第十三話 みなさんご機嫌よう!

 令嬢ルシアの城でメリウスたちは朝を迎え三人はそれぞれの部屋でシャワーを浴びる。

シャワーを終えた頃、ドアがノックされて、零が濡れた髪の毛で出る。


「零さま、おはようございます」

黒髪のメイドのクローラがランティス王子と立っていた。


「零、おはよう!髪の毛乾かしたら食事に行こう」

「ランティス王子、ありがとうございます」


 昨日のメイド三人が部屋に入って来て、三人の髪の毛を整え新しい部屋着に着替えさせられた。

ランティス王子は、廊下で待っている。



 メリウスたち三人の着替えが終わりメイドが前日の部屋着を回収して部屋を退散する。


「ディナーの時の部屋着とは違うわね」

「そうね先生、昨日のがドレスならビジネススーツ風ね」

「零さま、この方がお似合いでございます」


三人はクローラと金髪のランティス王子のあとに続いて行く。

「クローラ、昨日と廊下が違う気がするけど」

「ええ、違います。昨夜はディナールームでしたが、

ーー今朝はブレックファーストルームです」

「なるほど」

と言ったもの、零の頭は混乱している。

メリウスと玲子先生も同じだった。


「今日は、ルシアさんのお部屋には寄られないのですか」

「はい、お嬢様は、先に食堂に移動されました。

ーー令嬢コットンさまとご一緒に」


「双子のお姉様ですね」

「はい、左様でございます」


メリウスと玲子が零の質問にハラハラしている。

メリウスが我慢できずに零を注意した。


「零さま、令嬢コットンさまのことは軽々しくお口にされない方がよろしいかと思われますが」


「メリウス、大丈夫よ」

メリウスの困った顔を見て玲子もメリウスを庇う。


「夢月さん、メリウスさんは、あなたを心配しているのよ」

「大丈夫よ、相手は人間ですから」


 メリウスと玲子先生は顔を見合わせて呆れている。



 クローラとランティス王子が螺旋階段を降りてメリウスたちを案内する。

ランティス王子が玲子先生に声を掛ける。


「玲子先生、城にはいくつもの食堂があって、毎回違う食堂を使うことになっているんですよ」

「なんで、そんな手間暇をお掛けになるんですか」


 クローラがランティス王子に代わって説明した。

「それは、城のセキュリティですが、

ーー執事のスペード以外は分かりません」


 玲子は、クローラの言葉を受けて返す言葉が無かった。



 廊下の雰囲気が変わり、廊下の窓から中庭を望めた。


 メリウス、零、玲子の三人は、方向感覚を失っていた。

廊下がぐるぐると中庭を周回してる。

廊下が終わり、上り階段を上がりまっすぐに五人は進む。



 扉の前に緑髪のセーラが立っていた。

「令嬢ルシアさまが、中でお待ちしています」


 ルシアの秘書のセーラが大きな扉を開けると中から令嬢ルシアが顔を出した。

「みなさん、ご機嫌よう!」

「ルシア、ご機嫌よう」

ランティス王子が答え、メリウスたちも真似る。



 令嬢ルシアの背後に双子の姉の令嬢コットンがいることに気づいていない。

令嬢コットンの紫色の髪の毛が見え三人が緊張する。


「ルシア、朝は、おはようございますでしょう」

「コットン姉様、ご機嫌ようはいつでも使える便利な言葉よね。ランティス王子」


 ランティス王子は困り顔でルシアに頷く。

令嬢コットンの背後にランティス王子の兄のティラミス王子の銀髪が見える。


 秘書のセーラとメイドのクローラも、最悪の状況にならないことを祈っていた。

ルシアとコットンの性格は正反対で、ティラミス王子の気苦労が絶えない。


 ランティス王子がティラミス王子に手を振る。

コットンとルシアと違い、兄弟愛に溢れた兄弟なのだが令嬢コットンの我儘に翻弄されていた。



「兄さん、おはよう御座います」

「ティラミス王子、ご機嫌よう」

「ルシア、だからね、おはようよ」


 令嬢コットンも令嬢ルシアも譲らないで火花を散らす。


「令嬢コットンも令嬢ルシアもいい加減にしてブレックファーストにしよう」

「そうだね、兄さん、僕もお腹空いたよ」

ランティス王子があどけない顔で令嬢ルシアを見た。


「そうね、ランティス王子」


 秘書のセーラが、メイドのクローラと一緒にメリウスたちを中に招いた。


 零が声を上げる。

「映画を見ているみたい!」

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