第二十一話 隔離廊下から令嬢コットンの私室へ向かう
令嬢ルシアの驚きに気付いたメリウスは、
ーー令嬢コットンの手にある魔鏡に封印を掛けるため、
ーールーム全体に無詠唱魔法を掛けた。
万が一の事態を警戒してのことだ。
するとルシアの驚きも波が引くように徐々に鎮まり普段のルシアに戻る。
令嬢コットンは、変わらない。
「どうするのよ・・・・・・姉さん。
ーーその魔鏡を」
「ただ欲しかっただけよ」
コットンの紫色のドレスと紫色の髪が異質さを際立たせる。
ルシアの水色のドレスも絵画の湖のように神秘に見えた。
「それより、零、日本の説明をしなさい」
「コットンさま、零の失言をお許しください」
「玲子先生が謝る必要ないわ。
ーー元々、姉さんが悪いのだから」
ルシアのフィアンセのランティス王子が間に割り込み玲子先生を庇う。
「みんなで、わたし一人を
「元々、姉さんが留学を口にするからいけないのよ」
令嬢コットンの魔鏡の話は
メリウスは、計り知れない魔鏡のパワーを怖れている。
アイテムボックスを起動して、
ーー魔法時計が必要な事態にならないことを祈るメリウスだった。
ルシアとコットンの双子姉妹のバトルが終わり、
ーールシアとメリウスたちはブレックファーストルームを後にしようとした時。
令嬢コットンが大声で零を呼んだ。
薄ピンク色のスカートスーツの零は、躓くように急に立ち止まった。
ーー振り向きざまに零はバランスを崩した。
零の
「零、大丈夫ーー姉さん、びっくりするじゃない」
令嬢コットンは妹のルシアを無視している。
「零!ーーあとで、私の秘書のニーナがあなたを呼びに行くから、
ーーメイド長のクローラと一緒に来なさい」
零は、意味が分からず黙り込む。
「・・・・・・」
「コットン、いいじゃないか、もうその辺で」
今度はコットンのフィアンセのティラミス王子がコットンのドレスの肩に手を優しく掛けた。
コットンは王子に逆らわずに会話を続けている。
「私は零にも玲子先生にも、メリウスにも聞きたいことが沢山あるわ」
「姉さん、それなら、私も同伴します」
「ルシアは関係ないでしょう」
「姉さんが嫌なら、私は零を引き止めるわよ」
さすがにコットンも諦めてルシアの提案を受け入れた。
メリウスは、ブレックファーストルームを出て小さく深呼吸を繰り返した。
無詠唱魔法で疲れていたが大事には至らない。
城の複雑な迷路のような廊下をクローラが先導した。
クローラがいなかったらメリウスたちは迷子になっていたかもしれない。
廊下の上の方をよく見ると数字のような文字が並んでいる。
メリウスですら気付かないのだから、侵入者には意味不明のはずだ。
メリウスたちは再び玄関の
「クローラさん、ここまで来れば分かるわよ」
「零さま、ご案内は私のお仕事でございます」
玲子先生が、クローラに謝罪をした。
メリウスたちを部屋に届けたメイド長のクローラはメイドが待機している部屋に戻った。
しばらくしてからメリウスたちの部屋の扉がノックされる。
メリウスが扉に出向き扉を開けた。
クローラに並んで緑色のスカートに水色ジャケットの女性が立っている。
長いピンク色の髪が頭の後ろで束ねられたポニーテールで顔立ちが愛らしい。
髪と同じ色のピンク色の瞳が妖艶に輝いている。
「みなさん、ご紹介します。
ーー令嬢コットンの秘書のニーナさまです」
クローラの紹介が終わりメリウスたちは迷路のような廊下を進み、
ーー見覚えのあるルシアの部屋の前に到着した。
秘書のセーラがクローラを呼び三枚の扉の前で待っていた。
令嬢ルシアは真ん中の扉から顔を出し手招きをしている。
ルシアの部屋は左端の扉、右端の扉が謁見の間に通じる控えの間であることをメリウスたちは覚えていた。
零がルシアに声を掛けた。
「ルシアさん、そこもルシアさんのお部屋なの?」
「零、私のお部屋は隣よ。
ーーここは、別の廊下に通じる扉なのよ」
零たちは、ルシアに言われるがままに扉の中に
零が声を上げる。
零は前世の姉であるルシアを本能的に信頼していた。
「ここお部屋じゃない。普通は」
「そうね、でも今は廊下になっているわよ」
零も玲子先生もメリウスも混乱していた。
秘書のセーラとニーナが先導を始めた。
クローラは、メリウスたちと一緒に後に続くように指示している。
セーラもニーナと同じ色のジャケットにスカートだった。
セーラの緑色の髪の横にニーナのピンクヘアがあった。
ルシアの水色の髪も綺麗だなぁと零は思っていた。
メリウスは天井と壁の付近を何気なく見ていた。
ところどころに記号のような文字が刻み込まれていた。
一般廊下とは隔離されているようだ。
途中からニーナが先導役に交代して隔離廊下を進んだ。
左右の白い壁には窓がなく絵画の額縁が等間隔で飾られている。
秘書のニーナが振り返る。
「あと少しです」
双子の兄弟のティラミス王子とランティス王子が廊下の先で待って手を振っている。
「遠いところをわざわざありがとうございます」
銀髪のティラミス王子だった。
「兄さん、それは、ニーナの役だよ。
ーーとっちゃ可哀想じゃないかな」
ニーナは金髪のランティス王子に微笑んだ。
二人の王子は、白いスーツに着替えている。
「さあ、みなさん着きましたよ」
秘書のニーナが令嬢コットンの私室の扉を三回叩く。
もう一度、同じ回数を叩く。
フィアンセのティラミス王子も異変に気付き大声でコットンを呼んだ。
「コットン!コットン!コットン!
ーー部屋に入るぞ・・・・・・」
令嬢コットンの声はしない。
部屋には、鍵が掛けられていた。
秘書に許された合鍵をニーナがアイテムボックスから取り出してコットンの部屋を開けた。
令嬢コットンは魔鏡を手にしたまま部屋の中央で、仰向けに倒れていた・・・・・・。
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