第27話 責任と叱責

「はい、ああ、そうなんですね。いえ、こちらも朝に別れてから、その後ライン通話をしたんですがつながらなくて……。はい、失礼しました」

 あかねは事務所の固定電話を切り、受話器を置いた。

「何って?」

 風呂から上がった、つむぎが濡れた頭をタオルでくしゃくしゃに乾かしながら言った。

「真君の家に掛けたんだけど、彼、家にも帰ってないみたいで。お母さんが心配してた」

「どこ行ったんだろうね」

 つむぎは紙を乾かすのを止めて、タオルを肩にかけ、顎に右人差し指を当てた。

「律儀だから、あちこち出歩く子じゃないと思うから、さらわれたと考えるのが普通かもしれない」

「うーん、飯野さん誠実そうだからなあ」

 すると、事務所から電話が鳴った。

「はい、笹井探偵事務所です。あ、飯野さん。はい、あたしが探偵だから調べてと。もちろんそれは承知の上です。ですが、真君はさらわれるようなことをしていないとは思うんですけど。はい……。おっしゃる通りです……」

 何だか、お姉ちゃん、だんだん意気消沈になっていってるなあ。と、つむぎはお茶を飲みながら目線を心配そうにあかねに向けている。

「はい、すみません。誠意を見せてって、あたしにできることは真君を早く探すことでしか……。はい、もちろんです。今から探します」

 そこでプチッと電話が切れた。

あかねはショックだったのか、電話がツーツーと切れた後も、受話器を持ったままだった。

「どうだった?」つむぎは心配そうに見つめる。

「何だか、まこっちゃんのお母さん、息子を溺愛しすぎてるみたいで、あんたが悪いばっかり言うんだ」

 まあ、危険な仕事をしているから、もちろんリスクもある。今回は覚悟の上で引き受けたんじゃないのか。と、つむぎは思ったが、今ある事情に同情もあった。

「親って言うのはそういうもんじゃない?」と、つむぎは言った。

「そうなんだろうけどさ。どうしたらいいのか……」

 あかねは頭を抱えていた。いつもは自然体で自由な姉が、実は結構打たれ弱かったり、繊細になったりする。つむぎは今のあかねには申し訳ないけれど、そんな彼女が好きだった。

「取り合えず、菅さんに電話したら? いつでも、出てくれるんでしょ」

 あかねはハッとした。「そうだね。菅さんにアドバイスをもらおう」

 あかねは菅のスマートフォンに電話した。コール三回目で菅は出た。

「もしもし?」

「あ、夜分遅くに失礼します。菅さん、真君がいなくなっちゃった……」

「え、どういう事だ?」

 菅は素っ頓狂を上げた。

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