第18話 真相、終幕へ……
「やけに暗いな……。電気ないの?」
村瀬は真に言うと、真はドアの横にスイッチがあるのに気付いた。
パチッと押すと、電気がパラパラと付いた。ただ、電球を変えていないのか、薄暗く、所々電球が付いていなかった。
「よし、これで、わかる。ありがと」
そう村瀬に言われて、真は照れた。
二人は階段を降りると、そこには金の塊が山のようにそびえていた。
「凄い。これって、お金に換えるといくらになるんだろう」
村瀬は目がドルマークになるくらい、金に目がくらんだ。
「凄いですね。何だか金が更に部屋の明かりをともしてるようですね」
「きゃあああ」
階段の上から、田中が悲鳴を上げた。何事かと二人は思った。
小野寺が猟銃を持ちながら、階段を降りていく。その動きは老人にしてはピンピンしていた。
もちろん、杖なんてついていない。
「貴様ら。痛い目に合いたいのか?」
小野寺は登坂の顔には変わりなかったが、凄い剣幕で怒鳴り散らしていた。
「ヤバいですよ。どうしましょう」真は怯えながら、村瀬の後ろに隠れる。
「おい、男なんでしょ。後ろに隠れるな」
「どちらでもいいぞ。今からお前らを撃ち殺してやる」
そう小野寺は階段を下りて、銃を構えた。
「フン、撃ってみたら」村瀬は緊張の中、顔が引きつっていた。
「何だと小娘、貴様、冒険家じゃないな」
「やっと気づきましたか。登坂さん。いや、小野寺壮太。あたしはあんたを探しにこの村に足を運んだんだよ」
そう言って、胸に入っていた探偵手帳を見せた。
「ムッ、探偵か……」
「良くわかったわね。さすがに老人じゃ見えないもんな。あたしは私立探偵、笹井あかね。登坂さんの死因を追うために、あんたに会ったのよ」
「フン、どうせ、池田と同じ考えなんだろう」
「登坂恵という名前はご存じ?」
その名前に、小野寺は少したじろいだ。
「その名前を何故知ってる……」
「本当のお爺ちゃんがどこにいるか探して欲しいという依頼を受けてるからね」
そんなこと、何で黙ってたんだと、真は息をのんだ。
「登坂の居場所が知りたいと。ふざけるな。あんな爺さん、俺が放火殺人事件をやった後、その一部始終を見やがって、自首しろ、自首しろと、警察に電話しようとしたから、あいつらと一緒に、ガラスの置物で頭を叩いてやったわ。正義ぶるからムカついたんだよ」
「その登坂さんはどこに?」
「ハハハ、その金のそこに眠ってるぜ。ミイラと化してな。さあて、どうせ俺も、もう警察にお手上げだ、最後にお前らを殺るのもいいぜ。俺は根っからの殺し屋だからな」
そう言って、小野寺は地下部屋に響き渡るように笑った。
「何も知らない池田さんを殺したのも、その血が騒いだというのかい?」村瀬は言った。
「池田が何も知らないと思ってたか? あいつはかつて十三年前に殺された、立川の息子
だよ」
「え?」村瀬と真は同時に言った。
「立川はよく子供を連れては探検だと、一緒に子供と金を探していたんだ。俺からしてみた
ら、金目当ての為に、子供と愉快な時間を共にする奴が、意味が分からなかった。奴の息子
は昨日、宝の本を見て、俺に言ったんだ。俺が小野寺だと知らずにな。
自慢しやがって、お前らが寝ようとした後、俺はあいつに呼び出された後に、俺はかつて宝探しした親父の血を受け継いでいる。とか、ほざきだしたから、寝ている間に持っていたロープで柔道の背負い投げのように首を絞めてやったぜ」
池田さんが元々、この未解決事件と関係があったとは……。それで、この事件だけは熱心になっていたのか。真はようやく池田と事件との接点がつかめた。
「話は終わりかい? お前から殺してやろうか」
そう言って、小野寺は猟銃を構えた時に、パトカーの音が聞こえてきた。
「金の山に隠れるよ」
村瀬、いや――あかねは真の手を取り、後ろにあった金の山に隠れた。
村瀬は小野寺が聞こえないように、真に耳打ちをしてアドバイスをする。
「フフフ。そんなところに隠れても無駄だ。右か左がどちらから出るかな?」
そう楽しんでいる小野寺は金と金の間の隙間をのぞき込んで、あかねと真が小野寺を隙間からのぞき込んでいることに気づいた。
「そうやって、俺の動きを見てても無駄だぜ」と、余裕があるのか笑いながら金の山に近づいた。
「今だ!」
あかねは声を掛けて、真も一緒に金に体当たりをした。
千個くらいある金は、一気に前に崩れ落ちた。その重さは計り知れないほどで、小野寺に直撃した。
小野寺は気を失った。
「やったー」
と、あかねは真とハイタッチをして笑った。
目が、への字になるくらい嬉しいあかねを、真はこの人は自由な女性だと思った。
その後の調査で、小野寺は月に一回は市内に行き整形を重ねてきた。美容整形外科の担当の人物が、本来なら若返りの整形をするのに、わざと年寄りの整形をするのは不思議だったと、証言した。
また、この館の底にはミイラと化した人物がいた。調べると数十年は経っていて中々人物が判明しなかったのだが、登坂敬三で間違いないと断定された。
小野寺は幼い頃から、お金に対して執着があり、十三年前の事件を起こして、金を全て自分の物にした。しかし、その犯罪に怯えていたというのも事実であり、時効が来るのを待っていたようだ。
「しかし、こんな死刑でもなっても可笑しくない事件でも、時効ってあるもんかね?」あかねは言った
「どうなんでしょうね。死刑くらいの事件を犯したら、時効はないって聞きますけどね」
「結局、老人の顔を被り続けなくちゃならなかったわけだ」
あれから、二人は仲良くなり、スマホのラインで通話のやり取りをするようになった。あかねは今回の探偵での依頼も、事件も解決したこともあり、警察から表彰状を貰ったという一石二鳥だった。
とはいえ、真も執筆が進み、月刊の雑誌で未解決事件の真相を綴った内容がのちにヒットし、社長も部長も池田が亡くなった悲しみもあるが、部数が伸びたことにも喜んでいた。
「そういえば、登坂恵さんは、あの事件についてどう思っているんですか?」
「まあ、彼女は元々登坂さんの名前を借りた小野寺が、本物のお爺さんだと思ってなかったから、スッキリしたっとお礼を言ってたね」
「お爺さんは亡くなってしまってましたけど」
「それは、予想してた。だから、あたしのところに来たんだ」
「へえ」と、真は言ったが、もう一つあかねに聞きたかったことがあった。
「そういえば、元々恵さんから話を聞いてたのに、何で、小野寺が登坂さんの姿をしているとか。あかねさんが十三年前の事件は、小野寺が握ってるっていうことを黙ってたんですか?」
「それはね……」
あかねは右頬を掻き、フフッと笑いながら言った。
「読者に楽しんでもらいたいから、あえて引っ張ってみたんだ」
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