SS~Side Story~
SS-0:Kitty
七月の半ばにしては、割と涼しい朝の日。
築数十年の
そんな家の裏手口。小さくも
目的は一つ。少女が隠した大切なものを見つけるため。
小柄な猫には長すぎる階段を何とか登り切り、ようやくその部屋の前。
しまった、と頭を抱えたくなる。この小さな姿ではドアノブが回せないじゃないか、と。
「ねぇ、誰かいるの……?」
聞き慣れた声がする。まずい。万が一、
古びた階段が
こうなれば一か八かだ。
意を決し、助走をつけて勢いよく
この先だ。小さな隙間へ大急ぎで滑り込む。
視界いっぱいに広がったのは、見覚えのある部屋。ベッドと勉強机にほとんどスペースを奪われているものの、それでも本棚に並んだ漫画も一年前のままだ。
――きっと、私がどうなったのか、知らないから……。
不意に襲い来る不安を、かぶりを振って
目指すは寝台の下に隠してある一冊のキャンパスノート。
暴れまわるように宝箱をひっくり返して、目当てのものを探す。
――あった!
人間の手なら軽々持ち上げられるのに、猫の口には少しばかり大きい。
でもそれが何だと言うのか、と必死に引き上げる。届けなきゃいけないのはこれなんだからと、ベッドの下から
――待っていて、
窓から柔らかな光の差す部屋の中央まで戻ってきた。
瞬間。
「まぁ……!」
自分を
そのまま意識は遠のいてしまった。
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