第6話 まさかの恋のライバル登場!

 「あ・・・、あの・・・。」僕(佐藤 学(まなぶ))は大好きな女の子、今田 早紀(いまだ さき)に話かけた。

「あっ!佐藤くん。どうしたの?佐藤君から私に話しかけてくれるなんて珍しいね。」今田早紀は笑顔で愛想よく答えた。僕は天使の笑顔だなと思った。少し顔が赤くなってないか心配になった。

 「ええと、今から竹内くんと議論で勝負しようという話になって、それで第3者の議論の勝敗の判定をする人が必要なんだ。それで、今田さんにその役をやってもらえないかなと思って、声をかけたんだ。」今田さんの反応がわりと予想外に良かったので、僕はわりと冷静に要件を伝えることができたのだった。

 今田さんはしばらく考えてからこたえた。

 「なんで私が・・・?まあ、別に良いけど・・・。急にそんな重要な勝負の判定を頼まれるなんてびっくりしちゃった。」

 「それで、やってくれるの?」僕は今田さんにきいた。

 「いいわよ。佐藤君なら、竹内になんて負けるわけないと思うけど、頑張って!応援してる。もちろん、判定は公平にするよ。」今田さんは、そうこたえた。今田さんの竹内にくんをつけないところや言い方とか発言の内容からして、はっきりは言わないけど竹内に対して良い印象はなさそうだ。そりゃそうだ。普段から態度があまりよくなくて、僕にカンニングの疑いをかけさせるようにしこんだりするような奴なんだ。僕が竹内にされたような事もきっと知っているに違い。きっと僕の思惑もじゅうぶん理解しているんだろうなと思った。


 話がすみ、僕と今田さんは竹内のところに行った。すると竹内は予想外の反応をみせたのだった。

 「ええええ!今田さん。なんでここに・・・?」竹内のこんなうろたえている所は今までみたことがない。

 「佐藤君と竹内が議論で勝負するから、その判定に私にしてほしいと言われて、それで議論の判定をする役を引き受けて、ここに来たの。」今田さんは少しむっとした感じで竹内に言った。

 「そうなんだ・・。」竹内はこんな言われ方したら、いつもなら何かもっと言い返したりしそうだけど、なぜかおとなしかった。もちろん今田さんの発言の内容は、竹内にだけ、「君」とか「さん」とかつけてないのを除けば、丁寧ではあったけど言い方がだいぶ悪かったから、それに対して竹内がきれそうになると思ったけど、そんな事はなかった。

 僕はこれは、もしかして・・。もしかしなくても竹内は今田さんの事が好きなんじゃないかと疑い始めた。そして次の竹内の発言でそれは確信になった。

 

「僕が勝ったら、今田さん。LINE(らいん)交換しよう。」竹内は今田さんに言った。

 僕(佐藤)は、竹内が自分の事を「僕」と言ったのにびっくりした。普段はキャラ的に「俺」とか言ってそうなキャラなのに「僕」と言ったのだ。もちろん、普段、竹内が自分の事を何と言っているかよく知らないけど違和感ありまくりである。竹内は今田さんに気に入られようと良い人っぽい人のふりをしているようだ。なるべく好青年を演じたいようだ。

 僕は竹内のさっきのLINEの話をきいて、そういやさっきと言っていることが違うなと思ったので、いちおうきいてみた。

 「あれ?竹内くん。僕に勝ったら、僕が竹内くんの言う事なんでもきくっていうのはどうなったの?」

 「そんなのどうでもいい。僕は今田さんとLINEの交換がしたいんだよ!」竹内はきれ気味にそう言った。

 僕(佐藤)はもちろん、そっちを優先にするに決まっているなと自分で竹内にきいといて納得した。しかし、これで、もし万が一(まんがいち)、竹内が僕(佐藤)に勝ってしまったら竹内と今田さんがLINEを交換して仲良くなってしまって、僕とはただのクラスメイトで、しかも僕の性格的に今後、何も話しかけれれない状態になってしまうんじゃないかと思った。

 しかし、ここで自分から「僕も今田さんとLINEを交換したい。」とか言ったら、僕が今田さんの事が好きなのがばれてしまう。まあ、事実だから別にばれても良いし、いずれ知ってほしいけど・・・。でも、僕はどうすれば良いんだ・・・。僕はしばらく黙っていると今田さんが思いもよらないことを言った。

 「それじゃあ、佐藤君が竹内に勝ったら、私とLINE交換するってことにしようよ。ああ、でも私とLINE交換なんてしたくなかったら、別に違う内容でももちろん良いわよ。」今田さんは少し恥ずかしそうに言った。

 あれ?もしかして、僕(佐藤)が今田さんの事が好きなのばれているのか。だとしたら、なぜばれているんだ・・?ばれるようなことをした自覚が全くない。

 でも、今田さんが自分からそういってきたので僕はこう言った。

 「うん。それで良いよ。竹内くんが僕の言いなりになるなんて少しかわいそうだしね。」

 「なんで、俺が負ける事が前提なんだよ!」竹内は怒って言った。自分の事も「俺」になっていた。

 そして、議論の勝負はこれから始まる事になったのだった。


(続く)

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