第7話 妹
「そうだ。そんな他人のためやら何やらくだらないと言っているんだ!」
糸が切れたように彼女から表情が消え失せたかと思えば、急に沸騰したお湯のように赤くなる。
「くだらないとは何だ!! 私はみんなのために必死に戦ってるんだ!! それを……それを……一人で責任も負わず旅をしているお前に何が分かる!!」
凄まじい気迫と怒声で俺に迫ってくる。瞳にはこちらへぶつけるための憎悪を含んでいた。
「もう……帰らせてくれ。私は一人で鍛えて強くなる」
「ほう。いいのか? 強くならなければまた大切な人を死なせるんじゃなかったか?」
「っ……早く帰してくれ」
全くこれだから人間の感性はよく分からん。何で他人のためにそこまで頑張れる。何でそんなに怒れる。
「まぁいいだろう。俺は予定通りこの町を楽しませてもらおう」
この言葉に返答はなく、クリシアは拳を強く握り締めて黙り続けるだけだった。
☆☆☆
【クリシア視点】
ハンドルディ殿と別れた後にしばらく実戦を推定した訓練をして、暗くなったあたりで私は家に帰る。
「お姉ちゃんお帰り!」
家に帰るなり妹のアリシアが走って私に抱きついてくる。私の今年十三になる可愛い妹だ。
両親が数年前に死んでから、私は妹と一緒に暮らすために騎士団に入り生活費を稼いでいた。
もちろん幼い頃から他のみんなを守りたいという夢があったから入ったといこともあるが。私にとっては何よりもまず妹が第一で大切な存在だった。
「ただいまー! 良い子にしてたか?」
「うん! あっ、そうそう。今日の晩御飯はね、お姉ちゃんの大好きなシチューだよ!」
リビングの方からは美味しそうなシチューの匂いが漂ってきており食欲をそそられる。
「あ、そういえばお姉ちゃんにお客さんが来てるよ!」
「お客……誰だろう?」
「えっとね確か……ハンドルディって人!」
「はい!? ハンドルディ!?」
まさかの名前に驚いていると、リビングの方からハンドルディが出てくる。
いつものあの宝石を服につけた嫌な趣味の服を身につけ、さも当然かのように私の家にいた。
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