第四十四話 金色に輝く扉の中へ
メリウスは、クローラから制服を受け取ると、メイド長のクローラに言った。
「申し訳ありませんが、零と玲子先生をお連れ頂けませんか」
「
クローラの話を傍で聞いていた第二王女のルシアが水色の髪を掻き上げながらメリウスに言う。
「零と玲子先生なら、ちょっとと言って部屋を出て行ったわ。
ーー 多分、お手洗いじゃないかしら」
紫髪の第一王女コットンがルシアにいう。
「それは無いわよ。
ーー だって、さっきニーナと一緒にお手洗いに寄った時、誰もいなかったわ」
「姉さんが、言うならそうね。
ーー メリウス、魔法で分かる」
「ルシアさま、大丈夫ですよ。
ーー 二人は、他のメイドと一緒に忘れものを取りに自室に戻っています」
ルシアが気付いて手を叩いた。
「そうね。私が制服のことを言ったら、二人が慌てて出て行ったわ。
ーー クローラの部下のメイドが後を追いかけたわね。
ーー 仕方ないわ。まだ時間も早いので待ちましょう」
「ルシアさん、制服で何をするつもりですか」
「メリウス、聞いて、メリウスと最初に会った時のこと、覚えている」
「ええ、ルシアさまに声を掛けられたのを、昨日のように覚えています」
「そうね、あれから長い時間が経ってしまったような気がするけど、どうかしら」
「ルシアさま、何をされるのですか」
「制服を着て学校に行くのよ」
「今日は、お休みですが」
「違うわよ。学校が目的じゃないのよ」
「と、言いますとなんでしょうか」
「メリウスたちは、偶然、あそこに現れたのでしょう。
ーー だとすれば、あそことメリウスたちの国が繋がっている気がするのよ」
ルシアの発想に姉のコットンが横で呆れていた。
「ルシア、メリウスは魔法使いよ。場所を選ばないわ」
「そうね、でも零と玲子先生は、違うわよ。
ーー 私もコットン姉さんも違うわ」
「ルシアさま、まさか、日本へ行こうとしていませんか」
メリウスがルシアに尋ねた。
「そうよ、メリウス。
ーー 今回は下見よ。何か問題あるの」
「ルシアさま、それを国王にお伝えしていますか」
「そんなこと言えるタイミングじゃないわね」
「分かりました。ちょっとだけ往復してみましょう。
ーー だけど朝霧女学園には行きませんよ」
「どう言うこと」
「零と玲子先生が戻られたらにしましょう」
「意味が分からないわ」
「往復するだけなら、待ってもらう為です」
「じゃあ、メリウスと私だけで」
「ルシア、それはないわよ」
姉のコットンが言った。
「じゃあ、三人だけで下見でいいかしら」
「ルシアさま、それはありません。
ーー 魔法時計は零さまがお持ちですから」
ルシアとの会話が終えた頃、制服姿に着替えた夢月零が玲子先生と一緒にルシアの前に現れた。
「ルシア姉さん、着替えたわよ」
玲子先生は、スーツ姿になっていた。
「零さま、朝霧女学園ではなく、日本への下見です」
「日本に戻るんですか」
「いいえ、下見なので、ちょっとだけですが」
「分かったわ。じゃあ、玲子先生は、どうします」
「零、そういうことなら、ここで待っているわよ」
「玲子先生、メリウスも同じ考えです」
「メリウスも、そう言っているから、今回は四人だけね」
ルシアが言った。
「玲子先生は、留守中、私の部屋で待っていてくれる」
「ルシアさま、ご心配しなくても大丈夫ですよ」
「どう言うこと、メリウス」
「前にお伝えしていますでしょう。
ーー 次元トンネルは時間を停止します」
「あ、そうか。戻った時は、同じ時間なのね」
ルシアが言うと、コットンが満面の笑顔を浮かべている。
「じゃあ、零、準備しましょう」
「メリウス、魔法時計、どこに置いていたか覚えている」
「零さま、メリウスのアイテムボックスの中ですよ」
零は、メリウスの言葉に照れ笑いをしていた。
「じゃあ、玲子先生、ちょっとだけ離席しますね」
「零、大丈夫だから」
玲子は、そう言いながら不安な表情を浮かべていた。
メリウスが、ルシアとコットンに説明をした。
四人は、メリウスを中心に輪を作って練習をしてみた。
「メリウス、やっぱり、私も行くわ・・・・・・」
「玲子先生、よろしくお願いします」
ルシアが言った。
メリウスが空間に立方体のアイテムボックスを出現させ零に言った。
「零さま、準備はよろしいですか」
零は魔法時計を転移時計に変化させホログラムスクリーンのタッチパネルを開いた。
だが、零はメニューを見て迷ってしまった。
「メリウス、日本は、何処なの」
「零さま、次元トンネルを選んでください。
ーー 選んだら輪を作って手を繋ぎましょう。
ーー 順番は関係ありません」
零がタッチパネルを選んで、五人は輪を作りメリウスと零を中心に手を繋ぐ。
遠くから覗き見していた、ランティスとティラミスの双子の王子が五人の輪の中に割り込んで来た。
メリウスは、呆れていたが、何もかもを予知魔法で事前に知っていた。
七人の前に光の渦が溢れ始め、空間に金色に輝く次元ドアが現れた。
「メリウス、現れたわ」
「零さま、みなさんも光の中に入ってください。
ーー 手は繋いだままです」
「メリウス、次元トンネルって、なんか不気味な印象しかありません」
「零さまの仰る通りです。
ーー 次元の隙間ですから、壁と壁の間に似ています」
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