第五話 もしかしてゲームに登場する悪役令嬢なの?

 零はルシアが言う令嬢という言葉のニュアンスが分からない。

そもそも、身分制度に縁のない日本人である零には遠い世界の言葉だ。


「ルシアさん、令嬢の意味がよくわからないんだけど」

「あなた、馬鹿じゃないの。

ーー令嬢は令嬢よ。偉い人よ」


「令嬢って偉い人なの?

ーーじゃあ、何かできるの?」


「あなたね、私を揶揄うとあとで後悔するわよ」

「ああ、聞いたことがあるお決まりの台詞ね」


 メリウスは、危ないと思ったのか、零の言葉を遮る。


「ルシアさま、私たちは田舎者でまだこの国のシステムが理解できていません。

ーーご指導くださいませ」


 メリウスのお陰で一触即発を回避した。

零は、あとで異世界での立場をメリウスから諭される。


「では、みなさん、ご機嫌よう」

ルシアは言葉を残してその場を去った。


「夢月さん、ここは場違いをわきまえないと火傷しますよ」

「先生、つい口が滑ってしまいました」


「まあ、メリウスさんのお陰でとりあえず大丈夫でしたが・・・・・・」

「同じ学校名で錯覚してしまったみたい」


「確かに同じ名前で安心感があって油断しがちね」

「先生、立ち話もなんですから先に行きましょう」


「メリウスさんの言う通りね」

「先生、どこに行きますか?」


「とりあえず、教室ですか?」

「でも、ヤバくないですか?」

「零さま、心配無用です」


「メリウスさんに任せましょう」

優翔ゆうが先生、ありがとうございます」

メリウスは軽く一礼した。


「メリウスさん、頭を上げてください」

「いいえ、優翔ゆうが先生、嬉しいです」


「お役に立てれば幸いです」

「ところで、メリウスさんは女性なの男性なの」


「私は、中性です」

「両性具有ですか?」


「いいえ、中性です」

「女性でも男性でもないわけ?」


「はい、そうなります」

「それで女子高生ね」


「零さまと離れられませんので」

「そういうことか」


「私は、夢月さんと離れても大丈夫かしら」

「先生は、大丈夫です。

ーータイムアウトすれば元の世界に戻りますから」


「メリウス、私はどうなるの?」

「零さまも、タイムアウトで戻りますが

ーー私と一緒に戻ります」


「メリウスさん、じゃ、私はひとりで戻るの」

「はい、タイムアウトの時、一緒にいなければ」


「メリウスさん、それは困るわ」

「じゃあ、先生もその時、一緒にいてください」


「メリウスさん、そうしてくださいね」

「分かりました、先生」


「ところで、先生は、その時、一緒にいられますか?」

「どういう意味かしら」


「お立場が生徒じゃないので誘惑を心配しています」

「メリウスさん、そんなことありませんよ」


「いいえ、十分美しい先生なので」

「メリウスさん、お上手ね。

ーー男性みたいよ」

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