中は、まるでおとぎ話に出てくるかのような魔法がかった素敵な部屋だった。


 セイラは、部屋全体に魅了され心臓が飛び出るくらいワクワクしてしまった。


 天井には、お洒落なプロペラがクルクル回転しており、棚の上には、イースターやハロウィンに出てくるようなメルヘンチックで幻想的な人形が飾られている。

 暖炉には、数百年もの年季の入った、フクロウと大蛇の彫刻が飾られており、今にも動き出し襲ってきそうな躍動感を感じた。

まるで、ファンタジーの中のお姫様になったかのような感覚を、セイラは心踊った。



 1時間後、セイラ達は部屋を出てオリエンテーションの部屋へと案内された。


 

 各自指定された席に座る。そこに、新入生達に、カリキュラム表と、テキスト、問題集、その他資料が置かれていた。


「ねぇ、ブリギット、この学校って魔法以外の事もやるの?」


 カリキュラム表には、言語学、数学、地学、理科、歴史、家庭科など…普通の中学で習うような科目がずらりと明記されてあった。


 折角、憂鬱な国語、算数、理科、社会、英語、家庭科から開放されたかと、思ったのに…しかも、統計学だなんて…



 セイラは音楽、美術、体育は得意だが、それ以外の科目はてんで駄目だ。


「あるよ、一応、人間界に順応できるようにって。」

「あー、折角、面倒くさい勉強から開放されたと思ったのにー。」

セイラは、ガックリうなだれると、深い溜息をついた。


 次に配られたカリキュラム表には、薬学、生物学、基礎呪術、占学、魔法史。飛行術、防御術と、ワクワクするような魔法を感じさせる教科が表記されていた。


 セイラは、眼を爛々と輝かせてこれから始まる授業に胸を踊らせていた。



「ブリギットは、どの教科に興味があるの…?」

「私は、生物学かな…?」

「ねぇ、どんな生物が出るのかな…?もしかしたら、こんな大きなドラゴンだとか…?」

セイラの胸は、益々滝に打たれたかのように高鳴る。


ー早く、箒に乗って空を飛び回りたいー


「まさか…?大きなドラゴンは、もっと上級生になってからよ。規定があるの。15 歳からだって。私達は、まず小さなドラゴンに慣れないと…」

「なんだ…。」

セイラは、少しがっかりした。



その次の時間は、教室を移動し魔法史の授業を受ける事になった。


 新入生は、先ずは必ず魔法についての歴史について学ばなくてはならない。それは、立派な魔女になるための基礎的なものなのだ。

 セイラは、ハリポタや指輪物語のようなドラゴンやゴブリン、妖精が出てくる魔訶不思議で奇妙な世界観を期待していた。

 セイラとブリギットが席をつこうとすると、ルーナが目を尖らせてキンキン声を立てた。

「ちょっと、そこ私らの席なんだけど…」

「でも、この授業は指定席はないはずじゃ…」

ブリギットは、戸惑いながらセイラに目配せした。

「コネで入った癖に、何言ってるの?」

ルーナは、小馬鹿にしたようにブリギットをにらみつける。セイラは、彼女から白雪姫に出てくる魔女のような意地の悪さを感じでいた。

「…」

ブリギットは、固まると俯き机の方に視線をやった。彼女の瞳孔は不安定に揺らいでおり、そこには不安や迷い、怒りのような感情が複雑に入り混じっているようだった。

「そんなこと、言う必要ある?入学出来れば皆仲間でしょう。」

セイラは、腹を立てるとルーナを睨みつけブリギットの前に割って入った。

「いいの。やめて。」

ブリギットは、か細い声で首を振った。そして、ルーナ達に席を譲った。


   

 

「何あれ?感じ悪い。そっちがコネで入ったんじゃないの?」

セイラは、眉をハの字にするとルーナ達を軽く睨みつけた。二人は、一番後ろの日当たりの良い席に座る事にした。

「…私は、実は、推薦で受かったの。」

ブリギットは、声を低くするとセイラに耳打ちした。

「推薦‥?凄いじゃん。面接とか、試験の一部を免除してもらえたんでしょ?それに、推薦って実力ないと」

「私を推薦したのは、パパとママよ。」

「お父さんとお母さん…?」

「私の家系は、代々魔法省の官僚の大臣をしているの。姉も兄も将来、そこで働く事が決まってて…」

「いいじゃん。将来が約束されてるならさ、結構稼げるだろうしそんなこんな暗くならなくても、さ?」

セイラは、そう言いかけ口を閉ざした。これ以上、何を話したら良いのか分からないでいた。

「私は、凄くなんかないよ。凡人だもの。」

「そんな…まだ、始まったばかりじゃないの…?」

「校長先生、面談で顔を渋らせてたんだ。」

ブリギットは、顔を濁らせ口を閉ざしていた。

 



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