第九話 令嬢ルシアのお城で部屋着?

 メリウスたち三人は、令嬢ルシアに誘われてドメーヌ邸に泊まることになった。

やしきが近くなると民家が邸を囲むように並んでいる。


「ルシアさん、お邸の周りに民家が多いわね」

「そうね、うちの関係者のお家ね」


「関係者って?」

「秘書、執事、調理人、メイド、家庭教師など・・・・・・そんなところよ」


「じゃあ、通っているんですか?」

「殆どは通いね」


零が城壁を見上げて声を上げる。

「ルシアさん、やっぱりお城じゃないですか?」

「ただのお邸よ」


 城壁の周囲には幅の広い濠があった。

中央の跳ね橋(はねばし)の手前に兵隊が並んでいる。


「兵隊さんですよね」

「そうよ、父は王家出身者なので当然ね」


「王家ですか?」

「正確には王の弟ですが」


「わー」

「そんなに驚くべきことじゃないわ」


「だって」

「王家から見れば傍系になるわ。

ーーランティス王子は、わたしの従兄弟いとこになるわ」


 跳ね橋の入り口に立っている恰幅のいい長身の兵隊がルシアに声を掛ける。


「ルシアお嬢様、その方たちは、どなたですか?」

「ルイ、こちらは、メリウスさん、夢月零さん、優翔ゆうが玲子さん」


「変わったお名前ですね」

「日本という国から来たそうよ」


「日本ですか・・・・・・?」

「聞いたことがございません」


「まあ、いいわ、とにかく、私の学校のお友達と先生よ」

「先生ですか」


「はい、優翔ゆうが玲子と申します」

「ご丁寧な挨拶をありがとうございます

ーーここの兵隊長のルイ・ザードと申します」


ルイは玲子に敬礼して、玲子は会釈を返した。


 ルイの案内で跳ね橋を渡り城門の中に入ると両側に兵隊が並んでいる。

兵隊たちは令嬢ルシアに向いて敬礼した。

更に進むと白樺林のような小さな森と池が見える。


 森の出口に到着するとルイがルシアに挨拶して引き返した。

中年くらいの背の高い男が馬車の前で待機している。


「お嬢様、お待ちしていました」

「クローバ、いつも悪いわね」


「いいえ、仕事ですから」


 メリウスたちが馬車に乗ると馬車は弧を描くように右側に迂回して進む。

しばらくして、城の大きな入り口が見えてくる。


「零、あの森の出口から歩くと遠いのよ。

ーーだから、クローバが馬車で送迎してくれているわけ」

「あまりの大きさに、びっくりしました」


「まだまだ、びっくりがあるわ」


 馬車を降りて、メリウスたちゲストは、入り口でゲスト証を渡され首からぶら下げる。

背後から声が掛かる。


「玲子さん」

玲子が振り返るとランティス王子が立っている。


「ランティス王子どうして?」

「実は、ここに居候しているんですよ」

ランティスは金髪の髪の毛を掻き上げ照れ笑いした。


 五人が大きな玄関を入ると、両側にメイドが並んでいる。

驚く人数に零は異世界ゲームかと思った。


「お帰りなさいませ、お嬢様」

ルシアに向かって、メイドたちが一斉にお辞儀をする。


 中央から初老くらいに見える銀髪の男性が近づいて来た。

あまり背は高くなくルシアと変わらない。


「お嬢様、その方たちは?」

「わたしのお友達で、今日からしばらく滞在するわ」


 令嬢ルシアは、とっても直感の良いお姫様で未来予知の才能がある。


「じゃあ、スペード、よろしくお願いしますね

ーーわたしは、これから着替えますので、メリウスさんたちも部屋着に着替えてください」


ルシアは執事のスペードに話したあと、メイドの一人を呼ぶ。

「クローラ、わたしのお友達に部屋と部屋着をお願いね」


「はい、お嬢様」

メイドのクローラは、ルシアにお辞儀してメリウスたちを手招きして案内する。

緩やかな長い階段は大理石のように白く輝いている。


 階段は途中の大きな踊り場で左右に分かれていた。

ルシアは踊り場でメリウスたちと別れ右手側の階段を上がった。


 一方、クローラは左手側の階段を上がりメリウスたちも一緒に上がる。


 メリウスたちの後ろにはランティス王子がいた。


「ランティス王子もこちらなの?」

「玲子さん、このお城、部屋数だけなら数えたことないけど三百くらいある。

ーーその中の一部屋に居候させてもらっている」


「そうなんですか」

「やっぱりだけど、ここはお城ね」


「王様の弟のルーク・ドメーヌ様ですからね」

「なるほど」


 メリウスたちはクローラを先頭に先の見えない長い廊下を進んだ。


「ランティス王子、この長い廊下、どうなっているの?」

「噂では、城内を周回していて、右側の階段の廊下に繋がっているとか。

ーー僕も体験したことがありませんが」


ランティス王子は頭を掻きながら笑っている。


 じゃあ、と言って、ランティス王子は離れた。


 クローラが立ち止まると右側の部屋から三人のメイドが出てくる。


「メイド長、何か」

「こちらの三人に部屋着を渡して上げてください」


 三人は、メリウスたちのサイズを測り部屋に戻る。

 クローラは、メリウスたちを向かいの左側の部屋に案内した。


 部屋の中央に大きなシャデリアがぶら下がっている。

室内は三部屋に分かれいて、それぞれにベッドが置かれていた。

あとから三人のメイドがメリウスたちに部屋着を届けた。


「え、これが部屋着なの?」

アイボリーのドレス、イエローのドレス、淡いピンクのドレスがあった。


メリウスはアイボリーのドレス。

玲子はイエローのドレス。

零は淡いピンクのドレス。


 三人は着替え終わり廊下に戻り、クローラが案内した。

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