第4話・情報屋ルイセの思惑
デスゲーム宣言&デスゲーム主催者が撃ち殺されてから数時間後。
始まりの街にいるプレイヤー達のパニックは頂点に達していた。
「これからどうすればいいんだ?」
「そんなのわからないわよ!」
「ログアウトポイントとかないのか!?」
アタフタして物を破壊する男性プレイヤー、涙を流しながらうずくまっている女性プレイヤー。
ログアウトと叫びまくっている奴まで。
阿鼻叫喚の中、赤髪で身長が低めの美少女アバター・ルイセが周りの状況を見て思考を回していた。
「どうしてもデスゲーム主催者が撃ち殺されたのが気になるわ」
彼女は今回の事件が気になるのか、色々調べているようだ。
しかし、有益な情報が集まらないみたいで本人は爪を噛み始めた。
何か売れそうな情報がないかしら?
今集まっているのは街にいれば誰でもわかる事しかない。
そう思ったルイセがふとある言葉を耳にする。
「お、おい! 街のセーフティがなくなっているぞ!」
「はあぁ!? それってどういう事だ!」
「わからない! だが痛覚もあるし設定がおかしくなっているんだよ!」
さらに焦りパニックになるプレイヤー達。
その中で彼女はある事に気づく。
「街の中のプレイヤーからだとダメージが与えられないけど、外からの攻撃なら!」
この事に気づいたルイセは足早に中央広場に移動。
デスゲーム開催者が撃ち殺された場所の近くに立ち、銃弾が飛んで来た方向を確認する。
「ここからなら始まりの高台しか狙撃ポイントがない。だけどあの距離から正確に主催者を撃ち抜けるの?」
最初は無理だと思ったのか彼女は首を振るが、ふとマップを開きある事を計算し始める。
「中央広場から始まりの高台の直線距離はだいたい一キロ。その距離を狙撃できるのは……スナイパーライフル!」
普通に考えて難しい事だが出来ない事はない。
この繋がりを導き出した彼女だが、それでも何か引っ掛かる。
思索にふける彼女は顎に手を当てたまま歩き出した。
(そのスナイパーがXと仮定して、そいつが何の為に主催者を撃ち抜いたの?)
〝X〟が始まりの高台にいたとして、デスゲーム宣言を知らないのに〝X〟はなぜか完璧な仕事をこなしている。
そこがルイセの中で疑問となって渦巻いており、スッキリしない。
彼女はブツブツ言いながら広場から出て街中を歩いていた。
(今は危険なデスゲームの世界……。もうここも安全じゃないわよね)
身構えつつ街の中を進む彼女。
ふと、その瞳に映ったのはスナイパーライフルを背負った銀髪の青年の姿だった。
安堵する彼女だがそこでふと思い至る。
「あの銀髪、βテストの時で何回も話した記憶があるやつよね」
ルイセは彼の姿と装備が気になったので注視し、そこで何かに気付いたのか目を見開いた。
「前に見た時は長距離から敵を撃ち抜いていたわよね……」
(アイツの名前はブラスト。アタシの情報では性格はクール系のマイペースなやつで一匹狼みたいなやつだったわね)
ただ、凄腕スナイパーなだけでは証拠がない。
でもルイセは直感か何かで銀髪の青年に視線を向け続ける。
(でもβテストの時は人に頼まれた時は人助けとかよくやっていた記憶があるわ)
そして、彼がスキンヘッドのプレイヤーと話し終えた時に少しだけ表情が歪んでいるところを見て笑う。
「アタシの直感は当たっているかも」
彼女はどこか確信を得た様な顔で銀髪の青年の跡を静かにつけていく。
ーー
銀髪の青年が宿屋に入った事を確認したルイセ。
彼女は彼が入った宿屋を一瞥した後、コソコソと忍び込む様な感じて中に入る。
「いらっしゃいませ。お泊まりですか?」
「ええ、一室お願いするわ」
「わかりました」
宿屋NPCから部屋の鍵を受け取った後、自分が割り当てられた場所に向かう。
そこは奇しくも銀髪の青年、いやブラストの隣の部屋だった。
(さてと、どうなるかしら)
ここで空振りする可能性もあるが、彼女は十中八九彼がデスゲーム主催者を撃ち殺したと確信している様だ。
その為、ブラストが泊まっている部屋に移動しようとするが、ここで隣から何かを呟く声が聞こえてくる。
「とりあえず……選択するしかないよな」
「! 何を選択して引き金を引いたの?」
狙っていた奴の隣の部屋になれた事を知った彼女は内心でガッツポーズ。
そのまま壁に耳を付けてブラストの言葉を聞き始める。
「何を言うのかしら?」
ドキドキしているのかルイセは片手で胸を押さえている。
そんな中、彼の言葉を聞き続けた彼女は自分の予想が合っていたと確信した。
「明日色々聞いてみるのが良さそうね」
チャンスだと思ったのか、ルイセはこのまま彼を問い詰めようと色々考え始めた。
だが、彼女の思惑が違う意味で外れるとはこの時の本人は思わなかったみたいだ。
「さあ、楽しみにしてなさい」
だが、嬉しそうに笑う情報屋の彼女の苦労はここから始まっていく……。
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