第四十二話 王女コットンとルシアのティータイム
翌日の午後、ルーク・ドメーヌ国王が、ルシアの秘書セーラと同じ緑髪の秘書ターニャを呼んだ。
「ターニャ、悪いがスペードを呼んでくれないか」
「はい、ルークさま、直ちに」
秘書ターニャは、ピンク髪の秘書サーニャを残してルークの部屋を出て行く。
国王ルークの部屋の外では、常に私服兵が監視に当たっていた。
しばらくして、ターニャが筆頭執事のスペードを連れて来た。
「ルークさま、なんでしょうか?」
「実はなスペード、昨日の青い書簡の中に、もう一通の手紙が見つかった」
「と申しますと・・・・・・」
「兄のシャメロンは、悪戯好きで、よく隠すことがあってな、
ーー 昨日の書簡も細工がされていた訳だ。
ーー キャンニャの件がカモフラージュのようだ」
「よく分からないのですが」
「万が一に書簡が紛失された場合の細工だよ。
ーー 兄は悪戯好きだが、用心深い」
「ルークさま、存じませんでした」
「それで、兄は娘のシャロンについて書いている」
「シャロンさまですか?」
「シャロンの婚約について相談して来た」
「それは、良いことですが、ルークさまは、どうされますか」
「兄は、シャロンの婚約相手の調査を依頼している。
ーー 兄も私も、娘しかいない・・・・・・」
ルークは、言葉を切って深呼吸をして続けた。
「難しい問題になりそうだ。
ーー クーニャとメリウスの仕事が増えそうだが」
「ルークさま、あの二人は、今・・・・・・。
ーー 先日の事件調査をしています。
ーー どうでしょうか。
ーー 安全な任務なら、双子の王子に」
「ティラミスとランティスか」
「ええ、あの二人は、士官学校出身ですから
ーー 期待できるかもしれません」
「なるほど、横の情報網か」
「はい」
ルークはスペードの提案を聞いて、ルイ・ザード大隊長に相談することをスペードに伝えた。
「ルークさま、ザードさまは大隊長に昇格してから多忙ですから
ーー スケジュールを見て見ないと」
スペードは、執事ダイヤを呼んで、ザード大隊長の予定を知らせるように告げた。
ダイヤは、見習い執事になったキャンニャに任せた。
キャンニャは、ダイヤから事務を任せられている。
「キャンニャ、悪いが上司から依頼があった。
ーー ザード大隊長の予定を調べて
ーー 私に知らせてくれないか」
「はい、ダイヤさま、直ちに」
キャンニャは、ダイヤに告げると城の事務棟に移動した。
第二王女ルシアは、第一王女コットンと一緒に、午後のティータイムを楽しんでいる。
「最近、色々あり過ぎ、零や玲子先生との時間が少ないわ」
「ルシア、それは、違うわよ。
ーー 時間はね。作るものなの。
ーー どんなに忙しくてもね」
「私は、コットン姉さんみたいにマルチタスクじゃないのよ」
「大丈夫よ、メイド長のクローラを呼んでくれない」
コットンは、ピンク髪の秘書ニーナに言った。
「コットンさま、お連れします」
「ニーナ、メリウス、零、玲子先生も一緒にね」
「メリウスさまは、クーニャさまと任務中と聞いています」
「じゃ、零と玲子先生とクローラね」
「で、メッセージはどうされますか」
「そうね、久しぶりに地下の大浴場は、どうかしら」
「分かりました」
秘書ニーナは、コットンにお辞儀して、ルシアの秘書セーラを見た。
緑髪のセーラは、ニーナを見送って手を振った。
零が部屋の扉を開けると、ピンクスーツにピンク髪のコットンの秘書ニーナが立っていた。
背後には、メイド長クローラの黒い髪が見える。
部下のメイド三人が湯浴みを持って待機していた。
「ニーナさん、大浴場ですね」
零が言った。
「はい、そうですが、その前に、
ーー コットンさまとルシアさまがお会いしたいそうです」
「私もですか?」
玲子が言った。
「はい、玲子先生もご一緒にと申されてました」
メイド長クローラは部下に、零と玲子を部屋着に着替えさせて廊下で待った。
メイド長クローラとメイド三人の後を秘書ニーナ、零、玲子が続いて、長い廊下を進む。
廊下の両側には美術館にあるような絵画が等間隔で並んでいる。
「クローラさん、今日は、いつもの絵と違うような。
ーー もしかして、違う廊下」
玲子が言った。
「みなさんは、長期滞在されたので、
ーー 上から迂回ルート不要の通達がありました」
「そうなの。でも長い廊下ですよ」
零が不満そうな表情で言った。
「零さん、迂回ルートより長いかもしれません」
「なんでですか?」
「迂回ルートは、最短コースを選べますが
ーー 一般ルートは廊下の湾曲に沿って進むだけなの。
ーー だから長く感じます」
「迂回も一般ルートも、あまり変わらないわね」
零と玲子先生の会話が終わる頃、目の前にルシアの部屋の扉が見えた。
ピンク髪の秘書ニーナがルシアの部屋の扉をノックした。
中から緑髪の秘書セーラが顔を出し微笑んだ。
「玲子先生、零さん、ようこそ」
「そんなにご無沙汰したかしら」
玲子だった。
「コットンさまとルシアさまがお待ちしています」
「零、玲子先生、お越し頂きありがとうございます」
「コットン姉さん、ルシア姉さん、
ーー 今日は、どうかされましたか」
零が言った。
「いいえ、姉は、あなたたちの顔が見たくなっただけなのよ。
ーー 私も同じよ」
ルシアは、そういうと二人をテーブルに招いた。
ルシアとコットンの部屋の担当メイドが数人、紅茶とケーキを運んで来た。
「じゃ、零、玲子先生、召し上がれ」
零と玲子は満面の笑みを浮かべてケーキにフォークとナイフを入れた。
「美味しいわ、このケーキ」
玲子だった。
「ドメーヌ城の
ーー 私も大好きです。
ーー 零と玲子先生もね」
コットンが言った。
第一王女コットンの言葉に双子の妹のルシアも驚いた。
「今日は不思議な日ね」
ルシアはそう言って城の中庭を眺めた。
季節外れの突風が
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