第3話 いざこざ、解決。(前編)

「残念ながら、万引きは確認できませんでした」

慇懃に本町は言うと、静香は「ほら見なさい!」とまた叫び出す。


「あなたの見間違いなんじゃないの? そもそも、なんでこの私が万引きをする必要があるわけ? ふざけんな……」

「ほつれてますよ」

本町が静香の大声に被せて言う。彼女はぼんやりとした顔つきになって「へ?」と首を捻った。頬が今まで興奮していたせいか、赤く染まっていた。


「あ、ああ……」静香は落ち着いて椅子に座り、ほつれていたカーディガンのボタンを見る。彼女が来ていた白色のカーティガンは春の訪れを予想させるものだったが、本町はどこかそのカーティガンに違和感を覚えて首を捻っていた。

「……どうかしました?」

本町の異変に気がつき、卓也が声をかける。


すると、本町は椅子から離れて静香の傍に歩み寄る。

「……?」

静香は首を捻ったまま本町を見続けていると、次の瞬間、彼は彼女の身体を押さえつけた。

「いたた……!!」

抵抗を示す静香だったが、本町の力強い押さえつけでその抵抗は無力に終わっていた。


本町は静香の上半身をまさぐり、“あるもの”を探し当てる。固い物のようで、柔らかい。

「ありました」

隣の卓也は「……何が?」と状況をイマイチ掴めていないまま、呟く。本町は強引にも静香の服の中に入れ、隠されていた物を外に取り出す。


本町は彼女から離れ、また元の位置に戻る。目の前にいた静香がまるで獲物を見るかのように本町を見続けていた。彼の右手には文庫本があり、それを彼らの目の前におく。


「あなたの言うとおり、この女性は万引き犯でした」

本町は目の前に置いた文庫本を見ながら呟いた。

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