第三十九話 ドメーヌ国王の家族会議

 ルーク・ドメーヌ国王の提案で、第二王女ルシアの謁見の間で日本観光会議が開始された。

国王の秘書、ターニャとサーニャ、ルシアと第一王女の秘書のセーラとニーナも参加している。


 国防軍の総司令官になったルイ・ザード隊長は、国王の判断で欠席となった。

 筆頭執事のスペードは、国王の要望が優先され、会議に出席している。

 

 メイド長のクローラは、クローラ直属のメイド三人を従えて、謁見えっけんの間の隅で秘書たちと会話をしていた。


 ランティス王子とティラミス王子は、ルシアとコットンの判断で、会議開催の連絡がされずに放置されている。

クーニャ、メリウス、夢月零ゆめつきれい優翔玲子ゆうがれいこの四人は、国王の近くの席に着くことになった。




 ルーク・ドメーヌ国王が口を開く。

「みなさん、時間になりましたので、旅行会議を開きます」


 ルシアとコットンが拍手をして父ルークを応援した。


「ルシア、コットン、非公式な家族会議だからね。

ーー そういう忖度そんたくは不用だよ」


「お父さま、盛り上げないとつまらないじゃないですか?」


「そうね、ルシアの言う通りよ」


「ルシア、コットン、最近、お前たち仲がいいなあ」


「そうよ、メリウスと零や玲子先生のお陰なのよ」

コットンが言った。


「私たち家族は、メリウス、零、玲子さんに、

ーー 何から何までも、お世話になり放題だ。

ーー 本来なら、礼が必要なのに

ーー 厚かましく日本観光と言って申し訳ない」


「ルークさま、とんでもございません。

ーー 私たちの方が、皆さまに色々とお世話になっています。

ーー メリウスがいなかったら、何も出来ない私たちです」




「玲子さん、気にせずに楽にしてください。

ーー ところで、日本とは、この国と、どう違うのかを知りたいのだが」


「ルークさま、日本は、この国と違い四季がございます。

ーー 私たちは、四季を春、夏、秋、冬と、名前で呼んでいます」


「玲子先生、意味がよく分からないのですが」

コットンだった。


「そうね。

ーー この国の今の季節を例えれば、日本の春の陽気になるわね」


「この国も暑くなるし、寒くなるわよ。

ーー でも、大きくは変わらないのね。

ーー 気温が少しだけ変動するだけよ」


「コットンさま、日本の冬は氷点下になるのよ。

ーー 雪が降り、スキー場でスキーもできるわ。

ーー 夏は、もの凄く暑くて、プールや海で泳ぐのよ。

ーー かき氷も美味しいわ」

零が無邪気にコットンに説明していた。


「水泳は分かるけど、スキーは知らないわ」

ルシアが零に言った。


「ルシア姉さん、スキーはね。

ーー 山の斜面を二枚の板に乗って、滑り降りるスポーツなのよ」


「そんな、危ないスポーツなの」


「よく怪我人も出るわよ」


 零のスキーの説明に謁見の間の会議に暗雲が漂い始めた時、呼ばれていないランティス王子とティラミス王子が入って来た。


「ティラミス、ランティス、今日は、秘密の家族会議なのよ」


「コットン、いいじゃないか?

ーー 僕たちは幼馴染なんだから」


「ティラミス、そういう意味とは違うのよ。

ーー これは、ルシアと私の留学に関係しているのよ」




 ルシアが急に立ち上がり、クーニャに言った。


「この二人に、席を外してもらいたいのですが」


「分かったわ。ルシア」


 クーニャは、そういうと、ティラミスとランティスをにらみ付けた。


 超がつく美人のクーニャににらみ付けられた二人は、気不味くなって謁見えっけんから退室した。

ルークとスペードも、金髪と銀髪の双子の王子を見送るだけだった。




「玲子さん、零、今の日本の季節は、どうなんですか?」


零、玲子に代わって、メリウスがルーク国王に答えた。


「魔法時計の影響で時間が停止しているので、

ーー エラーが起きて無ければ、夏ですが。

ーー 戻ってみないと分かりません。

ーー 私ですら、往来はあまりしていませんので」


「メリウス、往来といえば乗り物は、やっぱり馬車か」


「いいえ、自転車、バイク、自動車、船、飛行機などがあります」


「初めて聞く名前だわ」

コットンが目を輝かせてルシアを見た。


「よく分からないけど、興味あるわね」

ルシアは、そういうと零とメリウスにウインクした。


「ルシア姉さん、でもね、良いことばかりじゃないのよ。

ーー 人と乗り物の間では、事故も起きているわ」


「零、そういう話は、今言うべきじゃないわよ。

ーー 何処の国にも危険はあるのだから」


「玲子先生、すみません」

零は、玲子に謝って舌を出していた。




「日本には、四季だけでなく動物も沢山いるのよ。

ーー 猫とか犬とかね。

ーー 猫は、ブームになっていて、もあるわ。

ーー でも危険な猛獣は、動物園で飼育しているのよ」


「玲子先生、危険な動物って何ですか?」


「コットンさま、私たちは、ライオンとか虎と呼んでいるの。

ーー 他に熊もいるし。

ーー 海には、さめくじらしゃちもいるわ。

ーー シャチは、獰猛どうもうなの」


「玲子先生、そんなに脅しちゃダメじゃ無いですか」

零が言った。


「そうね、猫だけにしとくべきだったわね」

玲子も零の真似をして舌を出していた。




「ところで、メリウス、日本に行くとしても

ーー 城の様な大きな部屋は、うちにはないわよ」


「零、私たちは、零にそんな期待していないから大丈夫よ」


「ルシア姉さん、ありがとう。

ーー でもみなさんには、零の自宅に泊まって頂きたいわ。

ーー 城と比べれば、手狭な部屋ですが。

ーー 設備も暖冷房も、最新式だから心配無用よ」


「零、暖冷房って何ですか」


「電気で動くエアコンよ。

ーー 暖かい風や、冷たい風が出る機械のことよ」




 スペードがルークに告げた。

「ルークさま、次のスケジュールが・・・・・・」


「忘れていたよ、スペード。

ーー スケジュール調整が先だった。

ーー この続きは後日にしよう」


 ルークは、そう言うと、秘書二人とスペードを連れて謁見の間を後にした。


「クーニャ、一緒に行かないの」


「メリウス、私は大丈夫だから・・・・・・」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る