第二十三話 五人でパジャマパーティー

 賑やかな大浴場と晩餐会のあとで、零は令嬢ルシアの部屋に呼ばれた。


 零の薄いピンク色のドレスとルシアの水色のドレスがルシアの部屋に華を添えている。

ランティス王子、ティラミス王子、双子の姉の令嬢コットンもいた。

コットンの紫色の髪と瞳に胸元が大きく開いた紫色のドレスが床に届いて艶めかしい。


 一方、二人の王子は白い上下のスーツに薄い水色のシャツだ。

ランティスの金髪、ティラミスの銀髪がスーツに似合っていた。

ジャケットの水色の縁取りがお洒落に見える。


 玲子とメリウスは、部屋の隅のソファで、

ーー秘書のセーラ、秘書のニーナと一緒に待機している。



 ランティス王子が立ち上がり、玲子の元にやって来て手を差し出す。


「玲子さん、みんなと一緒にティータイムにしましょう。

ーーまだ夜は長いですよ」


「ランティス王子、私などーーお邪魔じゃないかしら」


「玲子さん、みんな仲間じゃないですか?」

「意味がわからないわ」


「だって次元トンネルで光の世界に行って来たのですよ」

「・・・・・・でも、私ーー何もしていませんが」


「そんなことないでしょう。

ーーみんなの協力がなかったら兄を救出できませんでしたよ」


「まあ、ランティス王子にそう言われると嬉しいですが・・・・・・」


 玲子はランティス王子にエスコートされて部屋の隅にある大きなテーブルに移動した。

メリウスもセーラとニーナに挨拶をしたあと、ソファを離れた。


「ランティス、ルークさまがすでに軍体に命令を出していたそうだ」

「兄さん、僕も聞来ました。

ーーアンティークショップの店主、逃亡途中で軍隊に拘束されたようです。

ーー今頃は取り調べをされているでしょう」


「まあ、あんな危険な物をルシアやコットンに売りつける輩だから裏があるでしょう」


ルシアがメリウスに尋ねる。

「メリウスは、どう思う」

「あの主人自身が魔法使いじゃないでしょうか」


「だとしたら、とんだ食わせ物じゃないかしら。

ーー姉さんは被害者として、どうなの」


令嬢コットンはメリウスを見ながらゆっくり話しだす。

「メリウスの言う通りなら・・・・・・軍体じゃ、

ーー管轄が違うわよ」


フィアンセのティラミス王子がコットンの手を握りながら補足した。

「つまり、コットンが言いたいことは、担当者が違うと言うことですか?」


「そうなるわね。魔法省に連絡しないと、

ーー軍体じゃ無理があるわ」


 メリウスは、コットンの話を聞いて未来を見ていた。

零がメリウスの手を引く。


「メリウス、協力して上げて」

「零さま、分かりました。

ーーなんとかしましょう」


 メリウスは、離席を伝え隣室に移動して消えた。



 メリウスはジュークが拘束されている部屋に現れた。

アンティークショップの主人あるじのジュークにはメリウスが見えていない。

メリウスはその場で、建物全体に強力な結界を張り巡らせ、零の元に戻った。


「零さま、失礼をお詫びします。

ーー魔法省にジュークの引き渡しが完了するまで、

ーー何もできないようにさせておきました」


「メリウス、ありがとう」



「ところで、零ーー私はまだ留学の話の続きを聞いていないわ」

「メリウス、コットンさんに話してもいいの?」


メリウスは、小さく頷く。


 零は、軽く深呼吸をしたあと、話しを始めた。


「あの次元トンネルをランティス王子もルシアさんも見たでしょう。

ーー私たち三人はあのトンネルからやって来たのよ。

ーー私はこの国と同じ名前の朝霧女学園に通っていたの。

ーー優翔ゆうが玲子先生は私の先生で元ファッションモデルよ」


 零は、深呼吸をして続ける。

「だから、私と一緒なら、

ーートンネルから日本へ行けるわ」


 令嬢コットンと令嬢ルシアの瞳がキラキラと輝いて零を見つめた。


「零、いつでもいいの?」

「ただ、メリウスのヘルプがないと

ーー私だけでは無理なのよ」


 コットンはメリウスの手を両手で包み込む。

「メリウス、私たち四人を日本に連れて行って!」


 コットンの秘書のニーナが駆け寄る。

ルシアの秘書のセーラも駆け寄った。


「お嬢様、私たちもご一緒します」


「メリウス、そんなことできるの?」


 零は、日本での生活を心配している。

零の家は、恵まれていて大邸宅であったがドメーヌ城と比べたら小さい。


「メリウスがなんとかしましょう」

「メリウス、ありがとう」

コットン嬢がウルウルしていた。


「姉さん、湿っぽくなるじゃない」

「今夜は、ルシアのお部屋に泊まるわよ。全員ね」

ランティス王子とティラミス王子が喜ぶが束の間だった。


「殿方は、ご自分のお部屋にお戻り下さい」

セーラとニーナだ。


 金髪のランティス王子と銀髪のティラミス王子が部屋を出て行った。



 メリウスたちのメイドが着替えを届け、挨拶して出て行った。

メイド長のクローラが、セーラに耳打ちをしている。


「分かったわ。明日の朝ね」

クローラは、伝言を終え部屋を出た。



「じゃあ、みんなパジャマに着替えたら、

ーー女だけのパジャマパーティを始めるわ」

ルシアの声に大きなベッドの上に上がる五人。


 セーラとニーナはソファにいた。

ルシアが二人を解放して彼女たちは自室に戻った。


「さあ、何を始める?」

メリウスがアイテムボックスから、トランプを取り出す。


「それ、うちの国にもあるわよ。

ーールールは知らないけど・・・・・・」


 零と玲子先生が、ルシアとコットンにババ抜きの説明を始めた。


 天井のシャンデリアの輝きが零と玲子には眩しく思えた。

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