第五十二話 異世界の日本と言う国からか?

 ピンク髪にピンクの瞳の秘書ニーナが、鮮やかなコーラルピンクのスカートスーツ姿で、ルシアの部屋の中で第一王女コットンを待っていた。


「コットン王女さま」


「ニーナ、前にも伝えたでしょう。

ーー 王女は公式以外、不要よ!」


「分かりました。コットンさま」


 秘書ニーナとコットンの会話の途中だった。


「コットンさま、ドメーヌ王がお呼びでございます」


 セーラと同じ緑髪のターニャが、コットンとルシアの日焼けに気付き苦笑いを浮かべる。


「コットンさま、ルシアさま、それじゃ、“頭隠して尻隠さず”じゃないですか」


 ターニャは拙いと思い、近くにいたメリウスにお願いした。


「メリウスさん、お願い、ちょっとなんとかなりませんか」


「ターニャさん、ここは、包み隠さない方が賢明でございます」


「そうね。分かったわ」


 ターニャと秘書ニーナ、秘書セーラに誘われて、王室への廊下を進む。


「ルシア、メリウスはああ言っているけど、拙くないかな」


「そうね、お父さまのご機嫌次第かしら」

コットンが呟く。




 王室の扉の前には、私服兵が警備をしている。


「ルシア、私服兵って、最近制服が変わったの」


 ターニャがルシアに代わって言う。


「あの制服はザード大隊長の部下の制服と聞いています」


「さすが、ターニャね」


 ターニャは私服兵に伝え、サーニャを呼んでもらう。


「サーニャ、コットンさまとルシアさまに、メリウスさんたちもお連れしましたと、ドメーヌ国王によろしくね」


「分かったわ。ターニャ」


 サーニャは、返事の後、筆頭執事のスペードに伝えた。

スペードが、ターニャの元に来て手招きして中へ案内する。


「ドメーヌ国王、第一王女コットンさまと第二王女ルシアさまがお見えになりました」


「スペード、早う、お連れください」


 サーニャは、国王のデスク横で警戒に当たっていた。




 メイド長のクローラは部下のメイドを呼び、割り当て分担を与え指示した。


「早乙女さん、南さん、そして山女さんは、こちらのお部屋にお泊りください。

ーー 小金崎さんは、殿方なので、お一人でお願いします」


 クローラは、事務的に部下に指示を与えて付け加えた。


「小金崎さんと南さんが、ご結婚されていても、

ーー この城内では城の規則に従って頂きます」


 小金崎の軽い考えをクローラが察していたかは分からない。


「そういうことだから・・・・・・。

ーー 香織は、沙織さんや京子さんと仲良くして上げてください」


「隼人さん、みんな優しいから大丈夫よ」


 クローラの部下のメイドが、小金崎を呼びに来た。


「小金崎さま、こちらは女子区画になっております。

ーー 今から男子区画のゲストルームにご案内します。

ーー その前に地下の温泉でお汗を洗い流してください」


 メイドの両手には、殿方用の青い湯浴みセットがあった。

メイドは、小金崎をランティス王子とティラミス王子がいる男子区画に案内したあと、着替えと湯浴みを持って地下に向かう。

ランティス王子とティラミス王子も同行している。


「小金崎さん、ここの温泉は男女混浴の湯船なんですよ。

ーー でもね、魔法の結界があってなにも見えません。

ーー けどね、会話はできます。

ーー 男の湯船と女の湯船は目に見えない板で仕切られているそうです」


 ランティスは饒舌に小金崎に説明して金髪の髪を指で梳かす。




 同じころ、南、早乙女、山女の三人も地下の温泉に通じる廊下を移動していた。


「みなさん、到着しました。

ーー 脱衣所で湯浴みを着用して入浴をお願いします。

ーー 入浴後、部屋着にお着替えください。

ーー 部屋着は、こちらに用意してございます」


 三人のメイドは説明したあと衣服を脱ぎ捨て全裸になり、メイド用の黄色の湯浴みに着替えた。


「ここの決まりで、ご一緒いたします。

ーー 分からないことがあれば、なんでもお尋ねください」


 女子区画のメイドは、そう言って女性たちの着替えを手伝う。

 男子区画のメイドは、男子用の脱衣所前で男たちと別れて女子用脱衣所に入り湯浴みに着替えた。

湯煙が充満する中、硫黄の臭いが鼻に纏わり付く。




「ルシア、コットン、そのお顔はどうされた」


「お父さま、実はメリウスに無理を言って、下見に行って来ました! 」


「下見って、まさか日本とかいう所か? 」


「ええ、そうよ。下見もせずに、お父さまをお連れ出来ないでしょう」


 ドメーヌ国王は、ヤンチャなルシアを見ながら深い溜息を吐く。


 サーニャとスペードも横で呆れ果てていた。


「コットンも、行ったんじゃな」


「はい、お父さま」


「・・・・・・ 」


 ドメーヌ国王は、長い沈黙の後で言った。


「お前たちを呼んだのも、実は、その件だったが、

ーー 今となっては、無意味になった」


「お父さま、無意味ですか? 」


「そう、無意味。中止を考えていたのだが・・・・・・ 」


「お父さまにお話があるの」


「ルシア、また驚かすのか」


「えええ、そうなるわよね。コットンお姉さま」


「そうね、ルシアが言う通りよ」


「メリウス、お土産のお茶を出してくれる」


 メリウスは、空間のアイテムボックスからよもぎ茶を一つ取り出してルシアに渡す。


「お父さま、これが日本のよもぎ茶と言うお茶よ。

ーー 味はハーブに似ている薬草茶ね」


「スペード、そのお茶をここで試飲してみないか」


「ドメーヌさま、ただいま準備をさせます」


 お茶を準備している間、コットンが王に言った。


「お父さま、実は・・・・・・ 」


「今度は、コットンか? 」


「お父さまに、あとで紹介する人が四人ほどいます」


「コットン、四人ってまさか」


「はい、お父さまのご推察の通りでございます」


「じゃあ、異世界の日本と言う国からか? 」


 ルシアとコットンは一緒に返事をしながらドメーヌ国王に満面の笑みで答えた。


 王室の窓から柔らかな日差しが、ドメーヌ国王のデスクに当たり反射していた。

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