籠の中の小鳥
私、
私はその中でも一番下の子、つまりは末っ子だ。
私の生まれた伊勢家は日本の魔術名家。
御三家として名を連ねる由緒正しき一族だ。
父には9人の妻がおり、私は姉様達と血が繋がっていない。
だからからか、妙な疎外感を感じる。
お姉ちゃん達は外で遊んでいるのに私は屋敷の敷地から出た事がない。
外の世界がどうなっているのか気になるけど、
この家のおかしさを感じたのは2年前。7歳の頃。
外の世界で働いてる父様の為にご飯を作ってあげようとしてた時だった。
12番目の姉様と13番目の姉様が
「姉様?」
この時、感じた直感を信じて離れていけばよかった。
姉様達の手元には煮え湯。
『お前ばっかりッッ』
確かにそう言っていた。
それより後の言葉は私の耳には入らなかった。
飲まされた煮え湯の熱で意識が朦朧としていたからだろうか?
いや違う。私には姉様達の話す言葉が自分の話す言葉と同じものだとは思えなかったのだ。
姉様達に必死に止める様に懇願する。
「やぇて!ねぇさま!やぃめて!」
「姉様姉様って!うるさいんだよ!」
あれ?姉様達の名前ってなんだったっけ?
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私が気づいた時には自室の布団の上だった。
火傷している筈の喉が痛くない。
「流石だ………」
隣の部屋から父様の声がする。
誰かと話しているのだろうか?
私は何を話してるのか気になって襖を開けてしまった。
「流石だ。お前達、樹の成長を促すとは」
「あは〜!父様!もっと褒めて〜!」
襖を開けると父様は私に煮湯を飲ませた姉様達を褒めていた。
「何で?」
私がそう言うと父様はこちらに気づいた。
「斎。起きたのか。こちらへ来い」
私が近寄ると父様は私の瞳を覗き込む様に顔を近づけて見た。
「はははははは!儀式魔術だけかと思ったら巫女の眼まで開眼するとは!当たりも当たり!大当たり!流石だ!斎!」
私の事を褒めている。その筈だ。
なのに、私の事を見ていない。
私の中にある魔術しか見ていない。
ようやく、この家の気持ち悪さに気づいた。
子供を産み続ける母。
男が産まれれば殺し、女が産まれれば育てる。
私以外の26人の姉には名前がない。
いいや、無いんじゃない。私が産まれるまでは私の一つ上の姉が斎だった。
娘が姉に煮え湯を飲まされても姉を褒める父。
多分、私に魔術が発現していなかったら私に煮湯を飲ませた姉達は殺されていただろう。
娘の心配よりも魔術と魔眼の開眼に執心する父。
「気持ち悪い」
誰かこんな家全部壊して。
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