第3話 神輿

 コングが鳴ってから十分後。レッドとパープルはもう立てる状態ではなかった。

 最後まで諦めずに戦い続ける彼らに、俺は良い感じに手を抜き最高の試合を演じる。


「な、なんてことだぁ!! まさかゴールドがここまで強いとは!! レッドとパープルは奮闘も虚しく敗れてしまったぁ!!」


 何回ものコングの音と共に辺り中から歓声が沸く。


「うぉぉぉぉ!! まじかよ!? 誰だよあいつめちゃくちゃ強ぇ!!」 

「イケメンな上に強いのね!! 好きだわ!!」

「ゴールド良い試合をありがとぉ!!」


 今回も俺の圧倒的な強さにより騒がしくなった。龍の時とは違い周りはノリが良く、俺の満足いく歓声を上げてくれる。


「お前ら! 覚えておくがいい! 俺はこの世界に自由に生きる者! ハンド……」

「ハンドルディ殿!!」


 その時店の扉が強く開け放たれ、クリシアと何人かの騎士がなだれ込んでくる。


「何だまたお前か」

「お前かではない! 私の稽古のはな……じゃなくて勝手に城から出るな!!」


 どうやら客の俺が勝手に居なくなったせいで向こうは大変だったのか、クリシアは額に汗をかいておりこの街を走り回ったのだろうということが分かる。


「まぁいいだろう。そろそろ良い時間だし寝るか。おい客ども! これは俺からの選別だ受け取れ!」


 俺は鞄から大量の宝石を取り出し辺りにばら撒く。

 観客達は阿鼻叫喚の声を上げ宝石に群がる。


「ハンドルディ殿! この国での勝手な行動は謹んで……」

「分かった。そうしよう」

「えっ……あ、あぁそうしてくれると助かる」

「だが、一つ頼みがある」


 俺はただ帰るだけではつまらなく、俺らしくないのである一つのことを思いつき、良い感じに人手があるのでクリシアに一つものを頼む。



☆☆☆



「何あれ……あれってクリシアさんでしょ? 何やってるの?」

「あの乗り物に乗っている金色の宝石をつけた人は何……?」


 俺が出した物は東にある島国で変な格好をした女から貰った神輿という赤い乗り物だった。

 なんとこれは人力で動かす物らしく、分身して俺が動かすことも考えたがそれはダサいのでちょうど人手が欲しいと考えていたところだった。


「ハンドルディ様万歳!」

「ハンドルディ様万歳!」


 騎士とクリシア達は打ち合わせ通り俺を讃え、俺はその上で神輿に付いている椅子に座りそこにふんぞり返る。


「あーはっはっは!! お前ら讃えろ! ハンドルディ様のお通りだぞ!」


 そのまま騒がしく目立って国王が用意してくれた部屋まで戻るのだった。

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