第11話・ブラストの不安とレベルが上がった雑魚モンスター

 ルイセがドガンと取引をしている頃。

 ブラストは始まりの高台で初日とみたいに射撃練習をしていた。


(少しだけ右にズレているか)


 狙った木の中央から少し右に弾丸が当たり、彼は納得しない様に次の弾丸を放つ。

 だが……。


「チッ」


 何か思う所があるのか手が震えるブラスト。

 このまま射撃練習をしても解決しないと思い、彼は移動しようとしたその時……。


「だ、誰か助けてくれ!」

「きゃああ!」


 木が生い茂っている新緑の森林。

 その中から初期装備を着た二人がダッシュでブラストの方に近づいてくる。


(何があったんだ?)


 ボロボロの姿になっている相手を見て彼は不思議に思う。

 その疑問も数秒後には嫌でも理解が出来る事が目に映った。


「アイツは」


 二人の後ろから高速で接近する相手。

 鋭いツノに鹿みたいな姿をしている雑魚モンスター。

 

(名前はグルディアだったよな……)


 新緑の森林の適正レベルは七くらいだったはず。

 だがグルディアの名前の横に映るレベルは十一と書いていた。


「ルイセの言う強化された雑魚モンスターか」

 

 二人の体力は限界みたいで女性プレイヤーが地面に足を引っ掛けて転んだ。

 それを見た男性プレイヤーが助け起こそうとするが……。


「! に、逃げて!」

「!?」

 

 二人の元にグルディアが勢いよく突っ込む。

 それを見たブラストはスナイパーライフルのスコープを除き、グルディアに向かって銃弾を放つ。


(ヒット)


 ベットショットはできなかったが、ブラストが放った弾丸はグルディアの胴体をぶち抜いた。

 

「降りるか」


 助かった事に喜んでいる二人を見たブラスト。

 彼は真顔のまま大岩から地面に降り、彼らの元に近付いていく。


「無事か?」

「ああ、ありがとう!」

「た、助かった……」


 ヘナヘナと腰が抜けたのか二人は地面にへたり込んでいる。

 ブラストは彼らの姿を見ながら、回復ポーションを彼らに渡した。


「どうぞ」

「い、いいのか?」

「問題ない」

「ありがとうございます!」


 口下手なブラストは真顔のままだが、二人は嬉しそうに回復ポーションを飲む。


(少しはマシになりそうだな)


 少しずつだが二人の体力は回復している。

 なら自分がやる事は一つだと思い、ブラストは彼らと共に大岩に登って詮索を始めた。


「他のグルディアはいないか」

「オレ達を追いかけてきた奴は一匹だったので大丈夫なはず」

「了解した」

(それなら大丈夫そうか)


 複数のグルディアを相手するのは骨が折れるのか、ブラストは警戒していた。

 だが男性プレイヤーの言葉を聞き、彼は詮索をやめて一息つく。


「追っ手がないのはありがたい」

「な、なんかすまないな……」

「いや、気にしなくても大丈夫だ」


 ブラストは特に問題がなかったのか抑揚のない声で返答。

 男性プレイヤーはその反応に少し困り果てていると、女性プレイヤーの方が目を輝かせながら口を開く。


「あの距離でグルディアを撃ち抜けるもんなんですか?」

「うん? あの一撃は少しズレたんだが?」

「ええ!?」「!?」


 こちらの発言に驚いている二人を尻目に、ブラストは当たり前の様に言葉を返す。


「それよりもレベル十一のグルディアには驚いたな

「ああ、偶にレベルが高い相手が現れて……」

「み、みんなが次々と光になって消えていったわ……」

「すまない」


 嫌な事を思い出した二人にブラストは謝罪する様に頭を下げる。

 そんな中、ルイセの言葉を思いなしながら彼はある事を思う。


(俺がデスゲームの主催者を撃ち殺した事の影響か?)


 確実ではないがルイセがその辺も情報集めをしているはず。

 そう思ったブラストは深呼吸しながら、次の展開を考えていくのだった。

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