第十九話 次元扉の秘密
令嬢ルシアはメリウスたちにハンカチを渡すと謁見の間を出た。
間にある控えの間に秘書のセーラと一緒に移動した。
ルシアの秘書のセーラがメイド長のクローラを呼んだ。
クローラが足早にルシアとセーラの前に出る。
「クローラ、ルシアさまが、
ーーメリウスさまたちをお部屋にお戻しくださいとのことです」
「セーラさま、分かりました。ありがとうございます」
「クローラ、今日もご苦労様ね。ゆっくりお休みなさい」
「はい、ルシアお嬢さま、ありがとうございます」
クローラが元気よくルシアに挨拶を終えメリウスたちの元に戻る。
ルシアとセーラは、控えの間と隣室を結ぶ扉の中に消えた。
メリウスたちはクローラの案内で迂回路の廊下を経由して城の玄関前の
「本当、ここの廊下、ダイエットになるわね」
「零さま、また、そんなことをーーお口にしてはなりません」
「零、メリウスさんの言う通りよ。
ーーいい子にしないと先生も困りますから。
ーーそれに、明日で三日目になります」
「先生、タイムリミットですか」
メリウスが、零に注意する。
「シー」
メリウスたち三人がクローラの案内で自室に到着した。
メイド長のクローラは、部下の三人のメイドと入れ代わってメリウスたちの元から帰った。
「明日、お迎えに来ます。お休みなさい」
メリウス、零、玲子はクローラに挨拶した。
三人のメイドが運んで来た寝巻きに着替えて零は大きな深呼吸をする。
メイドが部屋から消えると、メリウスが
「玲子先生、こちらの時間では明日で三日目なのですが・・・・・・。
ーー異世界と
「メリウスさん、意味がさっぱり分からないわ」
玲子は、珍しく口を尖らせる。
「次元トンネルを覚えていますか?
ーーあのトンネルは
ーー前世や来世とも繋がっています」
「じゃあ、あのトンネルはルシアさまの控えの間のようなものかしら?」
「はい、簡単じゃありませんが、そうなります」
「・・・・・・」
「零さまの魔法時計のタッチパネルのオプションが行き先を決定しています」
「で、メリウス、それはなにが違うの」
「零さま、あの空間を通ると
ーーつまり、あの時から時間は動いてないのでございます」
「じゃあ、わたしたちはタイムアウトで戻れるんじゃなかったのですか」
「いいえ、本来はそうだったのですが・・・・・・」
メリウスは困った表情を浮かべ続けた。
「魔法時計を開けて、次元トンネルをもう一度開くしかありません。
ーーこの世界から出るオプションが表示される筈です」
「じゃあ、メリウスの理屈なら・・・・・・。
ーーわたしたちは、まだまだ、ここにいられるのね」
「はい、零さまの仰る通りでございます」
玲子は女学園の休暇申請のことを思い出した。
「メリウスさま、わたしの休暇申請はどうなりますか?」
「はい、無効かも知れません!一秒も経過していませんから・・・・・・」
零と玲子は、狐につままれた表情をメリウスに投げ掛けた。
「で、メリウス、私たち、どうするの?」
「はいーー零さま、しばらくは成り行き対応でよろしいかと・・・・・・」
「メリウス、意外といい加減なのね」
「いいえ、そう言わないとみなさんがお困りになるだろうと思った次第でございます」
「メリウスさまの言う通りね。ある意味、わたしは助かりますが」
「メリウス、質問?」
「なんでございますか?零さま」
「じゃあメリウス、こちらから出て行く時はその逆が起こるのですか?」
「そうなります」
「じゃあ、ルシアたちを日本に連れて行こう」
「メリウスさま、三人まででは」
「ああ言わないといけない状況だったので・・・・・・」
「じゃあ、できるのね」
「はい、玲子先生」
零は、腕組みをしながら部屋の中を行ったり来たりし始め玲子が注意をする。
「零さん、落ち着きがありませんよ」
「先生、わくわくするじゃありませんか?」
「あなたね、観光旅行と勘違いしていませんか?」
「そうかもしれないけど、面白いじゃありませんか。
ーー令嬢コットンや双子の王子も連れて行ってあげようとか・・・・・・。
ーー考えていたのよ」
「零、それって、ランティス王子とティラミス王子のこと?」
「そうに決まっているでしょう」
「あなたには先生もついて行けないわよ」
「だって、令嬢ルシアは差別が嫌いな人よ。だからいいじゃない」
「零さまのそういうところが、ルシアさまとそっくりでございます。
ーー零さまとルシアさまの波動が引き寄せたのでしょうね」
「メリウス、そう思うの。メリウス、ありがとう」
零は、メリウスに歩み寄り抱きしめて涙ぐむ。
「零もルシアさまも、似ている性格なのかも知れませんね」
「玲子先生、ルシアさまと零さまは前世の姉妹でございます。
ーールシアさまが姉で零さまが妹でした」
メリウスの爆弾発言に零の心の中に湧いた感情の嵐が堰を切った。
零の目頭から大粒の雫が溢れ零の目は真っ赤になった。
「メリウスのバカ、そんな大切なことを黙っているなんて」
「零さまに言い出すタイミングがありませんでした」
玲子が重い腰を上げてメリウスに言う。
「あなたも中々罪な人ね」
「玲子先生、私は私の役目に忠実なだけです」
その夜、三人はそれぞれのベッドに戻り爆睡した。
零の手には、前世の姉ルシアから頂いた王家の家紋のハンカチが握られていた。
淡いピンクのハンカチは零の涙で濡れていた。
翌朝、メイド長のクローラがメリウスたちの扉をノックして係のメイド三人が入室し身支度の準備が始まった。
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