第8話「よりみち」
命だけあって
機能しない僕
”死にぞこない”だと
強く否定され
今か今かと
死ぬ機会を伺っていた
ああ、どうせ僕は
人の制約通りに生きても
邪険にされ
かと言って
下手に出れば
漬け込まれ 絞られた
そうして
手に余る現実を
変えないように
触れないように
微動だにせず
意思を消して
空気になった
だがそれも
気休めでしかなく
刻々と奈落へ向かっていった
この世界全てにおいて
僕はあまりにも無知で
あまりにも滑稽で
あまりにも臆病であり
その真実が日を増して
僕と世界にいさかいを作り
その分断された荒野に
ただ一人、
なすすべなく
転がり落ち
照らされ
干されていく
もう浮き彫りになった
自我の忌々しい輪郭に
ただ怖じ気づき
自分をもっても自分だと
信じたくなく
いっそ亡骸になって
自身から荷を降ろそうとするが
死ぬことが出来なかった
一体僕は何故
死ねないのかと
何故、恥だらけなのに
毅然と息をしてるのかと
その生命の根源が
僕のどこから溢れるかと
何をよりどころに時を繋いでいるのかと
そう相反して体は生き
僕はナイフを握って
命に抗ったが
次の日にはかさぶたが出来
修繕される肉体に
嗚咽を吐いた
ああ、この命とは
誰かにとっては枢機なものであって
不死さえ望むものもいるという
その人生とは
一体どんなものなのか
きっと僕には知りえないが
でもいつか不死に届くような
人や物事との付き合い方を知れれば
僕はきっと
少なからず救われるのだと思う
だから今日も、
僕は、
死ぬ前に寄り道をして
また一日と息をしている。
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