第11章
「損傷は⁉」
「第一エンジンに被弾した! けど、まだ航行できるよ!」
「第一エンジンの供給弁カット。引火の恐れがあるから、エンジン外装部及び内部の一部接触点をパージする。」
「ん。相手の照射点を確認。」
「………面倒ごと。困る。発射点に向けてチャフ弾発射。」
「馬鹿! こっちは機体の制御してるんだから、推進力をかき乱さないで!。」
「遅い。もうしてる。」
「アー! 機体が揺れるぅ!」
「………下手。」
「誰のせいよ!」
「機体を制御して照射点をかいくぐり、月下をグリーンゾーンまで運ぶんだ。それが最優先だ。」
「全く、困った依頼を引き受けたものだよ。あとでアルファに文句を言いたいね!」
「アルファに言っても仕方ないだろ。それに甲斐田は、これが普通になるって言っていたんだ。慣れるしかない。」
「………仕方ない。」
「熱源を感知! 第二射くるよ!」
「機体制御はできたけど、回避できるだけのスピード出ないって!」
「機体のブースターを全力で噴射、帰りの燃料は考えるな。」
「しかたない。燃料の噴射も利用して軌道を調整する!」
「でも、次がないよ!?」
「………仕方ない、射出ポットを準備!」
衝撃のあと、席が急に変形した。
まるで繭のようでもあり、花の蕾のようでもあった。
内部に包まれると、モニターに北条さんたちが忙しなく動いているところが映った。その中でもしっかり者の印象を持つ北条さんが映し出された。
「月下、説明している暇はない。これからお前を月面基地の防衛機能死角位置に射出する。その地点まで全速力で加速する。私たちの役割はこれで終了だ。後は月下。お前の仕事だ。」
そう言うと、モニターは消え暗転画面に戻った。
………北条さんたちは?
そう思ったが、それは言えない。
託してくれたのだ。
これ以上、後ろ髪をひかれたくはないだろう。
そう思っていたら、急な衝撃と開放感がやってきた。
おそらく、機体から切り離されたのだろう。
しばらくの沈黙ののち、急に重力に捕らえられ落下する感覚に襲われた。
不時着したときの衝撃を緩衝材が緩和してはくれたが、体に衝撃が走るくらいには痛みがあった。
でも、それ以上に衝撃的な光景を目にした。
外に出てみると、遠くの方で見覚えのある機体がボロボロになりながらも運航していた。が、次に見た光の一線により機体は限界を迎えその姿を崩れさせていった。
あまり話をしないまま、別れを迎えてしまった。
それでも、感慨に更けている時間もない。
手持ちは軽く、模造刀一本のみだ。
隊長の話通り、月面では呼吸できるようになっていた。
さらに言えば、地球と大差ない重力のように感じる。
おそらく、調整されているのだろう。
月面の重力は地球の六分の一のはず。
それが今降り立っている地面を地球と同じくする環境を整えているものがいるのだ。
体に異常はない。
つまり、問題ないということだ。
それにここでもたもたしていたら、さらに追撃の手が来るかもしれない。
だから、これからすることは決まった。
「走るしかない、か。」
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