第5話 3人のステータスを確認しよう

 13.


 3人に俺の知る限りの情報を説明しつつ、全員のステータスを聞いてみたところ、以下のようになっていた。


 名前 :柊 ことり

 性別 :女

 レベル:1

 力  :1

 魔力 :3

 耐久 :1

 素早さ:2

 耐性 :1


 スキル:直感3(13%)


 名前 :牧田 美也子

 性別 :女

 レベル:1

 力  :1

 魔力 :2

 耐久 :1

 素早さ:3

 耐性 :1


 スキル:投擲2(34%)


 名前 :北村 栞

 性別 :女

 レベル:1

 力  :1

 魔力 :3

 耐久 :1

 素早さ:1

 耐性 :2


 スキル:解析1(55%)


 ここからわかることは、だいたい3つ。

 1つ。ステータスには個人差があること。さらに予想でしかないが、俺のレベル2の時のステータスと比較すると、上り幅にも個人差があるのではないかということ。

 2つ。最初のスライムを倒して俺のレベルが2になっていたにも関わらず、3人とも1ということは、経験値のようなものは倒した俺にしか入っていないのではないかということ。

 3つ。初期スキルにも個人差があり、おそらくこれは今まで生きてきた経験や能力によるものではないかということ。

 ・・・と、大幅に予想も交えながら3人に話してみたが、上り階段にたどり着く頃にはおおよそ同意が得られた。

 ちなみに、ゴブリン戦を経て、現在の俺のステータスはこうだ。


 名前 :八島 玲央

 性別 :男

 レベル:7

 力  :15

 魔力 :9

 耐久 :12

 素早さ:13

 耐性 :7


 スキル:剣術3(56%) 取得経験値5倍 魔力刃1(20%)


 たった2体のゴブリンを倒しただけなのに、なんと2レベルアップした上、剣術スキルが50%近く上昇している。

 これにより、経験値や熟練度的な物は、戦闘時間やその濃度のようなものにも影響されるのではないかと予想できた。

 そして注目すべきはやはり魔力刃スキル。

 ついに%が上昇したのだ!

 最後、ゴブリンにトドメを刺したあの光の刃が、たぶんそうだったんじゃないかと思う。

 階段を上りながら、腹の底にまだ感じる熱をゆっくり動かして右手へ移せば、さっきよりは格段に小さいが光の刃を再現できた。

 これならなんとかまだ戦えそうだ、と安堵しつつ、ことり達との会話を続ける。

「じゃあ、牧田さんも北村さんも、ここに来る直前、ことりのすぐ近くにいたんだ?」

「そうですよー。ってかセンパイ、センパイなんだからそんな遠慮しながら話さないでくださいよー」

 と、早速コミュ力を発揮する牧田さん。

「い、いやぁ・・・別に遠慮とかはしてないんだけど・・・」

 どちらかというと、気後れしてます、はい。

 だって仕方ないじゃんか! 普段女子と関わる機会すらない陰キャなんだもの!

 ていうか、地味に『センパイ』呼びにグッと来てしまっている自分がいる。

「だってことりは『ことり』なのに、ウチらは苗字呼びですよ? 距離感じちゃいますって! ね、しいちゃん?」

「う、うーん・・・そう、なのかな?」

 そんなバカな、と言いたい気持ちをグッとこらえて、ことりに助けを求め、視線を送る。

 するとことりは気づいてくれたようで、笑みを浮かべ、頷いて見せた。

「それはそうだよ! わたしとレオにいは、幼馴染だもんっ!」

 違う、そうじゃない。

 顔面に(ドヤァ)と書かれてそうな顔でこっちを見てるけど、そうじゃないんだよ、ことり。

 げんなりしながらも、とりあえず上階に着いたのでまだ見ぬ道の先へと足を向ける。

「えー、ずるいじゃーん!」

「ずるくないの! お・さ・な・な・じ・み! だからね!」

(ドヤァ・・・)

「ま、まぁまぁ、みいちゃんもことりも、あんまり大きな声出さないように、ね?」

 北村さんは見た目通り冷静な性格らしく、周囲を見回しながら2人のフォローに回ってくれた。非常に助かる。

 俺、あそこに混ざっていく度胸とかないし・・・

 はぁ、と後ろの喧騒に小さくため息を漏らしつつ、歩みだした。


 14.


 薄暗い通路をまたしばらく歩くと、T字路に差し掛かった。

「ことり、どっちがいい?」

「えっ、わたし!?」

 なにやら驚いてるけど、ほかに適役もいないだろうに。

 なんせことりは『直感』スキル持ちだ。

 道がわからない以上、勘に頼る他ないと思う。

「ことりの『直感』を頼りにしてるんだよ」

「えー・・・うーん・・・右、かなぁ・・・?」

 ものすごく自信なさげに呟いたことりの言に従い、右へと歩き出す。

「ちょちょちょっ! そんなすぐ信じるの!?」

「ほかにどうしようもないしなぁ」

 言いながら他2人にも目を向けるが、同意するように頷いてくれた。

「えぇー・・・? 大丈夫かなぁ・・・?」

「大丈夫大丈夫。 ほら行くぞー」

 務めて軽く言いながら、率先して進む。

「あ、待ってよー!」

 あわててついてくる3人分の足音を後ろに聞きながら、警戒だけは解かないよう気を付ける。俺がまだ見てないだけで、この階にもゴブリンとか出てこないとは限らないからな。

 その後、分岐がある度にことりに意見を聞いて、その方向へと進み続けることしばらく。

「・・・なんも出てこないなんてことある?」

 え、直感ヤバすぎか?

 信じられない気持ちでことりを見つめるが、本人には自覚がないようで、困ったような顔をしていた。

「あ、また分かれ道だよ。ことり、どっち?」

 もはや牧田さんもことりに丸投げスタイル。北村さんも異論などないようで、後ろでおとなしくしている。

「うーん、うーん・・・嫌な感じするけど・・・左に行きたい、かな?」

「嫌な感じ?」

 思わず問いかけるが、ことり自身もわかっていないようで、眉を八の字にして見返すばかり。

「まぁ、行ってみるか」

 通路の奥を見据えながら、右手の竹刀(の柄)を確認し、さっきまでよりも気持ちゆっくりと歩く。

 やがてもはや聞きなれた重い水音が響き始め、その先からスライムが現れた。

「あぁ、嫌な感じって、そういう・・・」

 納得と共に熱を移動させ、魔力刃を発動。

 即座に後ろに回した右足で地を蹴って、すり足で近づき、切りつけた。

(グチャ)

 竹刀で殴った時とはまるで違って、ほとんど切った感触もない。

 ほんのわずかな手ごたえだけを残して、スライムはただの水たまりへと姿を変えた。

 魔力刃、つえぇー・・・

「おー、センパイのそれ、やっぱすごいですねぇ・・・あれ、なんですかそれ?」

 いつの間にかすぐ後ろに近づいていた牧田さんが、地面の水たまりを指さしている。

「ん? ・・・なんだこれ?」

 歪な形の、丸みを帯びた緑色で透明な石。

 大きさはビー玉より少し大きめくらいで、手のひらにすっぽりと収まる程度。

「なんだろ? 綺麗・・・」

 下から覗き込んだことりが、目をキラキラさせている。

 スライムの体内から出てきたってこと、忘れてないか、こいつ?

「魔石、らしいです、けど・・・」

「魔石?」

 唐突に言ったのは、さっきまで静かだった北村さん。

 魔石ってなんだ?

「なにそれ?」

 ことりも、俺の手の中の魔石?を見上げながら首をかしげている。

「魔物の魔力が凝縮して形作られた石、って書いてますね」

「書いてる?」

 北村さんに言われて、俺とことり、牧田さんはあちこちから魔石を観察してみるが、どこにも文字は見当たらない。

「・・・しいちゃん、ないよ?」

「え? ・・・あっ」

 ことりの言葉に、なにか気づいたのか、北村さんはあわてて手元の空間を指さし始めた。

「ち、違くて! ここ、ここに書いてあるの」

「・・・どこ?」

 北村さんのすぐ横へ移動した牧田さんが覗き込むが、俺としてもそこはなにもない空間にしか見えない。

「え、見えない?」

「え? ・・・う、うん」

 顔を見合わせて戸惑う2人と、これでもかと八の字眉で俺の顔を見てくることり。

 いや、俺を見られてもわからん・・・あ、いや、待てよ?

「それ、もしかしてスキルじゃないか?」

「え?」

 虚を突かれたようにこちらを見上げる北村さん。

 そういえば彼女のステータスのスキル欄に、『解析』と書かれていたことを思い出した。

「ほら、解析ってあったと思うんだけど・・・」

「あっ・・・え、これが、そうなんですか?」

「いや、そうなんじゃないかなぁ、と・・・」

 手元と俺の顔を何度も見比べる北村さんには申し訳ないが、俺にもはっきりしたことはわからない。

 でも、状況的にそうとしか考えられないんだよな。

「な、なるほど・・・」

 なにかを納得するように手元をじっと見て頷く北村さん。

 ことりと牧田さんはその左右から覗き込んでいるけど、たぶん見えないものは見えないと思う・・・

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