第八話 アンティーク店の魔鏡
メリウスたちは食事を終えると令嬢ルシアと一緒に学校の中庭に移動した。
中庭の周囲にはベンチが並び中央が芝生になっている。
令嬢ルシアは、手前のベンチに腰掛け、メリウスたち三人も座る。
「ルシアさん、この町のことを知りたいわ」
零が尋ねる。
「いい質問ね。学校のあとで、わたしが案内するわ」
「本当?」
「嘘ついて、どうするのよ」
「それは、そうね」
「じゃあ、授業を終えたら、行きましょう」
令嬢ルシアは、思っていたより親切でメリウスたちは安心した。
「ところで、何処がいいかしら」
「そうね、零・・・・・・アンティーク店は、どう」
「骨董品店か。いいわね」
「骨董品?」
「日本では、そう呼ぶのよ」
零の言葉にルシアが玲子に尋ねる。
「玲子先生、本当にそうなのですか」
「骨董品店には古い物が沢山並んでますね」
変わった呼び方に驚いているルシアに零が話しかけた。
「ルシアさん、授業終えたら行きましょうね。
ーー楽しみです」
令嬢ルシアを先頭にメリウスたちは、教室に戻る。
[ザワザワ]
「またか?」
ルシアが溜め息を吐いた。
零がルシアの隣の席になり、メリウスは零の前になった。
その日の最後の授業は、
授業を終え令嬢ルシアとメリウスたち三人は、学園の外の道に出る。
初めて、異世界を実感する三人だった。
馬車が走り、大通りの先には立派なお城が見える。
「ルシアさん、あの大きなお城はなんですか」
「あれ、お城じゃないわよ」
「じゃあ、なんですか」
「あれはね。わたしの父のお邸よ。
ーーつまり、わたしの家ね」
「えええ」
「王様のお城なら、もっと大きいわよ」
「そうなんですか」
令嬢ルシアとメリウスたちは大通りの右側沿いにルシアのお邸方向に進んだ。
令嬢ルシアとすれ違う女性たち何人かが会釈して過ぎて行く。
ルシアは気にせず先を見て指を差しながら零を見た。
「ねえ、零、あそこのアンティーク店でいいかしら」
「ええ、わたしは分からないからルシアさんにお任せします」
「じゃあ、零、メリウス、先生、ちょっと覗いてみましょう」
ルシアが慣れた手付きで入り口の重厚な扉を開ける。
店主が揉み手をしながらルシアの前に立った。
「いらっしゃいませ、ルシアさま」
「こんにちは、ジュークさん」
「今日は、何をお探しですか?」
「クラスメートと先生が、この町を案内して欲しいと」
「それで、私のお店ですか。ありがとうございます」
「ジュークさん、これは何かしら、大昔の鏡でございます」
零がイメージしている鏡とは違い玲子先生と顔を見合わせる。
メリウスは、無言で傍にいた。
ジュークが鏡の説明を始めた。
「この鏡は魔鏡と呼ばれ、大昔の魔法使いが使った伝説があります」
「ジュークさん、魔鏡って何か特殊なパワーがあるんですか」
「当時は、知りませんが異世界を繋ぐ小道具と聞いています」
メリウスが零と玲子の手を引いてアンティーク店を後にした。
令嬢ルシアが慌てて追いかけて来た。
「メリウスさん、どうしたの?」
「ルシアさま、あの魔鏡は本物で危険でございます」
「それで、離れたのね」
「ええ、あれは危ない代物でございます」
「と言うと」
「はい、扱い方を間違えれば、異世界に飛ばされます」
「面白そうね」
「いいえ、面白くはありません」
「冗談よ」
「戻れなくなったら大変ですから触れないでください」
「ルシアさん、これからどうしますか?」
「零、メリウス、玲子先生、良かったら、わたしの邸に泊まりませんか」
「ルシアさん、いいんですか」
「女に二言はありませんわ」
令嬢ルシアが零に微笑んでいる。
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