第18話 二重登録

 ◇◇◇◇◇


 冒険者ギルドを出たナルシスは、思い立ったようにダリアに指示を出した。


ナルシス:「なぜ、あそこにギルマスが来やがったんだよ!ちくしょう!……まあいいわ。

 ダリア、いいことを思いついたんだよ。

 お前、ウイオを冒険者登録しろ。」


ダリア:「は?ウイオは、貴族じゃないからまだ登録できないわよ。」


ナルシス:「そんなもん、何とかなるだろ?

 ウイオを貴族と言えばいい。

 ウイオ・エルグランで登録すりゃいいんだよ。貴族の養子なんて普通だろ?」


ダリア:「そ、そうね。わかったわ。

 けど、ウイオを冒険者にしてどうするのよ?」


ナルシス:「俺たちのパーティに入れるんだよ。盾役にはちょうどいいだろ?」


ダリア:「パーティに入れるって、ダメに決まってるでしょ!実地訓練には先生たちと一緒に行くんだから。」


ナルシス:「いやいや、わかってねえな。

 その後だよ。実地訓練が終われば自由だ。

 俺たちだけでダンジョンに潜るだろ?

 その成果がダンジョン科目の成績になる。

 そして、この成績が学年順位に大きな割合を占めるらしいんだよ。」


ダリア:「学校にバレたらどうするのよ?

 それこそ、学年順位に響くんじゃない?」


ナルシス:「お前、何も知らないんだな?

 実地訓練後のダンジョン実習は、申請すれば一人だけポーターを付けることが可能なのさ。

 それをウイオにすれば、一石二鳥だろ?

 荷物持ち兼盾役ってことだ。

 普通のポーターなら、戦闘に加わるなんてことはまずしねえからな。な、お得だろ?」


ダリア:「ああ、そういうことね。それならいいんじゃない。」


ナルシス:「よし!決まりだな。

 俺たちは帰るからあとはよろしくな。」


 ナルシスは、ローズとアイリスの腰にいやらしく手を回して一緒に帰っていった。


 この予想外の事態に、ウイオが焦っている。

 冒険者登録はまずい。バレる。


ダリア:「ウイオ。行くわよ。」


ウイオ:「は、はい。」


 ダリアとウイオは、冒険者ギルドに再度入っていった。


 受付ではカルメンが対応した。

 貴族関係には、よほどのことがない限り、カルメンが対応することになっているのだとか。


カルメン:「エルグラン家のお嬢様ですね。

 闘技場の訓練は終わったんですね。

 今度はどのようなご用件ですか?」


ダリア:「うん。この子の冒険者登録をお願いしたいのだけれど。」


カルメン:「ええ、いいですけど、この子は貴族ですか?」


 明らかに成人していないウイオは、貴族でないと登録できない。

 その前に、ウイオはすでに登録済みだ。

 ここで登録したら、バレてしまう。

 なぜなら、システム上、二重登録は出来ないような仕組みになっているのだ。


ダリア:「そうですよ。うちの養子に入った子です。」


カルメン:「そうでしたか。イケメンですね。

 じゃあ、お名前は?」


ウイオ:「僕、いいです。」


ダリア:「何言ってんの?ウイオです。

 ウイオ・エルグランです。」


 カルメンは、怪訝そうな顔で再度質問した。


カルメン:「ウイオは、登録したくないの?」


ダリア:「そ、そうなんですけど、親から登録するように言われてて。

 ウイオ。もう諦めなさい。」


ウイオ:「あのー、前に登録した人がもう一度登録したらどうなるんですか?」


カルメン:「あら、ウイオはすでに登録済みなの?」


ウイオ:「あ、いえ。」


ダリア:「登録してません。というか出来ないから。何変なこと聞いてるのよ。」


カルメン:「そうね。この街でウイオが登録した記憶はないわね。

 もし、登録済みだったら、分かるから。 

 二重登録は出来ないようになってるの。」


ウイオ:「そうですか……。」


 ウイオは、もう登録は回避できないと観念した。多分、登録済みなのがバレていろいろと聞かれることになるだろうと。


 カルメンは、登録するための魔道具を使ってウイオ・エルグランの名前をカードに刻んだ。


カルメン:「じゃあ、ウイオ。このカードにあなたの血を一滴垂らしてくれるかしら?

 指にこの針を刺して。」


ウイオ:「はい。」


 なぜかカードにウイオの情報登録が完了。

 本来なら、ここで登録済みであることが分かるはずだが、魔道具に認識されていなかった。


ウイオ:「え?登録出来たんですか?」


カルメン:「ええ、出来たわよ。」


 カルメンは、カードを魔道具から外してウイオに見せた。


カルメン:「これがあなたのギルドカードよ。

 じゃあ、次にクラス(星)の登録をするわよ。」


 そう言って、星測定器にウイオのギルドカードを嵌め込んだ。


カルメン:「じゃあ、この測定器の上に手のひらを乗せて。」


 ウイオは、これも2回目だ。

 諦めて渋々と測定器に手のひらを乗せた。


ウイオ:(これは流石に隠せない……。)


 ウイオが、測定器に手を乗せたが、何の反応も見せなかった。いくら待っても玉は出ない。


カルメン:「あら、ウイオは非戦闘職なの?」


 予想外の出来事にウイオは驚いたが、喜びの方が勝ってしまった。


ウイオ:「は、はい!そうです!」


ダリア:「やっぱり、そうなのね。

 予想通りだけど、ゼロ星ってすごく恥ずかしいわ。」


カルメン:「なるほどね。ウイオが登録したくない訳がわかったわ。

 非戦闘職が冒険者になることは稀にあるけど、苦労するわよ。大丈夫なの?」


ウイオ:「はい!全然大丈夫です!」


 ウイオは先ほどの緊張状態とは程遠く、明るく元気に返事している。


カルメン:「何だか変な子ね。まあ、本人がいいなら別にいいけど。

 じゃあ、はいこれ。

 あなたのギルドカードね。」


 カルメンは、星測定器からギルドカードを抜き取りウイオに渡した。

 ギルドカードには、ウイオ・エルグランという名前だけが刻まれている。星はない。


ダリア:「ちょっと見せてみなさい。

 わぁ、本当に星がないのね。ダサいわ。」


 ウイオは、自分のギルドカードを眺めて少し微笑んだ。


 結局、ウイオとルカは別人格と認識されたようだ。しかも、ウイオの状態では黄龍の存在は隠蔽されるらしい。


 こうして、無事?二重登録が出来てしまった。


 そのあと、ダリアがウイオの登録料を支払って冒険者ギルドを後にした。


 ◇◇◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る