第2話 つかさとの出会い
昔は今と違って、待合室でタバコも吸えた。基本的には、世間では、飲食店などは、ほぼ禁煙になっていたが、風俗店、飲み屋、パチンコ屋などは、まだまだ分煙どころか、客席の前などに、堂々と灰皿が置いてあるのだった。
そもそも、タバコなるもの、
「百害あって一利なしだ」
と思っている草薙にとって、タバコを吸っている連中は、
「下等動物の類」
にしか見えなかった。
そんな連中と一緒にされるのは迷惑だとばかりに、待合室でも、タバコを吸わない人たちの方に寄っていた。
タバコを吸う連中からすれば、
「飲食店などで迫害を受けているんだから、吸っていい場所では、堂々と吸ったっていいじゃないか」
というのが言い分だ。
パチンコ屋などでも、隣の台でタバコをふかしながら台に向かっているやつに限って、まわりにきつい思いをさせるタバコを吸っているもので、もし、煙たいというようなそぶりを見せようものなら、
「なんじゃ、お前、ここではタバコを吸ってもいいところやぞ。嫌なら他行け」
と、堂々と自分の意見を主張しながら、恫喝してくるのだ。
普通は、
「人に迷惑をかけてはいけないから、禁煙にする」
という理屈が分かっていないのだ。
自分たちが迫害を受けているということだけを免罪符にしようとしても、そんなのが、今の禁煙への波に、たった一人抗っても、どうなるものでもない。
そんなことは、本人が一番分かっているだろう。
だから、パチンコ屋で、虚勢を張るしかないのだ。
そんな連中を見ていると、何と情けないことか、
そして、そんな連中に一番迷惑を掛けられているのは、本当の喫煙者である。
「本当の喫煙者」
というのは、
「ルールを守って、今のご時世に、細々とタバコを吸っている人たち」
のことをいうのだ。
彼らは、キチンと喫煙室でしかタバコを吸わず、吸い殻の始末まで責任を持つ。
考えてみれば、昔の喫煙者は、ルールを守っている人ばかりだった。昔は、いつでもどこでもタバコが吸えた。
電車の車両でも吸えたし、旅館の布団の枕元でもタバコを吸ってもよかったのだ。
何と言っても、病院でタバコが吸えたり、小学校の職員室でタバコが吸えたのだ。
今では信じられないだろうが、実際にそうだったのだ。
それがそのうちに、
「禁煙ルーム」
ができ、
「禁煙車両」
ができた。
禁煙車両というと、4両編成であれば、最期の車両だけ、禁煙車で、タバコを吸ってはいけないというようなもので、今でいえばさしずめ、朝のラッシュ時間の、
「女性専用車両」
のようなものであった。
それが、次第に、逆になり、禁煙車が、喫煙者に変わった。つまり、最期の一両だけがタバコを吸ってもいいところで、それ以外は基本的に禁煙だということである。
そのうちに、電車のホームでも、電車の車両でも、とにかく、駅構内では、タバコを吸ってはいけないということになり、特定の場所に、換気機能のついた喫煙ルームができた。ここで、今のような状態になってきたのだ。
それが、最近変わった法律で、
「基本的に、事務所などの室内では喫煙はしてはいけない」
ということになり、今までのパチンコ屋。飲み屋、などでは、絶対に吸ってはいけなくなったのだ。
「先輩が、楽しめと言ってもな」
と、タバコを吸わないのは自分だけで、皆スパススパ吸っているではないか。
それを見た時、
「まあ、しょうがないか」
という諦めの境地に入ったのだが、その時、
「ああ、これが大人になったということなんだろうか?」
と感じた。
高校時代までは、
「そんなルールを守らない連中には、鉄槌を食らわせる」
というような考えを持っていたが、今は逆に、
「波風を立てると、迷惑が掛かる人がいるから、何もできない」
ということを考えなければいけない。
学校内であれば、仲裁してくれる先生などがいるのだろうが、社会では、自分の言い分を言い放題になってしまう。それが拗れると、喧嘩になったり、警察沙汰になるのである。
警察に厄介になってしまうと、必ず、
「身元引受人がいないと、帰してもらえない」
ということになる。そのため、未成年であれば、親や学校の先生ということになったり、就職していれば、雇い主や、直属の上司ということになるだろう。
学校の場合であれば、停学、下手をすれば、退学にもなりかねない。
社会人であっても、同じこと、会社の業務規定には、
「会社に大いなる損害を与えた場合は、懲戒解雇に処する」
という文言があるのが普通の会社ではないだろうか。
懲戒解雇になってしまうと、退職金はおろか、失業保険も貰えない。
そもそも、入社してすぐの社員に退職金などあるわけもないのだろうが、それでも、懲戒解雇ということになると、今度は新たに職を見つけようとしても難しいだろう。
よほど、大きな喧嘩をしたり、相手にケガをさせるなどして、相手が訴えてきたりでもしない限りは、懲戒解雇ということはないかも知れないが、業務規定にある、
「会社に多大なる迷惑をかけた」
という文言はあまりにも抽象的なので、いくらでも解釈ができるというものだ。
普段から、素行が悪かったりすれば、
「この時とばかり」
と言わんばかりに、
「解雇にしよう」
ということになっても、文句はいえないだろう。
会社に対して。
「不当解雇だ」
といって、申し立てることもできるだろうが、勝つ見込みがあったとしても、その間、お金が出ていくばかりで、しかも、
「元居た会社に対して、自分が悪いのに、訴えるようなやつを雇ったりなんかできるものか」
と言って、面接に行っても、いや、書類審査の時点で落とされるのは、必至であろう。
そう考えると、
「時間もかかる。金もかかる。さらには、再就職では致命的なダメージになる。さらには、勝てる見込みがどれくらいあるというのか分からない」
という状態で、訴えるなどできるであろうか?
もし、本当に不当解雇だとしても、訴えた方がリスクが大きいのであれば、泣き寝入りしかない。
しかも、サラリーマンとして勤めていて、家族に、要介護の人ができたということで、会社からの転勤の内示を断った時、会社から、解雇された。社内規定では、会社の方針には従うということで、転勤、転属などには従うことが書かれていたからだ。
しかし、介護が必要な家族や、子供の学校の問題があるということで、転勤を断って解雇になったとして不当解雇として訴えても、判例では、ほとんどが敗訴となる。
介護が必要であれば、ヘルパーを雇えばいい。あるいは、単身赴任という方法もある。子供の学校だって、同じ理由で、何とかなるのではないかということで、会社の解雇を正当化する判例もあるくらいだ。
理不尽だと思っても、会社の社内規定は、結構、
「血も涙もない」
というようなことも書いていたりする。
要するに、
「何とかなるようであれば、あらゆる方法を考えてから、結論を出さないといけない」
ということであろう。
まだ新入社員として入社してから間がない状態で、しかも、入社したのは、かねてからの約束通り、
「おじさんの会社」
だということで、いわゆる、
「コネ入社」
だった。
まあ、昔のように、
「社長の親族だ」
ということで、まわりから贔屓目で見られるということはないが、逆に、何かを引き起こしてしまうと、社長の立場を危うくするものだと言えるだろう。
そういう意味で、却って自分の立場だけではないという責任が押しかかってくるだけに、本当に余計なことはできないのだ。
そうなると、
「喧嘩などしないに超したことはない」
のである。
そもそも、草薙は喧嘩ッ早いほうではない。どっちらかというとおとなしい方なので、そういう意味では安心なのだろうが、あまりにも相手が理不尽であったり、耐えがたいことをした場合には、容赦はしないだろう。
「おとなしく見える人間ほど、怖いものはない」
と言われるが、まさにその通りである。
だから、この時は、若干の理不尽さをその部屋に感じたが、
「自分には関係のないこと」
としておとなしくしていたのだ。
「高校時代だったら、分からないかも知れない」
と自分では思っていた。
まわりの目は自分で感じているよりも、草薙のことを、
「おとなしい人間だ」
と思っていたようだ。
そういう意味で、就職してから、まわりの想像においついたというところであろうか。
ただ、そんなことを考えていると、うまい具合に、タバコを吸っている連中がゾクゾクと、受付に呼ばれて行った。
名前を呼ばれても、返事もせず、表情を変えることもなく、ブサイクな表情のまま、黙って従っているその姿を見ると、
「何しに来たんだこいつら」
と言いたくもなる。
スタッフは仕事なのでしょうがないと思っているのだろうが、ここまで無作法な客を相手にするとなると、
「自分だったら、嫌だと思うだろうな」
と感じたのだった。
そんなことを感じていたままではいけないので、留飲を下げるつもりでテレビを見ていると、スーッと精神的に落ち着いてきた。
普段から、家にいる時もテレビがついていても、別に見ているわけではなく、画面から映像と音声が流れてくるだけで、他のことをしていると、音声だけの場合も少なくないのだった。
それを思うと、
「本当に嫌になる寸前には、意外といいタイミングで、治められることが、起こるものなんだな」
と考えたりしたものだった。
そして、留飲が急に下がってきたかと思うと、
「なるほど、待合室には俺一人ということか」
と感じると、そこでは、急に今度はドキドキと緊張が湧いてきた。
しかも、それは嫌な感じではなく、ドキドキ感が、心地よいのだ。
「そうか、先輩がさっき、あんな風に、楽しむように言ったのは、こういうことだったのか」
と感じたのだ。
一人になると、それまでの怒りも収まってくる。要するに、
「苛立っているということは、誰かに対してイライラしているということを、証明しているということになるんだな」
と感じたのだった。
確かに一人だと、待合室が広く感じる。気を遣いたくもない相手に、無意識に気を遣っていたということが、自分でも分かるくらいだった。
しかも、さっきまで、まるで真空だったのではないかと思う程の息苦しさであったり、音がかき消されたかのような、耳鳴りのような気持ち悪さが消えていて、
「この部屋全部、俺の貸し切りだ」
と感じるほどになっていた。
「貸し切りだと思っただけで、こんなにも、部屋が広く感じられるというのも、すごいものだと言えるのではないだろうか?」
そんなことを感じていると、今度は時間が経つのが早いものだということも分かってきたのだ。
するとどうだろう。待合室の扉がノックされたかと思うと、そこに待っていたのは、男性スタッフが呼びに来たのではなく、一人の女の子が立っていた。その人は、よく見ると、自分が指名した相手で、ニコっと笑って、部屋の中に入ってきたのだ。
「初めまして。お兄さん」
と言って、こちらが戸惑っているのを見て、おかしいという気持ちなのか、さらにニコニコして、無邪気な微笑みを浮かべていた。
小走りに近づいてくると、草薙の座っている席の隣に座り、おもむろに、腕を組んでくるではないか。またしても、狼狽してくる草薙を見て、
「つかさです。一緒にお部屋までまいりましょう」
と言って、腕を組んだまま、草薙を立たせるように立ち上がると、そのまま受付の前を通って、そそくさと奥まで入っていった。
あとから分かったことだったが、最初の受付の際に、禁止事項の確認などがあった。
本当は、女の子とのご対面前に行うことが普通なのだが、最初に説明をあらかじめしておく時は、こういうサプライズの可能性がある時であった。
女の子もさすがに、他に客がいる時は、待合室には入ってこない。
「恥ずかしい」
という理由もあるのだろうが、本当は、
「身バレ」
が怖いからだ。
身バレというのは、自分の正体がバレてしまい、風俗店での仕事が続けられなくなりそうになることである。たとえば、親だったり、会社の上司、学校の先生だったりである。
本来なら、相手も、自分が風俗に来ているということを公開しないといけないので、それを拒む人もいるだろうが、しかし、女の子にとっては致命的である。
学校であれば、退学、会社であれば、解雇まで行かなくても、ウワサになったりすれば、今まで通り昼職を続けることはできないので、他の会社を探すか、風俗一本でやっていくかしかないのだろうが、昼職メインの人にとっては、そうなると、致命的だと言ってもいいだろう。
そうなってくると、身バレは実に怖いもので、そのため、普通は待合室で待っている客を、女の子が、マジックミラーか、モニターで確認し、
「この客なら大丈夫」
ということを分かったうえでの、接客になるのであろう。
もっとも、これは店舗型であればできることであって、派遣されて相手のいるとこるに行く、デリヘル関係の無店舗型には通用しない方法であるので、身バレの可能性は大きいのではないだろうか?
だから、この日のように、他に誰も待合室に人がいなければ、
「女の子が待合室まで迎えに来る」
というサプライズができるのだ。
だが、これは、風俗の常連客に対してであれば、
「サプライズ」
なのだろうが、初めての客にとっては、
「何が普通なのか?」
というのが分かっていないだけに、
「女の子が、待合室に迎えにくるのが、当たり前のことだ」
と思うだけで、せっかくのサプライズも効果が半減してしまうということにもならないだろうか。
実際に、嬉しくはあるが、どこまでサプライズ感があったかというと、正直、サプライズとは思わなかった。
むしろ、二回目に行った時、
「受付前のカーテンの奥に、女の子が待っている」
という演出の方が、サプライズ感があったと言ってもいいかも知れない。
だが、とにもかくにも、初めての風俗。女の子に腕を引っ張られるように、完全に主導権を握られた。
「この演出だったら、ベテランでも、相手に完全に任せることの快感を得ることができるのかも知れないな」
と感じるに違いない。
そうやって、女の子と部屋に入って、ベッドの上に腰かけて、世間話になったのだ。
彼女は、
「あらためまして、つかさと言います。お兄さんは、先輩さんに連れてこられたとお聞きしたんですが、ひょっとして、童貞さんですか?」
と聞いてきた。
ここで、意地を張って、ウソをいうのは、得策ではない。何しろ、プロである相手に、
「筆おろしを頼もう」
というのではないか?
「黙ってしたがっていればいいんだ」
ということなので、却って、正直に言った方が、こちらの望むことをすべて了解済みで進行するものだと言えるのではないだろうか?
そう思い、
「はい、童貞です」
というと、相手は、さらにニコニコし、今度は顔が紅潮しているのが分かった。
その表情は、恥ずかしいというよりも、
「これからが自分の出番だ」
と言わんばかりの気持ちになっているのだろうと思えた。
そうなると、自分は完全に、
「まな板の上の鯉」
である。
しかし、最初からすべてを任せるつもりで来ているので、
「まな板の上の鯉」
というのは、何かこそばゆい感じがするのだ。
「つかささんは、先輩をご存じなんですか?」
と聞くと、
「ええ、そうね、私がこのお店に入ってから、少ししてからだったから、私もまだまだ新人の頃ね。あの人が童貞できたのよ。その時も、他の先輩に連れてこられたって言っていたわ。ちょうどその時、童貞相手の人がちょうどお客さんについていたので、私ともう一人しかいなくて、それで彼が写真を見て、私を選んでくれたというわけなの」
と、つかさは言った。
「なるほど、僕も今日は、実は女の子の選択権はなかったんですよ。もちろん、先輩から要望は聞かれましたけど、何しろすべてが初めての経験なので、聞かれたところで、どういう子がいいというのも、ピンとこないものですよね」
というと、
「それはそうですよね。自分の好みでない相手だったら、その店に、不信感を抱くかも知れないし、下手をすれば、風俗というものに、幻滅するかも知れない。何しろ、安いものではないから、そうしょっちゅうというわけにはいかないでしょう?」
とつかさがいうと、
「それはもちろんですね。月に一回というのも苦しいくらいではないかと思います。ここくらいの価格体系だと、月一が限界でしょうね」
と、草薙は頭の中で、無意識に電卓をたたいていたのだ。
「最近は、ネットやスマホが普及してきているから、女の子の方も、日記にお礼を書いたりして、またきてほしいという思いを伝えるのよ。そして、他の客がそれを見て、私に入ってみたいと思ってくれれば、私も書いた甲斐があるというもので、実際に、写メ日記を見たといって指名してくれるお客さんもいて、嬉しくなるのよ。昔だったら、ネットなどないので、風俗雑誌か、実際に現地に来て、受付で写真を見て決めるしかなかったでしょう? 今は実際にはほとんどいないけど、昔は店の前に必ず客引きがいて、一人で歩いている男性に道すがらに話しかけてくるというのが、よくあったことなのよね。今は、最初から予約してきている客などが多いので、表で客を引いても、予約しているといわれれば、どうすることもできないでしょう? そういう意味でも、今は客引きなんて、ほとんどいないのよ。もっとも、一番の理由は、警察がうるさいからということになるんでしょうけどね」
というのだった。
「つかささんも、二十五歳だということなので、そんな昔の話は伝え聞いた話なんですよね?」
と聞くと、
「ええ、そうね」
と言った。
つかさを見ていると、二十五歳よりも若く見えた。
というのも、まだ18歳そこそこの、今でこそ、成人だが、昔は明らかな未成年。そんな彼から見ると、男でも女でも、25歳という年齢は、明らかに年上の世代であり、下手をすると、
「話が通じないことも多々あるのではないか?」
という、世代ギャップがありそうな気がするくらいだった。
そのわりに、元気さに満ち溢れて見え、さらに張りのある身体を見ると、そんなに年上だという意識がないのも、無理もないことなのであろう。
会話が途切れると、草薙は、またしても、緊張からか、耳鳴りを感じた。
今回の耳鳴りは、彼女に耳元で何かを囁かれているような錯覚を伴うものだった。
だが、心地よいというよりも、まるで、トンネルの中で、空気圧の違いから、
「耳の奥がツーンとする」
という感覚になったかのように感じた。
だが、耳を優しく舌が這ってきた時、
「自分の胸の鼓動と、つかさの胸の鼓動が同じで、その反響が、耳鳴りという現象を起こしているのではないか?」
と感じたのだが、その時初めて、
「あぁ、気持ちいい。こういうのを快感というのだろうか?」
と、感じたのだ。
まだまだ、序の口ではあったが、
「こういうのを、身体がとろける快感というのだろうか?」
と考えると、この後、どのような展開になっていくのか、ゾクゾクするものがある。
童貞ではあったが、当然のこととして、性には興味が大いにあった。AVなどもそれなりに見てきたし、セックスがどういうものなのかということも、童貞なりに分かっているつもりだった。
だが、企画ものも結構見てきたりはしたが、風俗関係のAVは比較的見たことがなかったかも知れない。
その理由としては、
「リアリティがない」
と思ったからで、そもそも、セックスという行為を、あれだけ気持ちいいといって、表現しているのに、それを世間では、
「見てはいけないもの」
であるかのような、タブーなことだとしているのである。
しかも、アダルトという分野で、いかにも少年には有害だといわんばかりになっていて、そこに、おかしな矛盾が孕んでいるように思えてならないのだった。
だから、余計に、ビデオなどの作品にして、風俗という、
「疑似連内」
を描くと、わざとらしさが前面に出てしまい、実際の神聖な儀式を損なっているのではないかと思えたのだ。
しかも、自分には経験がない。
普通なら経験がないということで、想像を担ってしまうと、おのずと限界が見えてくるのではないだろうか?
それがタブーであればあるほど、結界が強く立ち塞がってしまい、限界という二文字に阻まれてしまうことだろう。
だが、もし、その結界を破ることができたとすれば、もうその先には限界などなく、まるで雲を突き抜けて、雲の上に出たことで、遮る者のない太陽が容赦なく降り注いでいるような気がした。
下の世界がいかに、嵐であったとしても、そんなことは分からない。
永遠に天気の移り変わりを知ることなく、太陽の光だけを頼りに生きていく。そんな世界を、昔の人たちは、
「極楽浄土の世界だ」
ということで、
「天国と地獄」
の天国を創造したのではないだろうか?
そんなことを考えていると、
「疑似恋愛だとはいえ、天国に連れていってくれる人は本当に存在するのだ。その人にどれほど助けられるということか」
と考えるのだった。
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