第二章 深夜ホステス殺人事件
第1話 突然の依頼
「何か、ええネタないんか?」
そう言ったのは、相変わらず頬杖をついている満田だ。
「飯野はネタないのん?」
満田は飯野真の方に目を合わす。
真は、あの洋館地下金塊殺人事件から一カ月あまり過ぎたが、あの事件以来、ずっと気持ちが舞い上がって、仕事に打ち込むことに集中していなかった。
「無いといえば無いですけど、探せばあると思います」
と、返事をした。
「何や、その曖昧な答えは……。社長がこの前、称賛してくれてたわ。事件を解決したことで……」
社長の神田は、今日も出先の出張に行っている。年齢は六十歳で、白髪交じりのスマートな体系だ。
「あの時は、社長も嬉しそうでした。しかし、池田さんを亡くしたのもショックでしたからね」
真は無表情で、満田を見た。
この天橋出版社は神田も入れたら、今在籍しているのはジャーナリスト四人しかいない。神田、満田、国分、そして真だ。
真は向かいの国分を見た。彼は三十五歳で顔が頬をこけている。決してダイエットしているわけではない。ただ、食べていないのだ。
国分はちょっと変わっている。オカルトが趣味で深夜のトンネルを徘徊したり、廃校を一人で探索していたりしていた。
そして、それをスクープ記事に出している。でもまあ、一番真面目に働いているのは彼であるのだが。
国分は「ひひひひひ」と、引き笑いを交えながらパソコンのキーボードを叩いていた。何とも近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
真はスマートフォンを取り出してみると、ラインのメッセージが入っていた。笹井あかねからだった。
「真君、ヒマ?」と、書かれた文章に、真は思わず満田を一瞥した。
彼はため息をつきながら、パソコンで何かネタになる方法を探している。
真はあかねに「ヒマ」と、メッセージを返した。
すると、一分も経たないうちに、返事が返ってきた。
「ちょっと、あたしの手伝いをして欲しいことがあるから、今から来てくれない?」
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