第四十三話 メリウス、秘密にして
「先生、今日のルシアさんとコットンさん、いつもと違う感じがしませんでした」
「そうね、お立場も変わって色々大変じゃないかしら」
二人は、その日の出来事を喋りながら眠りに就いていた。
翌朝、メイド長のクローラが迎えに来て、ブレックファーストルームに零と玲子は移動した。
この日もメリウスからの連絡はなかった。
「先生、メリウス大丈夫かしら」
「零、不安は不安のエネルギーを増大させるのよ。
ーー 起きてもないことに無駄なエネルギーを浪費させちゃダメよ」
玲子が零を諭している時、食堂の扉が開き、メリウスとクーニャが入ってくる。
二人は、零と玲子に挨拶して、横を通り過ぎて奥のテーブルに向かった。
零と玲子は、呆気に取られた感じになったが国王を見て納得する。
国王ルーク・ドメーヌが、二人を手招きしていたからだ。
「ルークさま、おはようございます」
クーニャが言った。
メリウスがクーニャの横で待機していると、国王がクーニャに尋ねた。
「クーニャ、その後の調査は順調か?」
「一連の騒動でしょうか」
「いや、最近の襲撃事件だが」
「それについては、城内の私服兵が対応していますが」
「そうなんだが・・・・・・」
ルークは言い辛そうに言葉を切った。
「余談なんだが、最近、兄のシャメロンから書簡が届いて
ーー 娘のシャロンの婚約相手の調査依頼が書かれていた」
クーニャは、ルーク・ドメーヌの言葉を聞いてメリウスを見た。
「メリウス、何と言えば良い」
「このタイミングででしょうか?
ーー 書簡を拝見させていただきたく存じます」
メリウスは、ルークに尋ねた。
「メリウス拝見して、どうする」
「はい、魔法の残量が気になりましたので」
「そういうことなら、あとで、
ーー スペードと一緒に部屋に来てくれないか」
「ルークさま、では、あとで」
クーニャとメリウスが消えたあと、ルークはスペードを呼んで言った。
「クーニャとメリウスを部屋へ」
「承知しました。ルークさま」
筆頭執事のスペードがクーニャとメリウスを連れてルーク・ドメーヌ国王の部屋に入る。
入り口で、秘書のターニャが出迎えてくれた。
出入り口は身体能力の高いターニャの担当だった。
秘書のサーニャは、ルークのデスクの横にある秘書用のデスクで書類を整理していた。
ターニャの後に続いて、メリウスとクーニャが並んでいる。
「ルークさま、お二人をお連れしました」
「ご苦労だったスペード」
「サーニャ、例の書簡をこちらに持って来てくれないか」
「ルークさま、ここに」
と言って、サーニャはルークのデスクの上に置いた。
デスクは、以前から使用していたものだった。
ルークには、国王になったから物を変えると言う成り上がりの人間ではなかった。
「メリウス、サーニャが置いた書簡の中に書簡が二通入っていたのだが手違いで忘れていた。
ーー 悪いが見てくれないか」
メリウスは、青い書簡から、やや色の燻んだ手紙を取り出す。
手紙を広げて頭上に上げて見た。
「一枚目は、問題ありません」
次にメリウスは、二枚目を広げて頭上に上げた。
「メリウス、透かしているのか」
ルークがメリウスの行動に質問をした時、手紙の色が青く変化した。
「ルークさま、これは、偽物の手紙です。
ーー 筆跡を魔法で護摩化しています」
「署名は、兄シャメロンのと思ったが」
「ルークさま、もう一度、ご覧下さい」
ルークは青色に変化した手紙に書かれている署名を確認した。
「これは・・・・・・。
ーー メリウスの言う通り、偽物だ」
「多分ですが、キャンニャは書簡の中に二通あることも知らなかったでしょう」
「じゃメリウス、キャンニャは無罪か」
「あわや濡れ衣の罪に問われるところでしたが」
「そうだな、キャンニャに書簡を渡した者を探すしかない。
ーー あとで、キャンニャを呼んでくれないか。サーニャ」
「かしこまりました」
サーニャは、スペードの元に行って告げた。
スペードがルークの元に寄って言った。
「ルークさま、ルイ・ザード大隊長に依頼の件ですが」
「スペード、とりあえず白紙だ。
ーー 真相が分かるまでは。
ーー メリウスとクーニャは、悪いがキャンニャとの面会に立ち会ってくれないか」
クーニャがルークに言った。
「お断りする理由なんかございませんわ。ルークさま」
クーニャは、そう言ってメリウスにウインクする。
「クーニャと同じでございます。
ーー 喜んで立ち会います」
「じゃ、メリウス、クーニャ、
ーー 明日の同じ時間にこの部屋に来てくれないか」
ルークと約束を交わしたメリウスとクーニャは部屋を出て行く。
クーニャが出入り口にいたターニャに言った。
「明日も来ますので、ターニャ、よろしくね」
「クーニャさま、またお会いできて嬉しい限りです」
「ターニャ、オーバーよ。
ーー これからルシアさまのところに寄る予定ですが、
ーー 行き方が分からないので、ターニャにお願いできるかしら」
「クーニャ、分かったわ。サーニャ断ってからね」
メリウスとクーニャは、ターニャの案内で第二王女ルシアの部屋の扉をノックした。
ターニャと同じ緑髪の秘書セーラが扉の前に現れた。
セーラもターニャも緑色のスカートスーツを着ている。
しばらくして、ルシアが現れた。
「クーニャ、メリウス、みんなでランチに行きましょう。
ーー コットン姉さんも、秘書ニーナも一緒よ。
ーー 大勢の方が楽しいでしょう」
ルシアの後ろでピンク髪のニーナと紫髪の第一王女コットンが微笑んでいた。
ルシアは水色のスカートスーツ、コットンは紫色のスカートスーツだった。
クーニャとメリウスは、王女たちに呼ばれた意味を理解する。
「じゃ、メリウスが制服に着替えたら出かけるわよ」
ルシアが言うと、メイド長のクローラの手にはメリウスの制服があった。
メリウスが言い掛けるとルシアがメリウスを制止していた。
「シー、秘密にして」
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