セバスチャン
「セバスチャン、これ、壊れてるんじゃないか」
「
「しかしセバスチャン、ちっとも電話の内容が聞き取れないじゃないか」
「旦那様、鉱石ラジオはそういう電波を受信するためのものではありません」
「そもそもだ、電話会社の暗号コードくらい難なく解けるはずのお前が、主人であるこの私の命令をさらっと拒否するからだぞ」
「旦那様、確かに可能ではありますが、それは犯罪ですので」
「どこの馬の骨とも知れない男と、今夜も娘がキャッキャウフフな会話をしているかと思うと、もう発狂しそうだ……」
「旦那様、そんな慣れない道具まで使っている時点で、充分に狂っている側かと」
「海より広い私の心でも、うちの可愛い娘のこととなれば別だよ、セバスチャン」
「旦那様、いい加減に変な呼び名から離れないと海より広い私の心でもグーパンですよ」
「しかし何か他に手はないのか、セバスチャン」
「旦那様、いい加減に諦めてはいかがでしょうか」
「セバスチャン、なぜそんなことを言うんだ。お前は私の忠実な執事だったじゃないか」
「旦那様、お嬢様はもう高校生です。立派に恋をなさるお年頃かと思いますよ」
「いーやーだー! おっきくなったらパパとけっこんしゅるー、って言ってたもーん! パパはずっとあの子のそばにいたいんだもーん‼」
「旦那様、いきなり幼児のような口調にならないでください。読者様が混乱します」
「あ、そうだ。風に乗って声が聞こえる魔法使いとか、相手の心のドアを簡単にノックできちゃう超能力者とか、そういう人脈に心当たりとかない?」
「仕方のない旦那様ですね。では私がお嬢様の部屋へ様子を
「おお、その言葉を待っていたぞ、伝説のエージェント《
「旦那様、それ以上を口にするのなら、どうぞ缶詰の中に詰められるお覚悟を」
「そんなことより、早く行ってきてくれ。可能であれば相手の名前とか聞き出して、ついでに始末してくれると助かる」
「旦那様、あくまでお嬢様に害をなす男と知れた場合は、洗いざらい罪を白状したくなるまで追い詰めて、サクっと追い払います」
「はっはっはっは。これで勝利の朝焼けを観るのは私、ということだな」
「それでは旦那様、おやすみなさいませ」
◆
「はてさて。調査したはいいが」
(お願いですから、このことは黙っていてくださいまし!)
「ふむ、どんな嘘をでっちあげたものか」
(これがバレたら、わたくし、もう……)
「しかし、あの父あって、あの娘あり、ということだろうか」
(お父様にあげる誕生日プレゼントを思いつきませんわ!)
「まったく、不器用なご主人様たちだことで」
《短編》置き場 スリッパ @Slipper0514
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。《短編》置き場の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます