第四十話 晩餐会は家族ディナーに!

 ルーク・ドメーヌ国王の背中を追いかけて、秘書のターニャとサーニャが廊下を急いでいた。

筆頭執事のスペードが、その様子に気付き、振り返り二人にウインクをする。


 ターニャとサーニャは、滅多にないスペードのウインクに戸惑いを感じていた。




「ルークさま、本日の晩餐会の前に、

ーー ルークさまのお兄さまの城から使者が来られています」


「誰かな」


「はい、名前は、とか申されていますが・・・・・・。

ーー 存知上げません」


「ターニャに、クーニャとメリウスを呼びに行ってもらえないか」


「分かりました。早速」


 スペードは、ターニャにルークの要望を伝えた。


「分かりました。

ーー スペードさま、早速、二人を連れて参ります」




 ルークは、待つ間、ドメーヌ城の中庭をカーテン越しに眺めていた。

遠くには、喫茶部への連絡通路を動く人影が数人見えている。


 ルークの横には、秘書のサーニャが付き添い安全を確認していた。


「サーニャ、喫茶部から光って見えているのは何かな」


 ドメーヌが呟いた瞬間、サーニャがルークの身体に飛びつきルークを床に倒した。


 窓ガラスに銃弾が当たり、鈍い音が室内に響いた。

魔法ガラスは、メリウスの結界魔法のお陰できずすら付いていない。


 ターニャが、クーニャとメリウスを国王の部屋に連れて来た。

事件に気付いたクーニャが国王に言った。


「ルークさま、お怪我はございませんか」


「サーニャの機転のお陰で、この通り無事です」

ルークは、クーニャに言うとメリウスを見た。


「メリウス、敵が動き始めたようだ」


「ルークさま、メリウスが早速対応致します」


「しかし、敵が、まだ喫茶部にいるとは思えない」


「ルークさま、まだ時期尚早です」


「メリウスの言う通りかも知れない。

ーー ところで、クーニャ、

ーー 兄の城から、使者のキャンニャと名乗る女性が来ているのだが・・・・・・。

ーー どんな人物かな」


「ルークさま、私が、あの城にいた頃は、

ーー そういう名前を聞いた記憶がございません」


「クーニャが知らないとなると間者の可能性があるかもしれない」


 ルークは、銃撃事件もあって慎重になっている。


 ルークは、腕組みしながら窓から離れた壁際を右往左往していた。

スペードがルークに提案した。


「使者の件は、クーニャとメリウスに任せたら如何ですか」


「スペード、そのつもりだが、どうも今回の流れには釈然としない。

ーー 銃撃と面会に何の繋がりがあるのだ」


 温厚なルーク・ドメーヌ国王も声を荒げていた。




「ルークさま、療養所にいる悪女と関係があるかも知れません」


「メリウスは、偽の使者と言いたいのだな」


「いいえ、あくまでも可能性でございます」


「スペード、その使者との面会を延期してみよう。

ーー 緊急なら書簡があるはずだから」


「分かりました。

ーー 部下の執事に対応させましょう。

ーー 時間稼ぎも戦略の常套手段でございますので」




 スペードは、部下を呼び、トラブルで面会を延期することを伝えた。

スペードの部下の執事は、城の外の待機エリアに出向き、白いスカートスーツの使者に要件を伝えた。


「キャンニャ殿、折角ドメーヌ城にお越し頂きありがとうございます。

ーー しかし、本日は国王陛下にトラブルがあり、面会は出来兼ねます。

ーー 申し訳ないが、後日に延期して下され。

ーー 次は、書簡も持参せよと、我上司からの伝言もございます」


「分かりました。

ーー 本日は、お手数をお掛けしました。

ーー 後日、書簡を持参させて頂きます」


 キャンニャは、執事に一礼して、城をあとにした。




 メリウスは、姿を変えて、執事と使者のやり取りの一部始終を眺めていた。


 ルークが、戻って来たメリウスに尋ねた。

「メリウス、どうだったかな」


「はい、警戒するような魔法量を感じませんでしたので。

ーー おそらく白ですが、別の犯人の潜伏を考えれば、

ーー 延期が最善策であることに変わりはありません」


「メリウス、本日の晩餐会だが」


 ルークが言い掛けると、執事のスペードがルークに耳打ちをした。


「左様か。スペード」


 スペードは晩餐会の中止をルークに告げていた。


「そういう訳で、晩餐会は中止になったが、

ーー メリウス、クーニャ、そしてスペード、ターニャ、サーニャ

ーー 今夜もディナーを付き合ってくれないか」


 ルーク・ドメーヌがディナーを招待していたら、ルシアとコットンが駆け込んで来た。


「お父さま、お怪我はございませんか」


「ルシア、コットン、私は大丈夫だが、

ーー この事件で晩餐会が中止になって困っている。

ーー ルシアとコットンも父と付き合ってくれないか」


「お父さま、喜んで。

ーー 但し、美味しいワインが条件ですわ」


「ルシア、何が飲みたいのかな」


「はい、お父さま、

ーー ドメーヌワインの赤を試してみたいと思います」


「コットンは、何かな」


「ルシアが赤なら、

ーー 私はロゼにしてみたいと思いますが」


 ルークはスペードを呼び、ワインの手配をお願いした。


「スペード、今夜は、零や礼子先生にも同席してもらおう。

ーー 娘の秘書のセーラとニーナ。

ーー メイド長のクローラもな。

ーー 今夜は、ディナーで家族会議第二弾だな」


「お父さま、幼馴染のティラミス王子とランティス王子は」

ルシアが父に尋ねた。


「あの二人か、別に必要かどうかはわからない。

ーー ルシアとコットンは、どうしたい」


「はい、口の軽い男は鳥肌が立ちます」

第二王女ルシアの言葉に、第一王女コットンが微笑んでいた。


「じゃあ、今夜は、家族ディナーにしよう」

ルークは、王女二人に微笑んだ

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