第2話 レスリング
俺はクリシアを適当にあしらって作った一時間という時間で優雅にお菓子と紅茶を楽しむ。
楽しみ終わった後服に更に宝石などの装飾をつけ城を抜け出し夜の町へと繰り出す。
炎や光属性魔法で作ったと思われる光る球体を灯りにし、夜なのに眩しく騒がしい繁華街を練り歩く。
「お兄さん? 二時間で三万ゴールドよ。どう?」
「今は女に用はない失せろ」
しつこいキャッチを振り払い、俺はそもそもこの国に来た目的であるとある店に辿り着く。
そこは他の店よりかなり広く、照明も様々な色を用い豪華で華やかな見た目であった。
「ここか。祭りの場所は」
看板にはプロレスコロシアムと店名が書かれており、やはりここで間違いないようだった。
「さぁ! 始まりました!!」
店に入るなりより一層明るく眩しい光が目を照らし、店員の限度を知らないうるさい声が耳を劈く。
「ルール無用のバトル! 今回はあの最強の二人の対決です!」
店の中央には大きなリングがあり、それを取り囲むようにして客が酒を手に騒いでいる。最高の場所だ。
リングには二人の大柄な男がいた。赤色の服を着た男と、紫色の服を着た男だ。
「では皆さん盛り上がる準備はいいでしょうか! レッドvsパープル! 伝説となる一戦が今始ま……」
そのタイミングで俺は地面を蹴りリングの中まで跳んでいく。
「この勝負俺がもらった!」
「な、何だお前!?」
赤服の方の男が突如としてリングに舞い降りた俺に困惑し真っ先に声を上げる。
「お、おーと!? これはこれは!? まさかの乱入者だぁ!!」
店員は一瞬遅れたものの、すぐに解説を入れる。流石プロといったところだ。
「はぁ!? 俺とレッドの戦いに首を突っ込むじゃんねぇ!! 一般人でも降りねぇとぶっ飛ばすぞ!!」
紫の方の男は威勢よく俺を威嚇する。
この戦いに期待していてそれを俺がぶち壊したせいかとても腹が立っているように思われる。血管を頭に浮かび上がらせて、全身の筋肉を膨張させる。
「ルール無用なんだろ? それに乱入者はこの試合だけじゃない」
俺が調べた限りじゃこの店では稀にこのような乱入者による試合があるらしい。
店としても参加者としても盛り上がればどうでもいいので許されているというわけだ。
「面白れぇ……じゃあまずこのパープル様と闘いやがれ!」
「つまらん! お前ら二人がかりでかかってこい!」
片方だけでは盛り上がりに欠けるので、赤色の方にも挑発して俺と一対二で戦わせようとする。
「へぇ……燃えるねぇ。このレッドとパープル二人がかりに挑むとは……後悔すんなよ?」
二人が体をポキポキと鳴らしこちらを叩き潰す準備をする。
「あ、あの……あなたのお名前は? 解説の際に何と呼べが良いか……」
「そうだな……あの二人に合わせてゴールドとでも呼んでくれ」
俺は自分の金色の服の反射を観客達に照らし、自信たっぷりに正々堂々二人の前に立ちはだかる。
「では急遽乱入しましたゴールドと、まさかの伝説タッグ! 最強の二人のコンビとの試合です!
果たしてこの挑戦者は新たな伝説を創る者となるのか! それともただの馬鹿者なのか! 皆様お酒の準備はよろしいでしょうか!? 盛り上がっていぎしょう!! それでは試合始め!!」
試合のコングが鳴り、二人の巨体がこちらに迫ってくる。
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