第9話・食堂での話し合い

 日が落ちた夜。

 二人は少しスッキリした表情で部屋の外に出た後、新たな情報を集める為に始まりの街にある大衆食堂に入店した。


(何かいい情報が聞けるといいが)


 プレイヤー達の多くは中央広場での事件を話している。

 だが、他の内容を話している奴もいるみたいで、ルイセは落ち着きつつ目を光らせていた。

 

「ふと気になったんだけど、外にいるモンスターが強くなってないか?」

「それはオレも感じたな。というよりも相手のレベルが上がっている様な気がするんだよな」

「それってかなりやばくない?」

「お前ら冷静すぎるだろ!?」


 一人の若いプレイヤーがテーブルを叩いて立ち上がるが、他の三人は何かを諦める様な感じでため息を吐く。


「生きるのだけでも精神使うしモンスターを倒してもあんまり稼げないんだぞ……。それを知って騒いだところで無駄だろ」

「でも、おれは納得できない!」

「お前がどう考えようが別に構わないが、オレ達に迷惑はかけないでくれよ」

「!?」


 リーダーっぽい短髪の青年が辛そうに目を伏せ、赤髪の少年をたしなめる。

 

(世知辛い会話をしているな)


 ブラストは彼らの会話を聞きながら同情の気持ちが浮かんだのか、言葉が出てこなくなっていた。

 そんな中、水を飲みながらルイセが不満そうに口を開く。


「何個か良さそうな情報はあるけどまゆつば物が多いわね」

「そりゃそうだろ」

(ゲームの食堂とかは情報集めには最適だが、確実に集まるわけでもないからな)


 今回はハズレだったかもしれない。

 悲観的な気持ちになるブラストは運ばれてきた料理をつまみつつ、彼女との会話を続ける。

 すると隣の席に座っていた女性四人のパーティが、イラついているのか吐き捨てる様な言い方をしていた。


「あの青髪女、誘ってやったのにスルーするなんて!」

「あーし達を舐めすぎでしょ」

「そうよね! 今度あったらボコボコにしてやろうよ!」

「賛成ー!」


 テーブルに置かれた料理を荒々しく食べている彼女達にブラストがドン引く。

 だが彼の前に座っているルイセは何か思いついたのか、頬を緩めた。


「なかなかいい情報じゃない」

「確かにそうかもな」

「でしょ!」


 何かが通じ合ったのか互いに顔を合わせる。

 

(それだけ強いなら誘うのはアリだな)


 騒いでいる奴らが断られたと聞くが、コチラには情報のエキスパートがいる。

 ブラストはその事を思い、気持ちが軽くなりながら言葉を発した。


「次に何をやるかは固まってきたな」

「そうね。まあ、貴方には少し手伝って貰いたい事があるけど大丈夫?」

「何かあるのか?」

「もちろん!」


 自分も情報集めをするつもりだっだブラスト。

 だがいやらしい笑みに表情が変化したルイセを見て、彼は頭に疑問符を浮かべていた。


「俺にやって欲しい事はなんだ?」

「それは……」

(何かあるのか?)


 彼女の言い方にブラストはモヤモヤしながら黙っていると、ルイセは覚悟を決めた様に口を開く。


「レベリングを手伝って!」

「ああ、わかった」

「! ありがとう!」


 相手の言葉の意味を理解したブラストはあっさりと承諾。

 その反応を見たルイセは安心したのか彼に頭を下げ、本人は真顔まま一つ頷いた。


(レベルを上げておかないと後がキツくなるよな)


 最初の時ならともかく今はセーフティがなくなったデスゲームの世界。

 ブラストは気持ち的に理解しながらルイセが喜んでいる姿に心に余裕ができてきた。


「ならよろしくね!」

「了解した」


 ここで方向転換が出来た二人は、目的を決める為、気持ちを合わせながら話し合いを始める。

 そして、三つの目的を作成して実行する為の下準備を進めていくのだった。


 

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