方舟魔術学園
響はすかさず追撃する。
相手の実力が未知数な為、殺さない様に、けれど有効打になる様に6割程度の力を込める。
この一撃で効いた様子がなければ刀の使用も考えなければならない。
(頼むから、これでやられてくれよ)
そんな響の思いとは裏腹に槍魔術師はたった一撃で倒れた。
手応えがなさ過ぎて不気味なくらいだ。
未だ警戒を解かずにピクリとも動かない魔術師へ近づいていく。
軽く声をかけても何ら反応はない。
もしかすると殺してしまったのか?
急に襲ってきただけで素性の分からない人を殺してしまったとなると色々とヤバい。
元々魔術界では指名手配されてるからと開き直って暴れ回れるほど図太くはない。
まあ銀行強盗はしているのだが、それは目的のためというやつだ。
「お、おい。流石に生きてるよな?」
「響。思っテたよりヨわってるナ…」
俺に対する返答ではなく何かを確かめるかの様に自問自答する様に言った。
言葉を発したというより音を発したと言った方が正しいだろう。
意思を感じられず誰かにそう話す様に操られているかの様だった。
魔術師は口元をニヤリと歪ませて笑う。
未だ体を動かせないのか。それとも動かさないのか。どちらにせよ何で襲ってきたのか、何者なのか聞き出すには都合がいい。
拘束しようと体に触れた、その時だった。
「なっ!?」
魔術師の体が霧となっていったのだ。
最初に触れた左肩から霧化が始まり、次第に体全体が霧となって消えている。
「今日はココまで。また愛ニ行くヨ。ヒビキ」
響は終始を笑顔絶やさず消えていった謎の魔術師を不気味に思いながらも頭の隅へと追いやった。
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『魔術界』
それはその名の通り魔術師の世界である。
魔術の使えない一般人の住む世界を非魔術界とするならば魔術界は非魔術界の鏡写しとなっている二つめの世界だ。
魔術界には多数の魔術師が在住し、魔術界と非魔術界を行き来している。
響達が強盗を行った銀行も魔術界に存在する。
魔術界で銀行強盗をし非魔術界にある家に逃げ帰る事で魔術警察の手から逃れていた。
そんな響達は今、魔術界へと向かっていた。
魔術界へと向かう理由は銀行強盗をした理由と同じだ。
端的に言うと魔術界にある学校に編入する為である。
方舟魔術学園という魔術師養成施設。
魔術学園は魔術界にも多数存在するが、その中でも方舟魔術学園はトップレベルの学園だ。
1〜6の学園レベルからなる序列でいうと方舟魔術学園はレベル6だ。
入学には魔術の腕、実績、そして多額の金が必要とされる。
その為、実績もあり魔術の腕も魔術協会お墨付きの蒼華は少額の金を払えば入学出来る。
つまる所、蒼華は推薦枠。合格は決まったも同然という訳だ。
しかし、実績のない響と樹は入学試験で魔術の腕がある事を証明し多額の金を払わなければならない。
だから少しでも多くの金を集めていたのである。
「お前間違いなく迷ってるよね?」
「私を誰だと思ってる?双柳蒼華様だぞ。迷う訳なかろう」
謎の自信を持った蒼華は地図を見ながら入り組んだ路地をズカズカと進んでいく。
大量のビルが建ち並ぶ廃墟街、ロストテクノロジーでもあったのか、それらの建物は崩れかけ草木に侵食され自然と一体化していた。
そんな神秘的な光景も数時間見ていれば飽きてくる。
どうやら蒼華は方向音痴の気がある。
本来ならば案内役を代わりたいのだが、魔術学園とやらは外部からの侵入者を排除するために迷いの魔術をかけてあるせいで許可した者しか辿り着けない。
今回の入学試験は蒼華の名前で3人分登録したせいで許可が降りた蒼華にしか学園の場所が分からないのだ。
恐らく既に魔術学園の近くには来ている。何故なら本来の季節的に今は冬である筈なのに、どうも暖かい。気温は22、23度くらいだろう。
多分、大規模気候操作魔術だ。
カラッとした暖かい風が心地よい。
「あっ!違う!こっちだ!」
ようやく道が分かったのか進行方向を指差しながら進む。
すると路地を抜け開けた場所へと出た。
「わあ!」
歩くのが面倒くさいと背負われて眠っていた樹が思わず声を上げた。
常日頃から、あまり感情を表に出さない樹が驚いたのだから相当な事だ。
確かに声を上げたくなる気持ちも分かる。
路地を抜けた先には広い海があった。
何処までも続く青い海。
その海上には城の様な建物がありファンタジー漫画と相違ない景色に目を奪われた。
「あれが魔術学園か……!」
まだ見ぬ、魔術、人、物、その全てに思いを馳せ、響達は魔術学園へと続く橋を歩き出した。
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そう言えば題名変えたいんですけど良いのがあったら是非コメントしてください。
変えなくていいと思った方も変えない方がいい等ご意見ください。
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