第三十四話 クーニャとメリウス

「スペード、相談があるんだが・・・・・・」

「ルークさま、なんでございましょう」


「クーニャは、今、どうしている」

「クーニャさまは、最近、特殊任務を終え帰還の途中でございます」


「じゃあ、クーニャが戻り次第、ここへ呼んでくれないか」

「はい、承知致しました」


 クーニャはターニャとサーニャの一歳上の姉で、双子の妹同様に破壊力のある魔法が使用出来た。

 ルークは、クーニャの性格のムラを気にして兄の城に派遣していた。


「兄は、何と言っている」


「クーニャは気が利く良い秘書と申されています。

ーー ですが、稀にパワーが暴走することがあり、

ーー 派遣契約が解除されました」


「パワー暴走か。メリウスに相談してみよう。

ーー 今回の事件を踏まえれば、私はもう一人、用心棒が欲しい」


「ルークさま、クーニャさまなら、最適かと思われます」


「スペードも、そう思うか。

ーー しかし、あの偽者のターニャとサーニャは何者なのか。

ーー あとで、メリウスをここに」


「承知しました」




 メイド長のクローラがルシアの部屋をノックした。

緑髪の秘書セーラが扉を開けた。

「セーラさま、こちらにメリウスさまは、いらっしゃいますか」


 令嬢ルシアが秘書セーラの背後からクローラに声を掛ける。


「クローラ、メリウスになにか」

「ルークさまからのご連絡で、至急お部屋に来てくださいとのことです」


「分かったわ。クローラ、ちょっとだけ待ってくれる」

「はい、ルシアさま」


 令嬢ルシアは、姉の令嬢コットンに用件を告げ、メリウスに伝えた。


「メリウス、また難題かもしれないわ」

「ルシアさま、私は大丈夫です」


「そうね、この国ではメリウスより強い者はいませんわね」

「ルシアさま、それは、買い被りですが」


「メリウス、私は過大評価などしていないわ。

ーー まあ、いいわ、お父様がお呼びよ」


「じゃ、ルシアさま、あとで・・・・・・」




 メリウスは、メイド長クローラに引き連れられて城主ルーク・ドメーヌの部屋に到着した。

 秘書セーラと同じ緑髪の秘書ターニャがメリウスを迎えた。


「メリウスさま、先日はお世話になりました。

ーー 主人がお待ちしております」


 執事のスペードが秘書ターニャと一緒にルークのデスクに案内した。


「メリウスさん、急に呼び出して申し訳ない」


「ルークさま、何でしょうか?」


「秘書ターニャとサーニャの姉のクーニャが、

ーー まもなく城に戻ることなった。

ーー クーニャは魔法エネルギーを暴走させることがあってな

ーー メリウスなら制御出来るかと考えた」


「ルークさま、お会いして見ないと分かりませんが、

ーー メリウスが善処致します」


「クーニャは、ターニャ以上に優れているが

ーー その欠点に頭を抱えている。

ーー ところで、先日の偽者はどうなったか分かるか」


「はい、変装していましたが、間違いなく同一人物です」


「メリウス、意味が分からないのだが」


「ルークさま、覚えていらっしゃいますか?

ーー アクト・リカエル

ーー キレザ・リガーニと言う男女を」


「でも、メリウス、あの偽者は女だが」


「おそらく、魔法で男装していたのでしょう。

ーー 今は変装魔法が解除されていますので素顔が分かるかと」


「なるほど・・・・・・。

ーー しかし、その偽名の先が分からんな」


「ルークさま、悪人の名前など問題ありません。

ーー 名前に意味はないかと」


「メリウス、分かった。とりあえず今日は、下がってよろしい。

ーー ご苦労だった」


 秘書ニーナと同じピンク髪のサーニャがメリウスを出口まで見送った。

メイド長のクローラが主人の扉の外で待機している。

「メリウスさま、ルシアさまがお待ちです、参りましょう」



 翌日、筆頭執事スペードがクーニャを連れ城主ルークドメーヌの部屋に通した。


「ルークさま、クーニャを案内しました」

ルークの横にはメリウスが立っていた。


「クーニャ、紹介しよう。大魔法使いのメリウスだ」


「ルークさま、その方は魔法使いなんですか」


「そうだ、クーニャの魔法エネルギー暴走を見てもらう」


 メリウスはクーニャを見て考えが浮かんだ。


「ルークさま、クーニャさまを私に預けてもらえませんか」


「メリウス、何かいい考えあるのかな」


「しばらく、エネルギーを観察させてください」


「クーニャ、メリウスがそう言っておるがクーニャは良いか」


「はい、ルークさまのご判断であれば・・・・・・」


「分かった。しばらく、二人に任務を与えよう。

ーー あの偽者たちの監視だが良いか、メリウス、クーニャ」


 令嬢コットンと同じ紫色髪のクーニャはルークに頭を下げメリウスと一緒に退席した。




 メリウスは追跡魔法で偽者の位置を把握していた。

偽者の二人は私服兵の監視を逃れて喫茶部に潜入していた。




 メリウスとクーニャは、ルシアの部屋にいた。

「クーニャさん、お久しぶりです」

令嬢コットンがクーニャに挨拶した。

令嬢ルシアも姉に続いた。


 クーニャは、以前、コットンとルシアの家庭教師をしていたことがあった。


「お二人とも、元気そうで何よりです。

ーー 私は今回、メリウスさまと一緒に特殊任務に当たります。

ーー しばらくは、このお城でお世話になりますので宜しくお願いします」


 クーニャは双子の令嬢に挨拶してテーブルに着いた。

秘書セーラと秘書ニーナもクーニャに挨拶した。


 ルシアとコットンのメイドがクーニャとメリウスにお茶を出す。

「メリウスさま、魔法暴走なんですが大丈夫でしょうか」

「クーニャさま、もう治っているから大丈夫よ」


 メリウスは既に魔法治療を施していた。

クーニャの魔法の綻びは、正常に戻されている。

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