第10話「魅せた神」

この人生という大弾幕が

僕には重荷だった

生きる以上

自分を演じないといけない

それが苦しかった


日の目を避けて

歩いても

人にぶつかり

謝り

顔を下げ

後悔する


生きたって

なんの得もない

だから死のうと

強く思うが


そう簡単に割り切れなかった

そうして淡々と

闇雲に

水を跳ねないように

一歩一歩注意するが

それでも不完全過ぎる僕は


泥をかぶせられ

汚名を被った


生きても

死んでも

どうとないと

やがて眼は死に


腐った情が

ぶら下がる


そうして錆びていく

現実性と精神性

その両極に僕は疎ましいと

劣等感を覚え


空っぽになった

非常な日々が続いた


生きてさえいれば良いと

大人は言うが

生きる事が難しいと

何故気づかないんだと

そう憤りを覚え


誰も頼りに出来なかった

そうして

一人歩く

この世界で


出会う全てに拒絶し

身を守るが

おかしいと

叩かれ

異常だと

退けられ


やり場のない

心身が露見し

吐き気を覚える


もう殺して

一切を切り伏せて

高笑いして

狂ってしまおうと思うが


空気を読むように生きた僕が

場違いな事を出来る訳でもなく


ただ痛烈な惨状に

泣かないようにと立たないといけない


ああ、本当に

僕は、

念じても死ねない体が憎い


もう頼むから

来ないで


これ以上

何も背負わせないで


何故、命は死にたい時に限って

死ねないのですか


ねぇ神様

あなたは、人をデザインしただけで

面倒は見てくれないんですか


もう僕は

死にたいんです

なのにあなたは無口で

何もしてはくれない


それでも生きろと

あなたは言うのですか

まだ何かあるんですか

この先に

この未来に


あなたは僕に何を魅せたいのですか

本当に都合がいいですね


生きます

生きてみますよ

もしそれでただ残酷だったっと命が終わったら


神様、あなたをもう信じたりしません

だけど今日くらい信じます

明日何が起こるかは分かりません


だからあなたに騙されたと思って


生きてきます。

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