第2話 スキル検証、そして悲鳴

 5.


 中空に浮かび上がる謎の板・・・便宜上、ステータスプレートとでも呼称しようか。

 さっきの自称神の言っていたこともそうだし、やたらとゲームっぽい。

 なのでゲームから来る知識を基に考えれば、ここに書かれている内容が俺の能力値なんだろう。

 これが高いのか低いのか、比較対象がいないためよくわからないが、数値的に高くはないんじゃないかと思う。

 そもそも魔力ってなに? 『2』あるんだけど、そんなの感じたことないんだけど・・・

 あとはスキル。

 剣術というのは、おそらく俺が最初から持っていたスキルなんだろう。

 しかし、2・・・5年間続けてきて、2かぁ・・・いや、まぁ、才能がないのはわかってたことなんだけど、ショックなのは間違いない。

 後ろの%はなんだろう・・・単純に考えるなら、2から3に上がるためにあと33%必要ってことか?

 取得経験値5倍と魔力刃っていうのはついさっき自称神がくれたスキルだろう。

 ・・・でもこれ、どうやって使うんだ?

「取得経験値5倍。 魔力刃」

 とりあえず口に出してみたけど、なにも起こらない。

 ていうか魔力刃はまだしも、取得経験値5倍って発動してるのかどうかわからなくない?

 それとも発動したら体が光ったりとかするんだろうか。

「・・・」

 発光しながら竹刀を振り回して、スライムと戦う自分を想像してみる。

 ・・・だ、ダサい! ダサいし、そもそも恥ずかしい!

 うーん・・・とりあえず、今は考えるのをやめておこうか。

「・・・ていうか、座り込んでる場合じゃないな」

 色々と衝撃的で忘れてたけど、今の俺はダンジョン?の中。

 さっきもスライムに襲われたわけだし、たぶんここは危険なんだと思う。

 なにがなんだかわからないけど、とにかく歩かないと帰ることもできない。

「行くか・・・」

 薄暗い通路の中、俺は腰を上げ、歩き出した。


 6.


 あれから1時間ほどダンジョンの中を歩き回って、何度かスライムと遭遇したけど、最初の反省を活かし、こちらから近づいて即殴ればすぐに倒すことができた。

 結果、何度かレベルアップしたらしく、現在の俺のステータスはこうなっている。


 名前 :八島 玲央

 性別 :男

 レベル:5

 力  :10

 魔力 :6

 耐久 :8

 素早さ:9

 耐性 :5


 スキル:剣術3(2%) 取得経験値5倍 魔力刃1(0%)


 そう、剣術のレベルが上がったのだ!

 正直涙が出そうになった。

 これはおそらく、実戦によるものと、取得経験値5倍がここにも発動しているのではないだろうか?

 幸い体が発光するようなこともなく済んでいるけど、明らかに成長速度が早い。

 このスキルはおそらく、俺の意思とは関係なく発動する物なのだろう。

 一方、魔力刃に関しては1%も増えていないことからもわかるように、発動していないんだと思う。

 今のところ発動方法もわからないので、それは置いておくとして・・・

「うーん・・・」

 1時間ほど歩いてきた通路の脇、道の途中に何の前触れもなく、下り階段が存在した。

「下り・・・下りかぁ・・・」

 なにが困るかって、現在地がさっぱりわからないのだ。

 下ることで出口が近づくならまだしも、遠ざかるようなことでもあったらまずい。

 さらにゲーム的に考えるなら、おそらくスライムは雑魚モンスターの部類だと思う。

 下って、より強いモンスターが出現した場合、最悪・・・死ぬ、と思う。

 まさか死んだ瞬間セーブポイントで復活できるわけもないだろう・・・そもそもセーブとかした覚えないし。

 ベットするのがただのチップならまだしも、今賭けなければならないのは己の命だ。

 さすがにそれはあまりにも蛮勇が過ぎるのではないだろうか。

「うん、やっぱりまずはこの階を・・・」

 と、結論を出しかけたその時。

 目の前の階段の先、かなり遠くの方から、人の声・・・それも悲鳴らしきものが聞こえた。


 7.


「・・・今の、人の声、だよな?」

 ほんのかすかに聞こえただけだけど、たぶん女性の悲鳴だったと思う。

 ・・・右を見る。

 ただただ薄暗い通路が伸びている。

 なんの物音も聞こえてこない。

 ・・・左を見る。

 こちらも同様に誰の姿も見られない。

 今、この瞬間、助けに向かえるとしたら、俺だけ・・・だよな。

「よし・・・行く。 行くぞ、行くぞ・・・!」

 最悪、ソッコーで逃げて来ればいいだけだ。

 確認もせず、見捨てたりしたら後々絶対に後悔する。

「よしっ・・・!」

 無意味に息を止めて、勢いよく階段を駆け下りた。

 階段はほんの50段程度だったため、すぐに下のフロアへと到着。

 上とは違い、ここは通路の突き当りが上り階段になっていたようで、目の前には上と同様薄暗い通路が奥へと続いている。

 声は、もう聞こえてこない。

 そもそも、本当に声なんて聞こえたのか?

 気のせいだったんじゃないのか?

 心の中で、臆病な自分が騒ぎ始める。

 ちらりと背後、上り階段を振り返るが・・・

「いやぁぁぁ! やだ! 来ないでぇ!!」

 聞こえた。

 しかも、これ・・・

「うそだろ、おいっ・・・!」

 やばい。やばい。やばい!

 全身にぶわっと鳥肌が立つ。

 足は、いつの間にか走り出していた。

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