第12話・次の一手

 グルディアに襲われていた二人と共に街に戻ってきたブラスト。

 これ以上は狩りが進まないと思っているみたいで、彼は複雑な気持ちになりながら口を開く。


「ここで別れるが問題ないか?」

「え、ええ! ありがとうございました!」

「いや、気にしないでくれ」


 女性プレイヤーの言葉にむず痒くなったブラストは、表情が崩れない様に我慢しながら手を振る。


「あの人が攻略組に入ってくれると良さそうだな」

「それは思うけど、前に新緑の森林で会った奴みたいじゃない?」

「確かにあの娘と雰囲気が似てるか」

「そうね」


 二人は何か思うところがあるのか呆れた様にため息を吐いた。

 その言葉はブラストには届いてなかったが、二人の言葉は間違ってはなそうだ。


(特に気にすることではないよな)


 改めて始まりの街をブラストはブラブラと歩き始める。

 するとルイセからメッセージが飛んできたので、彼は内容を読むが……。


「交渉が終わったから戻ってこいだと……」


 今は暇だから問題ない。

 だがいきなり過ぎるので、ブラストは頭が痛くなりながら目を伏せる。


(昨日の話では互いに戻ってきた時に話す予定だったよな)


 予定を変更するレベルの何かを得たのか?

 頭の中でいろんな事が思い浮かびごちゃごちゃとし始めたブラスト。

 

「まあ、考えても仕方ないか」


 一つため息を吐いた後、冷たい果実水を購入してクールダウン。

 そしてルイセが待つ宿に向かって歩みを進めた。


 ーー


 何個か気になる物を購入した後。

 宿屋に戻ってきたのでブラストがルイセの部屋の扉をノックする。


「戻ってきたわね」

「ああ」


 ガチャリと部屋の扉が開くと、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべる彼女が待っていた。


(なんで不機嫌そうなんだ?)


 今日は攻略組のリーダーとの交渉だったはず。

 ブラストは彼女の顔を見て若干引きながら部屋の中に入っていく。

 そして、椅子にすわるとルイセが真顔になりながら言葉を呟く。

 

「いきなりで悪いんだけど、ごめんなさい!」

「へ? いや、何があったんだ?

「それは……」


 理由がわからないのに頭を下げられた。

 その事に驚いたのかブラストが固まっていると、彼女が申し訳なさそうに頭を上げる。


「アタシの情報が少し足りてなかったわ」

「それってドユコト?」

「えっとね……攻略組のリーダーと話していたんだけどフィールドのモンスターのレベルが上がっているみたいなのよ」

「ほうほう」


 今日のグルディアみたいにレベルが高いやつが現れる。

 その事は今日あった事で記憶に新しいのか、ブラストは目を伏せてしまう。


「も、もしかして既に出会っていたのかしら?」

「まあな。ただ相手は新緑の森林から出できたから始まりの高台にいたわけじゃないぞ」

「! ちなみに相手の名前とレベルは?」

「名前はグルディアでレベルは十一だ」

「!!」


 この一言でルイセが目を見開く。

 対するブラストは冷たい表情のまま淡々と話し続ける。


「確か新緑の森林の奥には第一ダンジョンがあったよな」

「βテストの時はそうだったわね」

「なら、もしかするとダンジョン自体も強化されている様な気がする」

「! だとすればドガンさんの言っていた事は……!」


 ここで何かがハマったのか彼女が椅子から立ち上がる。

 

(コイツの中で何かあったな)


 彼から見てルイセがなんの情報を持っているかはわからない。

 だが彼女を見ている感じさっきと雰囲気が違う。

 その為、ブラストから見ても変化がわかるみたいだ。


「こうしちゃいられない! アタシは他の情報屋にも集めた情報を流すわ!」

「なら俺はどう動けばいい?」

「それなんだけど、貴方にはこの人を探してほしいわ」

「へ?」


 コロコロと表情を変えるルイセと表向きでは真顔のブラスト。

 外から見れば対極に見えるが、内心は似ているのか彼の方も立ち上がった。


「攻略組レベルで強いがソロ専の少女プレイヤー?」

「今のままだと戦略的にきついのは話していたわよね」

「まあな。ただ、相手の情報がこれだけだとわからないんだが……」


 渡された紙には少女プレイヤーの写真と情報が書かれている。


(これだけで探せと?)


 コッチはスナイパーで近接戦闘が苦手なのもあるし、聞いている感じ第一ダンジョンの中な気がする……。

 彼女からの無茶振りに呆れる様にため息を吐きながら、ブラストはソロ専の少女プレイヤーと出会うための方法を考えるのだった。

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街の外でエイム練習をしていた俺、うっかり広場で演説中のデスゲーム主催者を撃ち殺してしまう〜敏腕美人秘書(自称)に絡まれた結果、攻略組に参加して伝説のスナイパーに! 影崎統夜 @052891

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